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西園寺須磨子は未だ恋を知らない  作者: 天音紫子(著)×霧原影哉(構成・監修)
第6章 わたくし、強くなりとう存じます
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――美佳、再び動く午後に

 放課後の時間帯。

 バイト先のファストフード店、従業員用の休憩室。


 美佳は紙コップのストローを噛みながら、テーブルに突っ伏していた。


(……このままじゃ進展しなさすぎる!!)


 須磨子はチーフを慕っている。

 チーフも須磨子を大切に思っている。


 なのに──


「2人して“あの人のために強くなりとうございます”って……

 バ、バカップル予備軍じゃん……!!」


 机をバン、と叩くと、周囲の従業員が少し驚いたが気にしない。


(こうなったら私が動くしかない!!

 すまっちにもチーフにも、背中押してやる!!)


 美佳は勢いよく椅子から立ち上がった。


◆須磨子様サイド:突然の誘い


「すまっち~!」


 明るい声とともに、美佳が駆け寄ってきた。


「まぁ、美佳様。どうかなさいましたの?」


「ねぇねぇ週末! 予定ある?

 ないなら──行きたいお店があるんだよね~!」


 美佳の目がきらきらしている。嫌な予兆のきらきら。


「まぁ……特には……」


「よしっ! じゃあ決定!!」


「え、ちょっと……」


「すまっちに絶対似合う服のお店があるんだよ~!

 それで散歩とかお茶とか──あ、あああっ!!」


「み、美佳様?」


 美佳は大げさに口元を押さえた。


「ごめん!! 急に思い出した!!

 わ、私、その日バイト入ってたわ!!」


「えっ、ではわたくしは……?」


「すまっち1人で行ってきて!!

 ……いや、1人じゃ危ないし──」


 美佳はわざとらしく周囲を見回し、


「チーフに付き添ってもらえばいいじゃん!!」


「えっ……!?」


「だってチーフ、頼めば絶対断らないって!

 すまっちのことだもん!」


「そ、そんな……!」


「じゃ! よろしく~!」


 美佳は手を振りながら走り去り──


(……ふふん、完璧……!)


 角を曲がった途端、したり顔になった。


◆チーフサイド:まんまと乗せられる


 学生ラウンジで書類を整理していたチーフに、美佳がずいっと顔を近づけた。


「チーフ~! 週末、暇?」


「……なんだ、急に」


「すまっちさぁ、買い物に行くんだって!

 可愛いお店! 似合う服! デートみたいなとこ!」


「っ……!」


「でもね? 私その日行けなくてさぁ……

 すまっち1人じゃ危ないじゃん?」


「危ない……確かに……」


「だから!

 チーフが送っていってあげればいいんじゃないかな~って!」


「……俺が、ですか」


「うん! すまっち喜ぶよ~!

 ほら、護身術始めたのだってチーフのためでしょ?」


「……っ」


 心を貫く一言。


 チーフは小さく息を吸った。


「……わかった。お供しよう」


「よっしゃあああ!!」


「今のは聞こえているぞ」


「げっ……!」


◆最後の一押し:すれ違うドキドキ


 そして週末前日。


「……チーフ様が、ご一緒してくださる……?」


 須磨子の胸は、期待でそっと跳ねる。


「チーフに聞いたらね~、“責任を持ってお守りします”ってさぁ!!」


「まあっ……!」


 一方チーフも──


「須磨子様に“よろしくお願いいたします”と……言われたんですか?」


「うんうん!

 なんなら“心強うございますわ”って言ってた!」


「…………」


 鼓動が静かに熱を帯びていく。


 その頃美佳は、


(よし……これで2人、運命のデートコース一直線……!)


 ほくそ笑んでいた。

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