階段の怪談と会談~伏木さんの周りでは不思議なことが起きる~
『朝起きたら……企画』参加作品……のつもりが間に合いませんでした。
伏木さんの周りでは不思議なことが起きる。
こんな話がある。
誰もいないのに毎晩、階段を上る音が聞こえてくる。その音が一段、また一段と増えていく、このままではいずれ自分の部屋に辿り着くだろう。
足音が階段を上りきり、自分の元まで来てしまったらどうしよう――そんな怪談である。
「――で、その足音を立てている最中のオバケさんと朝からばったり遭遇して話が弾んじゃったの」
「そんなご近所さんみたいなノリで心霊体験することある!?」
思わずそんなツッコミをするのは双和さん、伏木さんの友人だ。
双和さんは伏木さんのクラスメートであり、彼女の周りで起こる不思議現象に「そうはならんやろ」とツッコんでくれる常識人である。たまに、おかしなことに巻き込まれて困惑する苦労人でもあるが……そんな彼女を前に伏木さんは話し続ける。
「いやね、そのオバケさんが言うには『自分は毎晩、階段を一段上ることしかできない』ってルールがあるらしくて。だから、日中はいつも階段に待機してるって言ってた」
「通行人の邪魔じゃないの?」
「普段は誰にも見えないし、触れることもできないらしいから……私に話しかけられて、びっくりしたみたい」
オバケを驚かすなんてことある?
まぁ、伏木さんならありうるかもしれない……と一人で納得したが、双和さんはそこで「えっ」と声を上げる。
「奈々の方から話しかけたの!? オバケに!? なんて言ったの!?」
「普通に『どうしたんですか』って声かけたよ。近所付き合いのためには、日頃からコミュニケーションが大事だし」
「どうしたもこうしたもないし、そんな近所付き合い普通はないでしょう……それで、階段に居座ってる話を聞いたわけ?」
「うん、なんか上の階の住人を絶賛呪い中なんだって」
「それ絶対、絶賛していいことじゃないよね!?」
さらっと物騒なワードが出てきたが、伏木さんは能天気だ。
「いや、なんか話を聞き始めたら要するに『元彼への復讐』らしいんだけど話を聞いたら同情しちゃって……『私は生霊だから本体の方は普通に生きてるけど、あのゴミクズカスは許さない』ってぷんすか怒ってたんだよ」
「あ、死んだ人じゃないんだ……あ、それなら見た目はそんなグロくない感じ?」
幽霊、といえば血を流し凄まじい形相をしたおどろおどろしい見た目をイメージしていた双和さんに伏木さんは頷いてみせる。
「見た目はね、こんな感じだったよ」
ノートにさらさらとシャープペンシルを走らせた伏木さんは、それを双和さんに見せた。
「……これが階段にいたの……?」
伏木さんが描いたその「オバケ」の姿に、双和さんは困惑の声を上げる。
人の姿をしていない、異形の何か――なのはわかるが、がたがたの線が「本当にそうなのか?」と疑問を感じさせる。全体的なバランスの悪さ、デフォルメされすぎたデザイン。
果たして本当にこれが階段にいたのか、あるいは伏木さんの画力が問題で本当はもう少しマシな怪談が階段にいたのか……真偽の程は不明だが、「こんな得体の知れない存在と会談する奈々って一体……」と双和さんは思わずにはいられなかった。




