美佳を挟んだままの「遊園地デート約束」
LIMEの通知が、また鳴った。
美佳はベッドに倒れ込んだまま、顔だけスマホに向けて呻いた。
「……またすまっちとチーフから……同時に……?」
画面には、ほぼ同時刻に届いた2件のメッセージ。
【桐生 → 美佳】
〈須磨子様との次のお出かけについて、ご相談があります。
場所は……やはり、落ち着いた所がよろしいでしょうか〉
【須磨子 → 美佳様】
〈あの……美佳様。
桐生様と……その……
“遊園地”という場所へ行ってみたくて……〉
「……相談内容が真逆!!」
美佳は顔を覆った。
(どっちかが先に言い出してよ〜〜!!
なんで私が中央管理サーバーみたいになってんの!!)
深呼吸し、まず須磨子に返信する。
【美佳 → 須磨子】
〈遊園地、いいじゃん! 絶対楽しいよ!
……で、その件なんだけど……〉
続けて桐生にも返信。
【美佳 → 桐生】
〈落ち着いた場所……もいいけど……
須磨子様、遊園地に行きたいって言ってたよ〉
送信して十秒。
2人から怒涛の返信が返ってきた。
【須磨子 → 美佳様】
〈そ、そそそんな……!
無理を申し上げている訳ではなくて……!
ただ、少し……夢見てしまっただけでして……!〉
【桐生 → 美佳】
〈遊園地……ですか?
わたしに務まるでしょうか……。
ですが……須磨子様がお望みなら……〉
「はい、決まりましたね〜〜!!」
美佳は、半ば投げやりに宣言文を打った。
【美佳 → グループLIME(美佳・須磨子・桐生)】
〈はい注目〜!!
今度3人じゃなくて“2人で”遊園地デートします!
すまっちの希望です!
チーフ、異議は認めません!〉
一拍置いて、反応が来る。
【須磨子】
〈み、美佳様ぁぁぁ!!
そ、その……“デート”だなんて……!〉
【桐生】
〈……デート……
わたしに、その……務まるでしょうか……〉
(ああもう!! このバカップル……!
なんで私がデート交渉の窓口やってんの!?)
額を押さえる美佳。
しかし、2人の次のメッセージを見た瞬間――
【須磨子】
〈……ですが、桐生様となら……その……
わたくし、行ってみたいですわ〉
【桐生】
〈……須磨子様のご希望であれば、
わたしはどこへでもお供いたします〉
美佳はスマホを見つめて、ぽつりと笑った。
「……はいはい。
もう、2人で勝手に幸せになってください」
その言葉には呆れより、むしろ優しい諦めの色があった。
こうして――
まだ2人だけで会話もできないまま、
遊園地デートだけが先に決まってしまう。
美佳の胃痛と通知地獄を残しつつ、
この章はゆっくりと幕を閉じていく。




