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お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。  作者: イコ


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アイリーンの意志

 アイリーンが僕のためにしてくれることを疑わない。だから、何かがおかしいと思った。


 ブラウンのボサボサ髪にビン底メガネ、彼女は小説の中で、メインヒロインと呼ぶべき力を持った女性である。


 絶対に敵対したくない相手として、僕の中でブラックリスト入りしているほどだ。


「フライ様? お呼びですか?」


 夜遅くにアイリーンを呼びつけることはできなかったので、次の日になって僕はアイリーンに話を聞くことにした。


「先日頼んでいた支援したい女性のことなんだけど」

「トアさんのことですね? はい。フライ様が要望した通りに手配をしました」


 アイリーンの言葉に嘘はない。やはり彼女が僕に嘘をつくはずがない。


「ちなみに、どんな方法で?」

「えっと、彼女は男爵家の支援を受けていましたので、そちらに彼女の支援をしたいと申し出て、費用の支給をさせていただきました。流石にお世話になっている貴族がいたので、直接はまずいかと思いまして。いけませんでしたでしょうか?」


 なるほど、アイリーンは僕の言った通りにしてくれた。だけど、トアはアルバイトをしている。つまり、こちらの支援がトアに正しく届いていないってことか。


「ありがとう。なんとなく見えてきたよ」

「どうかされたのですか?」

「うん。実は昨日、そのトアに会ったんだ。彼女は夜の怪しい酒場でアルバイトをしていて、変なオジサンに危ないことをされそうになっていてね」

「!!! 申し訳ありません。どうやらフライ様から引き受けた仕事を正しく行えていませんでした!」


 険しい表情になったアイリーンは自分の責任だと頭を下げて謝ってくれる。


「いや、僕も自分で確認しなかったのも悪いから」

「いえ、ユーハイム家の長女として、これは由々しき事態です」

「えっ?」

「フライ様、この度はアイリーン・ユーハイムの失態でございます。何がなんでも、トア様の現状を救出してみせます」

「あ〜うん。なら頼もうかな。だけど、僕も僕なりに動くよ」


 少しばかり許せない状況だよね。トア、彼女は学園都市に特待生として入学して、ある分野で大成功を収める才女だ。


 今後、戦争が起きた際に彼女を味方にしているのか、していないのかによって戦況は大きく変わることになる。


「かしこまりました。フライ様の手を煩わせてしまったこと、心からお詫びします」

「いや、本当にアイリーンのことを怒ってはいないよ」

「フライ様の優しい言葉は嬉しくはありますが、どうしても自分が許せません。エリザベートではなく、私を選んでくださったのに。このような失態を必ず汚名返上させていただきます」


 アイリーンは意気込んで、僕の部屋を飛び出していった。


 彼女も僕と同じく小説には登場しないキャラだ。こうやって存在しない者同士で話をするというのは、暗躍しているようで楽しい。


 今回の失敗で少しだけアイリーンのことがわかったような気がする。


 彼女は、責任感が強くて、負けず嫌いなのかもしれない。いつもは控えているので気づかなかった。


 エリザベートに対して、彼女なりの劣等感があるのかもしれないね。


「トアのことを気にしながら、アイリーンに任せてみようかな。彼女は相当に責任を感じていたようだし」


 表向きには飲み歩くついでとして、トアのことを気にかけよう。ということで、私はいつも通りテルを誘いにいく。


「あれ? 今日はチョコもいるのかい?」

「ご主人様! 私もお酒が飲みたいのです!」

「あ〜ドワーフはお酒が好きなんだっけ?」

「はいです! 出来れば火酒がいいです」


 物凄くアルコール度数が高いお酒だよね? チラリとテルを見れば、毎日連れ回していたからか、少々疲れているようだ。


「わかったよ。テルはどうする?」

「私は今日は休むわ。ちょっと夜更かしをしすぎて肌荒れが気になるのよね。朝はいくら早くても良いんだけど、夜更かしはお肌の天敵よ。それにお酒を飲むのも体に良くないわ」


 どうやら美意識の高さがテルのお酒への抵抗感を生んでしまったようだ。


「それと、これはあの子が働いている酒場。私よりも女性を連れて行く方がいいわ。チョコは見た目はドワーフだから幼く見えるけど、化粧をすれば大人の女性に見えるわよ。それにお酒も強いから、何かあったときに頼りになるわよ」


 どうやらテルはトアの事情を察してくれて、チョコを用意してくれたようだ。


 こういうところに気が回るのも、女心というものかな? ありがたいね。


「ありがとう、テル。また付き合ってくれると嬉しいよ」

「もう仕方ない、ご主人様ね。今回の一件が片付いたら付き合ってあげるわ。あの子を助けるのでしょ?」

「わかってたのか?」

「ええ、ご主人様って、なんだかんだ言いながら女の子に甘いもの」


 テルにはなんでもお見通しのようだ。


「準備ができたのです!」


 そういって現れたチョコは、高めのヒールに着飾った派手なドレスを着ていた。化粧もしているので、普段よりも大人っぽい雰囲気に見えた。


「おお、いいな。チョコは美人だな」

「ふふ、ご主人様〜褒めても何も出ないです! 一晩相手をしてあげてもいいですよ。ボーヤ」


 雰囲気まで演出してくれて、なかなかに面白い。

 

 女性は化粧をすると変わるというが、チョコは普段は三つ編みにゴワゴワとした髪質をしている。


 さらに職人として作業着を着ているが、着飾って髪の毛をセットするとエキゾチックな大人っぽい雰囲気を醸し出して、年上のお姉さんという印象が強くなる。


「ありがとう。なら、今日はエスコートさせてもらうよ」

「喜んで」

「テル、他の奴らの面倒は頼むな」

「はいはい。気をつけてね。ご主人様」


 テルに後のことを任せて、僕はトアが働いている酒場へと向かいました。

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