指先に宿る恋ごころ
美佳からの返信を読み終え、須磨子は胸に手を当てた。
(……桐生様に……お声を……?
い、いえ、メッセージ……なら……)
しかしスマホを握る指が震える。
送ろうとするたび、心臓が跳ね上がった。
(……わたくしからお送りしても……ご迷惑では……?
でも……美佳様が……“早く声聞かせてやれ”と……)
静かなサロンに、カチリと爪が画面を触れる音だけが響く。
LIMEの入力欄を開いたものの、何を書けばよいのか分からない。
敬語になりすぎる。
長文になりすぎる。
削除する。
また打つ。
その繰り返しだった。
(……桐生様は……どう思われるかしら……
あの方は……怒っていらっしゃらないかしら……
昨日のあの無礼を……わたくしが招いてしまったのでは……)
消しては打ち、消しては打ち。
最後に残ったのは、精一杯の言葉だった。
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桐生様
夜分に失礼いたします。
一つ、お伝えしたく思い……LIMEにて失礼いたします。
先日の遊園地でのこと、
わたくし、あれほど心が弾むとは存じませんでした。
手を繋いでいただいたこと……
あの温かさを思い返すたび、胸の奥がぽうっといたします。
そして──
出口で申し上げた「嬉しゅうございました」は、
決して遊園地だけのことではなく……
桐生様が隣にいてくださった、その時間すべてに向けた想いでした。
けれど、少し案じておりましたの。
わたくしのせいで、桐生様が噂に巻き込まれてしまったのでは、と。
ですが美佳様がおっしゃいましたの。
「すまっちは自分の気持ちをちゃんと伝えろ」と。
その通りでございました。
桐生様と過ごす時間は……
わたくしにとって、とても大切で、愛おしいものです。
ご迷惑でなければ、
また……ご一緒していただけますでしょうか。
須磨子
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送信ボタンの前で、五秒、十秒、二十秒……
永遠に思えるほど迷ったあと──
須磨子はぎゅっと目を閉じて、押した。
ぴこん。
(……っっ……送って、しまいました……!
ど、どうしましょう、美佳様ぁぁ……!)
スマホを胸に抱えたまま、ソファに沈み込む須磨子。
その小さな震えは、不安ではなく──
紛れもなく、恋の鼓動だった。




