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お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。  作者: イコ


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研究者って怖い!

 夜の学園都市は、別の顔を見せてくれる。


 学園と言いながらも幅広い年齢の人間が街を作っており、酒場も存在して、冒険者や傭兵などの柄の悪い者たちが宿をとっている場所も存在する。


「ふふ、ご主人様と二人でデートだといったら、ジュリアちゃん、レンナちゃんに嫉妬されてしまいます」


 先ほどから火酒をガンガンに飲んでいるチョコ。


 僕は一杯でダウンしてしまいそうな度数の高い酒なのだが、チョコの前に次々と男たちがダウンしていく姿を見て、恐ろしくなる。


「二人で来ている気分には全然なれないけどね」

「あはははは、皆さんお酒を奢ってくれるので、本当にお優しいです」

「はは、奢っているというよりも、潰されているという感じだけどね」


 なぜ、こんなことになっているのかと言えば、チョコはテルから、僕が助けたい少女トアに絡む男たちを、横から声をかけて酒の飲み比べをしては酔い潰していた。


 幼さと美しさを内包させたチョコの妖艶さが、男たちを翻弄してどんどん潰していく。


「あっ、あのお客様」


 僕に声をかけてきたのは、トアだった。


 ミニスカ給仕服を着たトアは髪の毛とビン底メガネであまりにも似合っていない。

 

 逆にそのおかげで他のキャストに比べると人気がない。


 それでも誰でも良いと思う男たちに狙われるので、僕の専属として、横についてもらってお酒を注いでもらっていた。


 マスターには専属としての金貨を通常の倍払っていた。


 所謂、指名料だ。


 お世辞にも可愛い見た目ではないが、実際の彼女はとても美しくて聡明な人間だ。


 ただ、高いお酒を飲む場所には似つかわしくない人物ではある。


「なんだい?」

「この間、助けてくれた方ですよね?」

「うん? よく覚えていないな」

「嘘です。私を家まで送ってくれた方が教えてくれました。偉い方の考えはわからないって」


 テルの奴が何やらボヤいていたってことかな? それでも素性のわからない貴族の息子に気に入られて戸惑っているって感じだろうな。


「わからないならわからないでいいんじゃないかな? 僕はただ適当に生きているだけだよ。お気楽な貴族様の戯れさ」

「適当にですか?」

「ああ、そうだ。例えば、ここに火属性の魔石がある」

「えっ? 魔石ですか?」


 僕は彼女に少しだけ、不思議な話をすることにした。


「ああ、そしてここに四角い形をした絹のハンカチがある。これに防火のためにニスを塗って、火属性の魔石の上に置くと浮くんだ」

「えっ?! なんですかこれ??」


 トアと話すために用意しました。相手にサプライズする時は、下準備は大切だよね。


「はは、僕はね。自由なんだよ。こんな遊びを思いついて、無駄に高い魔石を購入してしまうぐらいにね」


 これは気球の原理であり、どうして僕がこんな話をしたのか? それは彼女の将来に関係している。


「興味深いです!」

「君なら、そのうち気づいただろうけどね」

「えっ?」

「いいや、なんでもないよ。気体の力って凄いよね。僕らには見えないのに、そこには存在するんだ」

「気体?」


 この世界は魔法が発展しているせいで、科学的な言葉がどうしても通じにくい。


「そうだね。世界には見えないけど、この世界には様々な物体が存在しているんだ」

「はい!」

「それらには重さがあって、熱することで、絹の中に溜まった気体が温められて、周りの冷たい気体たちよりも軽くなって、押し上げられて浮くんだよ」


 詳しいことは僕にもわからないんだけどね。


 昔の偉い人がそういう原理を発見して、気球を作った。そして、この世界には魔法が存在するので、空を飛ぶのにも魔法が使われる。


 だが、それは魔力が多く存在する魔導師の特権であり、魔力が少ない者には不可能なことなんだよね。


「あの!」

「うん?」

「フライ様で、よかったですよね」

「ああ、僕はフライだよ」

「もっと教えていただけませんか?」

「えっ?」


 先ほどまで僕の横で、お酒を注ぐことを嫌々でやっていたトアが、目をキラキラさせて問いかけてくる。


 どこかで見たことがある顔だと思って、子供の頃のエリック兄上を思い出す。


「私、子供の頃から魔力が少なかったんです! だけど、自分で使える魔道具を作りたくて、ずっと考えていたんです。ですが、今の発想で何か閃きそうなんです! なんでもします! どうか、フライ様! 私にご教授ください!」


 うんうん、知識のために色々したいのはわかるけど、僕は適当に言っていただけなので、詳しくは教えられないんだよね。


「えっと、さっきも言ったけど、僕のは遊びだよ。気体とか、浮力を使って遊んでいるだけで」

「浮力!!! また新しい単語ですね! 浮く力ということは、物を浮かすんですよね? 先ほどの熱によって浮く力ですね!」


 うわ〜、これが研究者って奴なんですね。メチャクチャめんどくさい。


 しかも、先ほどまでオドオドしていたのに、今は生き生きとしてよく口が回る。


「あぁ、トアはなんだか凄いね」

「はい?? 申し訳ありません。つい、自分の興味があることだと夢中になってしまって」


 知ってるよ。君が開発する飛行船は、この世界を変える力を持っているんだから。


 僕は飛行船は知っているが、造れるのかと聞かれれば答えはノーだ。


 普通に考えてできるはずがない。


 骨組みとか、原理とか、全部覚えているわけがない。ゲームや物語で、飛行船に乗って様々な世界を旅する話はとても興味深かった。


 だから、憧れたことはあるけどね。


「あの!」

「うん?」

「わっ、私の貧相なお体で満足していただけるのかわかりませんが、あなたの知識をいただけるなら、この体を好きにしてください! 私に差し出せるのもはこれしかありません!」


 うん。いきなりぶっ飛んだことを言っているね。


 これはどうしようか?


「はいはい、ダメですよ。フライ様のDTはみんなが狙っているので、いきなり現れたあなたには上げません」


 戻ってきたチョコがトアを引き離してくれる。


 酒場の中を見れば、すでに立っている男は僕以外にいなかった。


「チョコ?」

「ふふ、フライ様。そろそろ帰りましょう。もう飲んでくれる人がいないので」

「あっ、ああ。トア、また今度な」

「必ず!」


 うん。とんでもない子に火をつけてしまったのかもしれない。


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