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西園寺須磨子は未だ恋を知らない  作者: 天音紫子(著)×霧原影哉(構成・監修)
第5章 恋は試される──午後の小さな嵐のなかで
19/80

──恋の舞台裏・尾行全記録

「すまっち! ごめんっ!! 急にバイト入った!!

 本当ごめんだけど、今日はチーフと世界広げてきて!!」


叫ぶように言い残し、美佳は全力で駆けていった。


須磨子は驚かれながらも穏やかに微笑み、

チーフは(また急すぎる……)と胃を押さえる。


――だが、美佳は角を曲がった十秒後には、

壁に張り付き、サングラスをかけ、満面の笑みだった。


「……ふふっ。完璧。

 ここからは……尾行モード、発動!」


双眼鏡を取り出し、慎重に2人の背中を追いかけはじめた。


 


並木道を歩く2人は、並んでいるのに触れない距離。

須磨子様は胸元を押さえ、チーフは妙に歩幅を合わせている。


(え、なにこの初々しい雰囲気……!

 ていうかさ……手。つなげ……

 つなげよおおお!!)


じれったさを地面にぶつけるように、美佳は靴先で小さく踏み鳴らす。


喫茶店の窓に張り付くと、美佳の目はさらに見開かれた。


須磨子が紅茶を前に頬を染め、

チーフは砂糖を落としただけで耳まで赤い。


(あーーーはいはいはい……

 もう! 初々しさ世界大会かよ!!

 指、触れた!? 今触れたよね!?

 ……もう結婚しろ!!!)


叫びそうになって慌てて口を押さえ、

ほぼ涙目になりながら2人を見守った。


すると突然、男たちの怒号が響いた。


「ちょっとそこのお嬢さん、待ちなよ」


(でた……ならず者イベント!!)


美佳が物陰から覗くと、須磨子がバッグを

スパァァン! と振り抜くところだった。


「ご無体な! 何をなさいますの!!」


(つ、強ーーっ!?

 いや行けぇぇぇぇすまっちーー!!)


続いてチーフがかばうように前へ立ちふさがる姿を見て、

美佳は拳を握りしめる。


(これ! これは惚れる!! 惚れ直す!!)


そして――須磨子はヒールを脱ぎ、構えた。


「引きませんことよ!

 わたくしの大切な方に指一本触れさせませんわ!」


(言ったあああああ!!

 言ったよね!? 大切な方って言ったよね!?

 チーフ、聞いて!! いや聞いてないけど!!!)


ならず者が逃げ去ると、美佳は壁にもたれて震えた。


(……すまっち……最高……)


しかし息をつく暇もなく、

須磨子はストッキングの伝線に悲鳴を上げる。


「きゃああっ……!」


チーフが迷わず上着をかけ、

さらに――お姫様抱っこ。


(ちょ……ちょっ……!!

 今日のチーフ誰!?

 イケメンすぎてしぬんだけど!!)


リムジンに乗せられ運ばれていく2人を、

美佳は夜風の中でじっと見送った。


やがて静かにサングラスを外し、

ぽつりと呟く。


「……すまっち、幸せになりなよ。

 そのためなら、黒幕くらい何度でもやってあげるからね」


こうして、美佳にとっても“最高の一日”は幕を閉じた。

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