《っち四天王、初任務に挑む — 恋路死守作戦会議》
ファミレスの片隅。
騒ぎがひと段落し、ようやく美佳が麦茶をすすって一息ついたその瞬間だった。
「……さて、美佳様」
杖香が、すっと姿勢を正した。
「っち四天王として……最初の任務がございますわ」
「いや任命した覚えはないんだけど!?
ていうか“任務”って何!?」
美佳の叫びを華麗にスルーし、綾乃が真剣なまなざしで続いた。
「昨日の遊園地デート……
あの“九条院事件”について、社交界である程度、
正しい形に整えて広める必要がございますわ」
「いやその“広める”って言い方やめーや!?」
瑞帆が手元のタブレットを立ち上げる。
「現在、社交界の一部では……
九条院様が『須磨子様を困惑させた』という噂だけが
妙に脚色されて広がっておりますの」
「困惑……どころか、完全に引いてたけどね?」
美佳の冷静ツッコミは誰にも届かなかった。
「ですので――」
加奈子が手を握りしめる。
「わたくしたち四天王が、“正しい形”で噂を調整いたします!
須磨子様と桐生様の恋路を守るために!」
「やめて!?“調整”とか言い方が完全に情報統制部隊なのよ!?
庶民の私を巻き込まないで!?」
◆◆ 見守り隊(非公式)が、突然諜報部になった瞬間 ◆◆
「美佳様、昨日の出来事……
須磨子様が桐生様の肘をそっと取られた瞬間……
あれは恋する令嬢の仕草そのものでしたわ……!」
「“そのものでしたわ”じゃなくて!?
見守ってたのあんた達でしょ!?」
「そして九条院様に対して、毅然と立たれた……
あのお姿……」
「『じゃじゃ馬と呼ばれるのは嫌いではありませんが、
あなたには不快ですわ』……!
あの名言……!」
「あっ、あれはマジで痺れたわ……」
「「「「美佳様まで乗るんかい!!」」」」
◆◆ 決議:噂を“正しい方向”へ誘導する ◆◆
「つまりこうですわ!」
杖香がメモをテーブルに広げる。
《噂の最適化案》
1)九条院は「庶民より僕の方が似合う」と公衆の前で発言
2)須磨子様が毅然と拒絶
3)桐生様がこっそり須磨子様を支える
4)そこが最高にロマンティックだった
5)結果 → 社交界が『尊い』で一色になる
「いや5番の“尊い”って何!?誰の感想!?
もう噂じゃなくて編集済みの物語じゃん!!」
「もちろん、盛りは最小限にとどめますわ。
“真実に限りなく近い脚色”のみで」
「それ盛ってるって言うんだよ!!」
◆◆ っち四天王、作戦始動 ◆◆
「では、美佳様」
綾乃がにっこりと微笑む。
「今日のうちに“っち四天王・恋路広報作戦本部”を
立ち上げますわね!」
「勝手に本部作るな!!」
「わたくし達が責任をもって
“須磨子様と桐生様は理想のカップル”という認識を
社交界に定着させますわ!」
「だから勝手に理想にすんな!!本人達にも聞け!!」
しかし4人はもう止まらない。
「では、美佳様……今日の議事録をまとめますわ」
「ほんとに議事録取ってたの!? なんでよ!?」
「作戦名:
《恋路死守・噂の最適化プロジェクト》」
「やめろォォォォォ!!!
プロジェクト化すんなぁぁぁ!!」
◆◆ そして――翌日 ◆◆
ファミレスの窓の外、夜。
4人娘はきらきらと目を輝かせながら言った。
「美佳様、ご安心くださいませ。
わたくしたちが須磨子様と桐生様の恋路……
全力でお守りいたしますわ!」
「守らなくていいから!!
ていうか逆に危険だから!!」
だが、4人は揃って優雅に微笑む。
「“っち四天王”、参りますわよ!」
「「「はいっ!!」」」
美佳は顔を覆った。
(……終わった……
いや、何かが始まった……?)
その翌日――
社交界には、とんでもない速度で“噂”が駆け巡ることになるのだった。




