須磨子、恋を自覚してしまいますの……(美佳、静かに聞き役)
講義を終えて校門を出た須磨子は、
大学前の歩道のベンチでスマホをいじる美佳の姿を見つけた。
須磨子に気づくと、美佳はぱっと顔を上げた。
「お、すまっち。……どうしたの? 顔、赤いよ?」
「み、美佳様……少し、お力をお借りしたくて……」
「……また恋の悩み?」
“また来たよこのお嬢〜”という顔。
けれど声の奥には、ほんのりとした「しょうがないなぁ」の温度がある。
須磨子は緊張した様子で、美佳の隣にちょこんと腰を下ろした。
「その……美佳様にだけ、お伝えしたくて……」
「はいはい。今日は何の悩み?
また“どうやって手を繋げばいいですの”シリーズ?」
「ち、違いますわ! その……昨日の……ことなのです……」
須磨子は胸の前で両手をぎゅっと重ね、頬を染めた。
「……手を……繋いでいただきましたの……」
「へぇ〜〜……っていや知ってるけどね!?
その現場、私が作ったんだけど!?!?」
がっつりツッコむ美佳。
須磨子は耳まで真っ赤になる。
「そ、それが……その後、わたくし……
胸がどくどくしてしまって……」
「うんうん。普通そうなるよね。で?」
「きょう……お会いした瞬間から、ずっと落ち着かなくて……
お声を聞くだけで胸が……わあっと……!」
「……恋だね」
「こ、恋っ……!? やはり……これが……!」
須磨子は完全に沸騰。
美佳はこめかみを押さえた。
「いやもう、そこは自覚しよ!?
昨日まで気付いてなかったの逆にすごいよ、すまっち!」
だが美佳は、ふう、と息をひとつ吐いた。
「で、今日は何を相談しに来たわけ?
『手を繋いだ後の正解が分からないですわ』とか?」
「そ、そんな……!
違いますわ、その……桐生様が……どう思っていらっしゃるのか……」
「ん?」
「わたくしと……こうして手を繋いだり、並んで歩いたりして……
……迷惑ではないのかと……」
「いや迷惑どころか、あの人ね――」
美佳はニヤリと笑う。
「すまっちと同じ悩みを、今日また相談しに来たんだけど?」
「…………っ!」
須磨子の瞳が一気に潤む。
「本当に……?
桐生様……わたくしのこと……嫌ではなく……?」
「嫌どころか、喜びすぎて倒れそうだったよ。
“手を繋げたことが嬉しくて”って」
「……っ……!」
須磨子は胸に手を当て、震える息を吐いた。
「……わたくし……桐生様のお隣にいて……よろしいのでしょうか……」
「よろしいどころか、求められてるよ。
ていうかお互い“相手が迷惑かも……”って悩むのやめよ、もう!」
「……美佳様……ありがとうございます……!」
「はいはい。すまっちが幸せならそれでいいよ。
で? また悩んだら来るんでしょ?」
須磨子は真っ赤になりながら、小さく微笑んだ。
「……その時は……どうかまた……」
「うん。聞いたげるよ」
美佳は手をひらひら振って笑う。
内心では――
(ほんっと……かわいいバカップルだな……
でも応援しないとは言ってないし……)
春の風が二人の間をそっと吹き抜けていった。




