わたくし、なんてことを……!(夜の羞恥悶絶)
自室に戻り、扉が静かに閉まった瞬間──
張りつめていたものが、ふっとほどけた。
「……わ、わたくし……あの場で……」
頬が、急に熱を帯びる。
ショルダーバッグを振りかざし、
さらには靴を脱いでヒールを構えて──
あろうことか、あのきれいな声の前で
「退きませんことよ!」
などと堂々と言い切ってしまったのだ。
「は、はしたない……いくら大切な方をお守りしたかったとはいえ……!」
膝の上でぎゅっと両手を握りしめる。
須磨子の中では、
あれは必死の思いから自然と出た行動だったが──
(チーフ様は……どう思われたのかしら……)
その瞬間、胸の奥が
きゅう、と締めつけられる。
「きゃああああああ……!」
思わずベッドに倒れ込み、枕に顔を押しつけた。
恥ずかしさで全身が弾けそうだ。
しかも──
「……よりによって、ストッキングまで伝線して……!」
あれでは、まるでお転婆どころか
育ちの良い令嬢としてどうなのか、と
誰が見ても思ってしまうはず……。
なのにチーフは、
自分を責めるどころか
黙ってそっと上着をかけてくれて……
(……優しい方……)
胸がまた、甘く揺れた。
「本当に……なんてことを……
わたくし……もっと淑やかでいるつもりでしたのに……」
だけど。
あの瞬間、須磨子は
本当に“守りたい”と心の底から思ったのだ。
恥ずかしさの奥で、
その想いがまだ、微かにあたたかく灯っていた。




