地獄のグループLIME招待会(美佳、犠牲になる)
地獄のグループLIME招待会(美佳、犠牲になる)
駅前ロータリーで連行された美佳は、
そのまま令嬢4人に囲まれながら、近くの落ち着いたカフェへと運ばれた。
店内に入ると――
「こちらのお席へどうぞ、美佳様」
「お茶はわたくし達がご用意いたしますわ」
「お気になさらず、美佳様は座っていてくださいませ」
「いや気にするよ!?
なんで私、貴族に護送されてる一般市民みたいになってんの!?!」
抵抗むなしく、美佳はふかふかのソファ席に座らされる。
令嬢4人はテキパキと飲み物を注文し、
なぜか美佳の前にケーキまで置かれた。
「え!?ちょっ……これ高いやつ……!?」
「美佳様のお気に召すものをと思いまして」
「召さないよ!?庶民の舌は怯えてるよ!?」
しかし令嬢たちは一切引かず、微笑みをたたえて向かいに座る。
「さて、美佳様。LIMEの件ですが――」
「来た……!!本題来た!!」
美佳は紙袋をぎゅっと抱えながら、すでに涙目である。
「わたくし達、須磨子様の親しい方々とも
しっかり連携を取りたく思っておりますの」
「わたくし達の“須磨子様親衛LIMEグループ”、
ぜひご参加いただければと……!」
「親衛グループ!?なにそれこわい!!
私いつから“須磨子様の親衛隊長補佐”みたいな扱いに!?!」
杖香が優雅にスマホを取り出す。
「こちらが招待コードですわ、美佳様」
「逃げ道ふさいできたー!!」
が、断れる空気ではない。
美佳は震える手でQRを読み取り、グループに参加した。
その瞬間――
LIME通知(100)
「うわあああああああ!!
一瞬で通知がバク上がり!?!?」
「ちょうど皆様、待機していたようですわ」
「誰が!?なんで!?今何時だと思ってるの!?!」
美佳は震える手で画面をスクロールした。
流れるメッセージの中に、見覚えのある名前を発見する。
――須磨子。
『皆様、ごきげんよう。すま子で御座いますわ』
「誤字ぃぃぃぃ!!
しかも“御座いますわ”の破壊力よ!!」
令嬢たちはうっとりしている。
「須磨子様、なんてお可愛らしい誤変換……!」
「タイプミスすら尊い……!」
「いや尊がない!!私にはただの誤字!!」
そしてもう一人。
美佳は震える指で桐生のアイコンをタップする。
『桐生:……』
『桐生:美佳、助けてくれ』
「チーフうううう!!私も助けてほしい!!」
その直後――
大量のスタンプが投下される。
しかも全部、
「須磨子様スタンプ」(社交界お嬢達の自作)
・微笑む須磨子様
・紅茶を持つ須磨子様
・『応援していますわ♡』の吹き出し
・『まあ……♡』と頬に手を当てる
「作ったの誰ぃぃぃ!?」
「わたくし達4人でございますわ!」
「作るな!著作権!!いや似てる!!」
美佳と桐生の通知が爆発する。
『桐生:スタンプが止まらない……』
『桐生:……情報量が多すぎる……』
「チーフ、がんばれ……
一般人は社交界のノリには勝てない……」
そのとき、須磨子からメッセージが飛ぶ。
『すま子:みなさま、わたくしも“がるーぷ”というのに入れてうれしゅうございますわ』
「グ、グループだよ須磨子様ぁぁぁぁぁ!!
“がるーぷ”て!!かわいいけど!!」
令嬢たちがぽわんと頬を染める。
「須磨子様の“がるーぷ”……可愛らしすぎますわ……!」
「このスタンプ、すぐ追加いたしましょう!」
「追加するなああああああ!!」
美佳はぐったりテーブルに突っ伏した。
「……これ……私……今日眠れるかな……
いやスマホが眠らせてくれないだろ……」
そのとき、桐生から個人LIMEが届く。
『桐生:美佳。頼む。逃げ道を……教えてくれ……』
美佳は返信した。
『無理です。私も奴らの手中です』
桐生の返事は一言。
『……終わった……』
「いやチーフ!!まだ終わってない!!
これから“個別LIME戦争”が始まるの!!」
美佳はふらつきながらケーキを口に運び、項垂れた。
「……すまっち……
あんたの親衛隊、強すぎるよ……
フリーターひとりじゃ……無理……」
カフェの静かな空気に、
美佳の魂が抜けたため息だけが、ふわりと溶けていった。




