23/80
チーフ自主練開始
──翌朝。
チーフは、いつもの時間より早く家を出た。
向かったのは、近所のトレーニングルーム。
受付の男が、意外そうに目を上げる。
「久しぶりですね」
「ああ」
短く答え、ロッカーへ向かう。
鏡に映る自分を一瞥するが、立ち止まらない。
ストレッチ。
深呼吸。
ベンチプレス。
重りを持ち上げる。
……鈍い。
腕が、わずかに遅れる。
チーフは何も言わず、重量をひとつ上げた。
再び、持ち上げる。
筋肉が震える。
呼吸が荒くなる。
だが、止めない。
もう一度。
もう一度。
バーを戻し、手のひらを見つめる。
白くなった指先が、ゆっくりと色を取り戻す。
チーフは、再び重りをつかんだ。
汗を拭いながら、チーフはスマートフォンを手に取る。
表示されたメッセージ。
須磨子様。
一瞬だけ、表情が和らぐ。
だがすぐに、ロッカーへ戻した。
――まだ足りない。
チーフは、再びベンチに向かった。




