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西園寺須磨子は未だ恋を知らない  作者: 天音紫子(著)×霧原影哉(構成・監修)
【須磨子様と桐生様、恋路観測記 — 箸休め四部作 —】
60/80

《庶民の殿堂・初体験!》〜恋路見守り隊のカルチャーショック〜

◆庶民の殿堂・初体験!


 〜恋路見守り隊のカルチャーショック〜


 須磨子様が自室で余韻に浸っていた、その頃。


 街の片隅にある――きらびやかさ皆無の看板。


「……ここ、ですの?」 「……“ふぁみりーれすとらん”?」 「……庶民の……館……?」


 4人娘(杖香・綾乃・瑞帆・加奈子)は、人生初の建物を前に震えていた。


「いいから入れっての。腹減ったんでしょ!」  美佳は慣れた足取りで自動ドアを突破する。


 店内。  背景BGMは軽めのポップス。  空気は油の匂い。  家族連れと学生の笑い声が漂う。


 ――4人娘、即フリーズ。


「……席が……勝手に……回っておりませんわ……?」 「……メニューが……紙……!? 本ではなく……紙……!?」 「こ、この香り……! なんという……生活感……!」 「庶民は……毎日ここで……食事を……?」


「落ち着けえええ!!!」  美佳が全員の背中を押して、テーブル席に並べた。


◆◆どりんくばーの衝撃◆◆


「ではまずドリンクバー行こ。あそこ」  美佳が指差す。


 4人娘、同時に青ざめる。


「ば、ばー……!?」 「お酒は……嗜みませんわよ!?」 「昼間から泥酔など……!」 「美佳様、まさか……わたくしたちを……!」


「違うわ!! あれは飲み物取り放題のとこ!!  未成年はジュース! シンプルぅ!!」


「と、とり……ほうだい……?  何杯いただいても……同じお値段……?」


 瑞帆が震える。  庶民文化の合理性に。


「行くよ、ほら」  美佳が紙コップを渡すと、


「紙……!?  しょ、食器が紙!? わたくしの家の銀製品は……!?」 「落ち着け綾乃」


 コップを持った杖香が、なぜか両手で祈るように掲げる。 「……庶民の……知恵の結晶……!」


「だから何を崇めてんのよ!!」


◆◆サラダバー事件◆◆


「ついでにサラダも取っとく?」 「さ、さらだばー……!」


 瑞帆が皿を取り、  フレンチのコースの如く “縦に” 美しく盛る。


「いやそれ高さ出すところじゃないって!!」 「……お美しゅうございますわ、瑞帆様……」 「やかましいわ!!」


◆◆メイン料理、衝撃の到来◆◆


 ハンバーグ定食、到着。


 ジュワァァァ……


「……っ!!」 「こ、これは……! お肉の……香り……!」 「食器が……陶器……!? 紙と陶器……使い分け……!?」 「庶民文化……奥深すぎますわ……!」


「普通に食べていいからね??」  美佳が言うと、


 4人娘は全員 ナイフとフォーク を構える。


「……ど、どうしてフレンチスタイル!?」 「お肉とはかくあるべし、と教わりましたので」 「……庶民は、ナイフを使わぬ文化……?」


「いや箸あるよ!? そこ置いてあるやん!?」 「まぁぁ!? 桜の木の香りのような……!」 「いや普通の割り箸!!!」


 美佳のツッコミが追いつかない。


◆◆ファミレスの真髄を知る◆◆


 やがて落ち着き、全員がもぐもぐ食べ始める。


「……美味しゅうございますわ……」 「味が濃い……最高……」 「わたくし、庶民のお食事……侮っておりました……」 「美佳様……目が開きましたわ……!」


「だから崇めるなっつーの!!!」


 美佳は頭を抱えながらも、どこか嬉しそうだった。


◆◆そして“本番”の話題へ◆◆


 食後、4人娘が姿勢を正す。


「……では、美佳様」 「本日の……須磨子様の恋路のご様子……」 「ぜひとも詳しく……!」 「わたくしたち、全力で鑑賞いたしますわ!!」


「……鑑賞って言い方よ!!!  でも……語るけどさぁ……!」


 こうして、

 “恋路見守り隊・本日の鑑賞感想会” が幕を開けたのである。

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