九条院撃退!恋路守護隊、祝勝会を開く
──翌々日の夜。
昼間、社交界を駆け巡った“九条院撃退の噂”は、
すでにご令嬢たちの間で祭りのように熱を帯びていた。
その熱は……
なぜか庶民街の、とあるファストフード店へと飛び火する。
◆◆ 恋路守護隊、庶民の聖地に集結 ◆◆
「こ、ここが……!!」
「須磨子様と美佳様が友情を育まれた場所……!」
「聖地巡礼というものですわね……!」
「本日ここで祝勝会を開けるだなんて……胸が高鳴りますわ……!」
っち四天王は揃って入口で感極まっていた。
「だから入口で立ち止まんじゃねぇ!!!
邪魔!!! どけ!!!」
美佳が全員の背中を押しながら店内へ突っ込ませる。
店員が「あっ……また来た……」という顔をしていた。
もう覚えられていた。
◆◆ 注文の時点で騒がしい ◆◆
「ハンバーガーセットひとつ……と言えばよろしいのですの?」
「わたくし、前回“ハンバ・グラ”と言ってしまいましたの……本日は噛みませんわ!!」
「ポテトが選べるなんて……庶民文化、優しすぎますわ……!」
「この“コーラ”という黒い飲み物は……魔力がありますの?」
「いいから黙って頼め!!!!!」
美佳が全員をカウンターから引き剥がし、
なんとか端のテーブルへ座らせた。
◆◆ 開会宣言:九条院撃退祝勝会 ◆◆
「では!!
本日の議題……!」
杖香が勢いよく立ち上がる。
「《九条院撃退!恋路は完全に守られました祝勝会!!》」
「「「「いぇえええええええええい!!!!!」」」」
「店内で叫ぶなバカァァァァ!!!!」
周囲の視線が痛い。
◆◆ 議題①:須磨子様、あの日の威厳 ◆◆
「まず!!
須磨子様の“あの言葉”……聞きました!?」
「『じゃじゃ馬と呼ばれるのは嫌いではありませんわ、
……ですが、あなたには不快ですわ』」
「ッッッ!!!!!」
「美しすぎて九条院様がフリーズしていましたわ!!」
「フリーズどころか永眠したのでは……?」
「須磨子様……強すぎますわ……!」
美佳はポテトを投げそうになる。
「違う!! 微妙に違う!!
しかも須磨子様は優しいの!! 悪口でも何でもねぇの!!」
「でも九条院様のHPはゼロでしたわ!!」
「どっちみち死んでた!!!」(美佳)
◆◆ 議題②:桐生様の“庶民の盾”っぷり ◆◆
「そして桐生様!!」
「“須磨子様に怖い思いをさせない”という気概……!!」
「恋……そこに恋がありましたわ……!」
美佳が深いため息をつく。
「いや、あいつ半分死んでたけどな。気力だけで立ってたわ」
「それがまた良いんですわ!!!!」
「庶民の意地……!!」
「恋の力……!!」
「黙れ暴走列車ども!!!!」(美佳)
◆◆ 議題③:根回しの成果報告 ◆◆
「ご覧くださいませ……!」
瑞帆がタブレットを掲げる。
「こちら、本日の“社交界LIMEグループチャット”です!」
「“庶民の殿方、素敵ですわ!”」
「“須磨子様、恋のご気分……!”」
「“九条院様はもう結構ですわ……”」
「見て……悪口紳士会合の退会者が増えてる……」
全員がざわつく。
「“っち四天王・広報作戦”の成果ですわ!!」
「いや勝手に作戦名つけんなwww」(美佳)
◆◆ 議題④:恋路の行方を勝手に決める ◆◆
「次なる作戦……もちろん“恋人つなぎ”ですわね」
「そして次の次は“前髪に触れちゃう事件”ですわ!」
「さらに次は“壁ドン”……」
「その次はおでこちゅーですわ!!」
「勝手に恋のシナリオ描くなぁぁぁぁ!!!!!!!」(美佳)
◆◆ エンディング:章の幕引き ◆◆
「ともあれ……!」
杖香がハンバーガーを高く掲げる。
「本日の勝利!!
須磨子様と桐生様の恋路は……完全に守られました!!」
「「「「かんぱぁぁぁぁあい!!!」」」」
ポテトが飛ぶ。コーラが跳ねる。
店員は遠巻きに見守る。
美佳は頭を抱える。
(……須磨子も桐生も、何も知らねぇんだろうな……
でもまぁ……こういうのも、悪くねぇか……)
四天王の歓声は深夜まで止むことはなく。
こうして──
社交界の狂騒は、祝勝の笑い声の中で幕を閉じた。
その裏で覚悟を決めた“ひとりの庶民青年”の朝が始まる。




