――美佳、再び動く午後に
放課後の時間帯。
バイト先のファストフード店、従業員用の休憩室。
美佳は紙コップのストローを噛みながら、テーブルに突っ伏していた。
(……このままじゃ進展しなさすぎる!!)
須磨子はチーフを慕っている。
チーフも須磨子を大切に思っている。
なのに──
「2人して“あの人のために強くなりとうございます”って……
バ、バカップル予備軍じゃん……!!」
机をバン、と叩くと、周囲の従業員が少し驚いたが気にしない。
(こうなったら私が動くしかない!!
すまっちにもチーフにも、背中押してやる!!)
美佳は勢いよく椅子から立ち上がった。
◆須磨子様サイド:突然の誘い
「すまっち~!」
明るい声とともに、美佳が駆け寄ってきた。
「まぁ、美佳様。どうかなさいましたの?」
「ねぇねぇ週末! 予定ある?
ないなら──行きたいお店があるんだよね~!」
美佳の目がきらきらしている。嫌な予兆のきらきら。
「まぁ……特には……」
「よしっ! じゃあ決定!!」
「え、ちょっと……」
「すまっちに絶対似合う服のお店があるんだよ~!
それで散歩とかお茶とか──あ、あああっ!!」
「み、美佳様?」
美佳は大げさに口元を押さえた。
「ごめん!! 急に思い出した!!
わ、私、その日バイト入ってたわ!!」
「えっ、ではわたくしは……?」
「すまっち1人で行ってきて!!
……いや、1人じゃ危ないし──」
美佳はわざとらしく周囲を見回し、
「チーフに付き添ってもらえばいいじゃん!!」
「えっ……!?」
「だってチーフ、頼めば絶対断らないって!
すまっちのことだもん!」
「そ、そんな……!」
「じゃ! よろしく~!」
美佳は手を振りながら走り去り──
(……ふふん、完璧……!)
角を曲がった途端、したり顔になった。
◆チーフサイド:まんまと乗せられる
学生ラウンジで書類を整理していたチーフに、美佳がずいっと顔を近づけた。
「チーフ~! 週末、暇?」
「……なんだ、急に」
「すまっちさぁ、買い物に行くんだって!
可愛いお店! 似合う服! デートみたいなとこ!」
「っ……!」
「でもね? 私その日行けなくてさぁ……
すまっち1人じゃ危ないじゃん?」
「危ない……確かに……」
「だから!
チーフが送っていってあげればいいんじゃないかな~って!」
「……俺が、ですか」
「うん! すまっち喜ぶよ~!
ほら、護身術始めたのだってチーフのためでしょ?」
「……っ」
心を貫く一言。
チーフは小さく息を吸った。
「……わかった。お供しよう」
「よっしゃあああ!!」
「今のは聞こえているぞ」
「げっ……!」
◆最後の一押し:すれ違うドキドキ
そして週末前日。
「……チーフ様が、ご一緒してくださる……?」
須磨子の胸は、期待でそっと跳ねる。
「チーフに聞いたらね~、“責任を持ってお守りします”ってさぁ!!」
「まあっ……!」
一方チーフも──
「須磨子様に“よろしくお願いいたします”と……言われたんですか?」
「うんうん!
なんなら“心強うございますわ”って言ってた!」
「…………」
鼓動が静かに熱を帯びていく。
その頃美佳は、
(よし……これで2人、運命のデートコース一直線……!)
ほくそ笑んでいた。




