美佳、令嬢4人に包囲される
バイト帰り。
駅前ロータリーの人混みを、美佳はファストフード店の紙袋をぶら下げて歩いていた。
「今日の賄い、当たりだったな〜。はよ帰って食べよ……」
そう呟いた瞬間だった。
「まぁっ……! あちらに美佳様が!」
「本当に……! お声をかけるなら今ですわ!」
「美佳様〜〜!!」
「お待ちくださいませ、美佳様!」
――令嬢4人に、四方から挟まれる。
「ひっ!?!? え!?なんで!?
なんで高貴っぽい皆様がロータリーで私を囲むの!!?」
美佳は完全に動揺して後ずさる。
しかし令嬢たちの瞳はきらきらと輝いていた。
「美佳様は、須磨子様のご友人でいらっしゃるのでしょう?」
「ぜひ、わたくし達とも仲良くしていただきたく……!」
「ご挨拶が遅れましたが、美佳様にお会いしたくて……!」
「もしよろしければ、LIMEのグループを……!」
「ちょ、ちょっと待てぇぇぇ!!
どこ情報!?なんで私がそんな扱い!?
ただのファストフード店員だよ!?」
しかし、4人は全く動じない。
「美佳様は、須磨子様に信頼されている特別なお方。
それは、わたくし達にとっても大切な方なのですわ!」
「ご安心くださいませ、美佳様。
わたくし達、危険な者ではございません!」
「いや今の状況が一番危険なんだけど!?!?
ロータリーで四方囲みって!!」
美佳はパニックになりつつ紙袋を抱えて後退したが――
4人は笑顔で距離を詰める。
「では、美佳様。近くのカフェでお話を」
「グループLIMEの招待も、その場でお送りしますわ!」
「須磨子様スタンプも、ご準備しておりますの!」
「作ったの誰!?社交界こわっ!!」
抵抗も虚しく、美佳の腕はそっと丁寧に取られた。
「さぁ、美佳様。どうぞこちらへ」
「ああああああ!!
フリーター、今まさに令嬢4人に連行されてまーす!!
すまっちーーー!!今あなたの友達が犠牲になってるからねーーー!!」
駅前の雑踏に、美佳の叫びが吸い込まれていった。




