わたくし……嫌われてしまいましたの?(悶々)
桐生との三度目の逢瀬を終えて帰る道すがら、
須磨子の胸は妙に落ち着かなかった。
だって──
(……今日も、手を……繋いでくださいませんでしたわ)
歩く距離は縮まっておりますし、
お話もたくさんいたしましたし、
視線が触れるたびに胸が熱くなるのに──
それでも“そこ”だけは、触れてくださらない。
(……わたくし、何か……嫌われるようなことを……?)
そんなはずは、と自分に言い聞かせてみても、
胸の奥で小さな不安が膨らみ続ける。
(……でも……ほんの少しだけ……触れてみたいと思ってしまうのは……いけませんの?)
わたくしが指先を胸元でそっと握ったところへ──
「すまっちー!!ひさしぶりー!!」
美佳が元気いっぱいの声で飛び込んで来た。
「まあ、美佳様……驚かしましたわ」
「で?今日どうだったの!?なんか顔が“恋してます”って言ってる!」
「言っておりませんわ!!」
「言ってるっての!さては進展あったなー?」
須磨子は少しだけ視線を落とし、小さく告げた。
「……あの……桐生様が……今日も……手を繋いでくださいませんでしたの」
「…………あー(察し)」
美佳の表情が一瞬で“分かった”顔になった。
「すまっち、それ嫌われてるとかじゃないから!!」
「で、では……なぜ……?」
「尊重しすぎてビビってるの!!」
「び、びびって……?」
「うん、確実にビビってる。
すまっちが大事すぎて、手ェ出せないんだよ、あの人!」
「っ……そんな……」
胸の奥がきゅうっと締めつけられ、でも甘くて。
「で?すまっちは手、繋ぎたいんでしょ?」
「っ……!」
「さあ、正直に言って!」
「……少しだけ……触れてみたいと……思っておりますの……」
「よーし!美佳ちゃん、動きます!!」
「な、なにをなさるおつもりで……!?」
「すまっちが言えないなら、あたしが背中押すしかないっしょ!」
(……不安と同時に……心が軽くなっていく気がいたしますわ……)




