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西園寺須磨子は未だ恋を知らない  作者: 天音紫子(著)×霧原影哉(構成・監修)
第11章 恋路は静かに、LIMEは騒がしく
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地獄のグループLIME招待会(美佳、犠牲になる)

地獄のグループLIME招待会(美佳、犠牲になる)


 駅前ロータリーで連行された美佳は、

 そのまま令嬢4人に囲まれながら、近くの落ち着いたカフェへと運ばれた。


 店内に入ると――


「こちらのお席へどうぞ、美佳様」


「お茶はわたくし達がご用意いたしますわ」


「お気になさらず、美佳様は座っていてくださいませ」


「いや気にするよ!?

 なんで私、貴族に護送されてる一般市民みたいになってんの!?!」


 抵抗むなしく、美佳はふかふかのソファ席に座らされる。


 令嬢4人はテキパキと飲み物を注文し、

 なぜか美佳の前にケーキまで置かれた。


「え!?ちょっ……これ高いやつ……!?」


「美佳様のお気に召すものをと思いまして」


「召さないよ!?庶民の舌は怯えてるよ!?」


 しかし令嬢たちは一切引かず、微笑みをたたえて向かいに座る。


「さて、美佳様。LIMEの件ですが――」


「来た……!!本題来た!!」


 美佳は紙袋をぎゅっと抱えながら、すでに涙目である。


「わたくし達、須磨子様の親しい方々とも

 しっかり連携を取りたく思っておりますの」


「わたくし達の“須磨子様親衛LIMEグループ”、

 ぜひご参加いただければと……!」


「親衛グループ!?なにそれこわい!!

 私いつから“須磨子様の親衛隊長補佐”みたいな扱いに!?!」


 杖香が優雅にスマホを取り出す。


「こちらが招待コードですわ、美佳様」


「逃げ道ふさいできたー!!」


 が、断れる空気ではない。


 美佳は震える手でQRを読み取り、グループに参加した。


 その瞬間――


 LIME通知(100)


「うわあああああああ!!

 一瞬で通知がバク上がり!?!?」


「ちょうど皆様、待機していたようですわ」


「誰が!?なんで!?今何時だと思ってるの!?!」


 美佳は震える手で画面をスクロールした。


 流れるメッセージの中に、見覚えのある名前を発見する。


 ――須磨子。


『皆様、ごきげんよう。すま子で御座いますわ』


「誤字ぃぃぃぃ!!

 しかも“御座いますわ”の破壊力よ!!」


 令嬢たちはうっとりしている。


「須磨子様、なんてお可愛らしい誤変換……!」


「タイプミスすら尊い……!」


「いや尊がない!!私にはただの誤字!!」


 そしてもう一人。


 美佳は震える指で桐生チーフのアイコンをタップする。


『桐生:……』


『桐生:美佳、助けてくれ』


「チーフうううう!!私も助けてほしい!!」


 その直後――


大量のスタンプが投下される。


しかも全部、

「須磨子様スタンプ」(社交界お嬢達の自作)

・微笑む須磨子様

・紅茶を持つ須磨子様

・『応援していますわ♡』の吹き出し

・『まあ……♡』と頬に手を当てる


「作ったの誰ぃぃぃ!?」


「わたくし達4人でございますわ!」


「作るな!著作権!!いや似てる!!」


 美佳と桐生の通知が爆発する。


『桐生:スタンプが止まらない……』


『桐生:……情報量が多すぎる……』


「チーフ、がんばれ……

 一般人は社交界のノリには勝てない……」


 そのとき、須磨子からメッセージが飛ぶ。


『すま子:みなさま、わたくしも“がるーぷ”というのに入れてうれしゅうございますわ』


「グ、グループだよ須磨子様ぁぁぁぁぁ!!

 “がるーぷ”て!!かわいいけど!!」


 令嬢たちがぽわんと頬を染める。


「須磨子様の“がるーぷ”……可愛らしすぎますわ……!」


「このスタンプ、すぐ追加いたしましょう!」


「追加するなああああああ!!」


 美佳はぐったりテーブルに突っ伏した。


「……これ……私……今日眠れるかな……

 いやスマホが眠らせてくれないだろ……」


 そのとき、桐生から個人LIMEが届く。


『桐生:美佳。頼む。逃げ道を……教えてくれ……』


美佳は返信した。


『無理です。私も奴らの手中です』


 桐生の返事は一言。


『……終わった……』


「いやチーフ!!まだ終わってない!!

 これから“個別LIME戦争”が始まるの!!」


 美佳はふらつきながらケーキを口に運び、項垂れた。


「……すまっち……

 あんたの親衛隊、強すぎるよ……

 フリーターひとりじゃ……無理……」


 カフェの静かな空気に、

 美佳の魂が抜けたため息だけが、ふわりと溶けていった。

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