美佳、恋の黒幕になる。知らぬは須磨子様のみ。
「──で? その手紙、見せなよ」
美佳は、
“爆発する前の炭酸飲料”みたいな顔でチーフを見ていた。
「……いや、見せるほどのもんじゃ──」
「チーフ、出しなさい」
逃げ場なし。
あきらめて封筒を差し出した。
美佳は封蝋を見た瞬間──
「うわっ、すまっち特製の高級便箋だ!
やば……これは本気の文だ……!」
「おま、声デカい……!」
文を開いた美佳は、目を皿にして静止した。
5秒。
10秒。
20秒。
そして──
「恋じゃん。」
「ちがうわッ!!!」
反射で即答した。
我ながら食い気味の大声。
美佳は腕を組み、ゆっくり顔を上げた。
「……なるほどねぇ……?」
「何がだよ」
「否定の仕方が“ちがう”じゃなくて“ちがうわ!”なんだよ。
はい確定。乙。」
「確定するなぁぁ!!」
「チーフ……これは恋文だよ。しかも本気の。
すまっち、字がうますぎて逆に殺傷力高いし」
「殺傷力て言うな」
美佳は文を指でトントンと叩いた。
「てかさ。
これ読んで動揺してる時点で、チーフ側にも“気持ち”があるってことじゃん」
「ない!!俺は冷静だ!!」
「(はい出た、いちばん動揺してる人のセリフ)」
「……」
「で、いつデートするの?」
「しねぇよ!!決めつけるな!」
「ふーーーん?」
美佳が目を細めた。
(……この顔は……何か企んだ顔だ……)
「わかった。
すまっちにも協力してもらって──」
「やめろォ!!」
「2人でデートプラン立ててあげるから♡」
「やめろって言ってんだろ!!」
「いやもう無理だよチーフ。
だってコレだもん」
美佳は文の“名もなき想い”のところを指差す。
「ここ、“チーフの声が胸に落ちた瞬間”って意味だからね。
読書感想文レベルじゃなくて恋文レベルだよ」
「……だから、それを俺に説明するな!
なんでお前が気付くんだよ!」
「すまっちの親友だからね?」
美佳はどや顔で胸を張った。
「恋の匂いは逃さない女、美佳参上。
チーフ、覚悟しといてね?」
(……嫌な予感しかしねぇ)
その時、テーブルに置いた彼女のスマホが震えた。
画面には──
『すまっち:くしゅんしましたわ。気温でしょうか?』
美佳「……ふっ」
「……なんだよその笑い」
「チーフ、これもう運命だよ。
すまっちの“くしゅん”は絶対チーフのこと考えてる時のやつ」
「どんな根拠だよッ!!」
美佳はスマホを閉じ、言い切った。
「よし、決めた。
──2人のデート、私が仕掛ける。」
チーフの背筋が凍った。
(……終わった……)




