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初デートは回転木馬から始まる

◆メリーゴーラウンドへ向かう二人


 回転木馬の音楽がふんわり流れ始めた。

 童話の世界からこぼれたみたいな、やさしいオルゴール。


「まぁ……あれが“回転木馬”ですのね……!」


 須磨子は目をきらきらさせて、ほんの少し早足になる。

 その横で桐生は、一瞬だけ息を忘れた。


 光に照らされて揺れる淡い髪。

 頬に浮かぶ幼いような喜び。


 いつもの令嬢らしい気品にくわえて、

 まるで絵本から抜け出たお姫様のようで——


(……綺麗だ……)


 胸の奥で、桐生の心拍がいつもより多めに跳ねた。



◆乗車前、唐突に“姫と騎士”


「す、須磨子様。お手、どうぞ……」


 桐生はそっと手を差し出した。


 須磨子は一瞬「えっ」と目を丸くしたあと、

 ふわりと微笑んで彼の手に触れる。


「ありがとうございます……桐生様」


(ひゃ ひゃああああああああああああ!?

 “桐生様”ボイスで手を取られたぁぁ!?)


 桐生の魂ゲージがごりごり削れた。



◆そして騎乗(?)


 須磨子は白馬の木馬のそばで一度立ち止まり、

 裾をそっと押さえながら、上品に跨がる。


 その動作がまた、ずるいほど絵になる。


 照明が彼女の髪に反射して、金色の粒子が舞ったように見えた。


(これ……完全に童話の姫だろ……

 俺、今日……生きて帰れるのか?)


「桐生様も、どうぞ……お隣の馬に」


「あ、はいっ……!」


 急いで乗ろうとして、足を引っかけかける桐生。


(落ち着け俺!! 何をやってるんだ俺!!

 いや落ち着けるわけねえだろこんなの!!)


 係員の人に苦笑されている間に、

 須磨子は上品に手を振ってきた。


「桐生様〜……こちらですわ〜……」


(かわいすぎて無理……)



◆回転開始


 音楽が鳴り、木馬が上下に動き始める。


 須磨子は胸に手を当てながら、視線を桐生に向けた。


「……なんだか、夢の中にいるみたいですわ……」


(夢なら俺はもう覚めなくていいです……)


 桐生、思考がだいぶダメになってきている。



◆桐生の決定的ダメ押し


 ふと須磨子の髪が揺れ、

 夕方の差し色が頬を染める。


「桐生様。……ご一緒してくださって、嬉しいですわ」


(ぐふっ……!

 今の一撃は致命傷……!!)


 桐生のHPはゼロになった。


(※なお、桐生のHPゲージは須磨子が微笑むたびに

 オートリジェネ(自動回復)する仕様であった。

 ──その代わり、すぐにまた削られる。)

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