返事を待つ、たった数秒の永遠
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◆【第2ラリー】電子の文が育てる“再会”
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◆須磨子 → 桐生
桐生の丁寧で誠実な返信を読み終え、
須磨子は胸の上でそっと両手を重ねた。
(……怒っていらっしゃらない……
それどころか、“またご一緒できれば”と……)
胸の奥がふわりと熱を帯びる。
こんなにも心が軽くなるのは、
あの青年から届いた言葉だからだ。
スマホの画面を開いたまま、
須磨子はしばらく迷っていた。
指が震える──けれどその震えは不安ではなく、
(……わたくしも……お会いしたい……)
その静かな願いのせいだった。
深呼吸をひとつして、返信を送る。
◆送信
『桐生様
ご返信を頂戴し、胸が温かくなるばかりでございました。
もしご迷惑でなければ……
わたくしも、またご一緒したいと願っております。
桐生様のご都合がよろしければ、
どちらか行ってみたい場所はございますでしょうか』
送信を終えた瞬間、須磨子は胸に手を当てた。
(……ああ……緊張で息が……)
けれど、頬には自然と微かな笑みが浮かんでいた。
◆桐生 → 須磨子
通知音と同時に桐生は、
ほとんど跳ね上がる勢いでスマホを掴んだ。
(返ってきた……!)
読み進めるにつれ、胃の奥が熱くなり、
胸がきゅっと縮まる。
(“またご一緒したい”……
そんなの……俺の方が……)
息が上ずるほど嬉しい。
そして──
“行ってみたい場所はありますか”
その一文で、桐生は一瞬迷った。
(いや……俺の希望より……
須磨子様の“行きたい場所”が知りたい……!)
震える指で文を整える。
◆送信
『須磨子様
お言葉を頂戴し、胸が熱くなる思いです。
もしよろしければ……
須磨子様の行きたい場所をお聞かせ願えますでしょうか。
わたしは、どちらへでもお供いたします』
(……もっと言い方あっただろ……!)
後悔で額を押さえつつも、
次の通知を待つ鼓動は抑えられなかった。
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◆【第3ラリー】行き先と、決意の有給
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◆須磨子 → 桐生
桐生の“どちらへでもお供します”という言葉を読んだ瞬間、
須磨子の胸はじわりと熱を帯びた。
(わたくしの……行きたい場所……)
思い浮かんだのは、
美佳と庶民の店で買い物した日のこと。
肩を並べて歩く楽しさ。
その隣に桐生がいたら──そう想像するだけで胸が膨らんだ。
小さな勇気を込めて、指が動く。
◆送信
『でしたら……
以前、美佳様に連れていっていただいた“しままち”というお店がございます。
庶民の方々のお洋服が多く並んでおりまして、
とても楽しい場所でございました。
もしよろしければ、そちらへ……ご一緒していただけますでしょうか。
わたくしは……来週の土曜日でしたら伺えます』
(ああああ……お誘いしてしまいました……!)
送信後、須磨子は両手で顔を覆った。
しかし胸の奥は、ほのかな温かさで満ちていた。
◆桐生 → 須磨子
通知が鳴った途端、
桐生は“跳ぶように”スマホへ手を伸ばした。
(しままち……! 一緒に……買い物……!)
そして──
『来週の土曜日でしたら伺えます』
その一文を読んだ瞬間。
(その日……空ける!!)
桐生はシフト表を確認し、
最速で店長に有給申請を送った。
【私用(絶対に外せません)】
理由はそれで充分だった。
震える指で最後の返信を打つ。
◆送信
『須磨子様
お誘いくださり、光栄の極みでございます。
来週の土曜日──
わたしもぜひご一緒させていただければと存じます。
お時間は須磨子様のご都合に合わせます。
どうかお申しつけください』
送信を終えた瞬間、桐生はソファに崩れ落ちた。
(決まった……須磨子様と……次のデートが……)
(マジで俺……生きて帰れるか……?)




