須磨子様の恋路を見守り隊結成!
──その“不穏な視線”に気付いた者は、他にも五人いた。
美佳。
そして、ある事情で招集された四人のお嬢方。
彼女たちはこの日、密かにこう呼ばれていた。
「須磨子様の恋路を見守り隊」
……隊名は美佳が飲み物を吹いた拍子に適当に言ったものが、
なぜか全員に受け入れられてしまった。
だが、結成にはきちんと理由がある。
──時は、少し遡って。
場所は、数日前の西園寺家応接室。
須磨子は不在。母・西園寺夫人が静かに紅茶を口にしていた。
そこに、お嬢方四人が緊張した面持ちで座っている。
美佳はなぜか巻き込まれ、末席で体育座りしていた。
「……で? なんで私まで呼ばれたの」
「美佳さんは、須磨子様の日常観察者ですわよね?」
「……どんな肩書き?」
夫人が穏やかに笑った。
「美佳さん。あなた、須磨子の“異変”に誰より早く気付くでしょう?
だから心強いのよ。頼りにしているわ」
「……あ、ありがとうございます?(なんか複雑)」
お嬢方が口を揃えた。
「実は……最近、妙な噂を耳にしまして。
須磨子を“じゃじゃ馬”呼ばわりしていた殿方のひとりが──」
一拍置いて、
「……逆恨みめいた態度を見せている、と」
夫人の表情が、ふっと陰を落とした。
「えぇ。わたくしの耳にも入っております。
桐生様と過ごす須磨子を“監視している”ようだと」
「「「「「……キモいですわ」」」」」
五人の意見が奇跡的に一致した。
美佳が思わず手を挙げる。
「じゃあ何? 私たち……ストーカー対策班?」
「言い方ァッ!!」と全員にツッコまれた。
夫人は優雅に微笑んだ。
「皆さまには、須磨子と桐生様をそっと見守っていただきたいの。
不審な人物が近づいたら、即座にわたくしへ連絡を」
「お任せくださいませ!」
「恋路を守るためなら、わたくしたち一蓮托生!」
「愛ですわ、愛の協力ですわ!」
なぜかテンションが上がる四人。
美佳は頭を抱えた。
(……なんでだよ。なんで私まで“恋路見守り隊”なんだよ……)
だが。
このとき既に、美佳は気付いていた。
──須磨子のことを本当に大切に想っているからこそ、
このお嬢方たちも本気で動いているのだ、と。




