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お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。  作者: イコ


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男友達と飲む酒は気分がいいね。

 またまた学園に行くのが面倒になってしまったな。


 学園に行くと、どうしてもエドガーの一件を噂されてしまう。だけど、ジュリアやレンナは教育を受けさせたい。


 二人のことはエリザベートとアイリーンに頼むことにして、僕は奴隷で唯一の男娘を連れて飲み歩くことにした。


「どうして私が」

「すまないな。他の女の子を連れ歩くのは気が引けるんだ」

「私も心は女よ!」

「わかってるよ。だけど、見た目は男だから、僕の心がお前を選んじゃうんだよ。テル」

「ふん、仕方ないご主人様だね」


 黒いタキシードスーツに身を包んだテルは、奴隷でありながら農業がしたいと言っていたのだが、なかなか農地が確保できていないので、僕の護衛として飲み歩く際に付き合ってもらっている。


 これが凄いのだが、テルは酒豪だ。


 僕はお酒が好きだが、あまり強くないので、最初はエールを飲む。


 あとはハイボールで、ゆっくり飲むことにしている。


「テルはどんな酒でも飲めるのかい?」

「さぁ知らないわ。私はお酒を飲むのも初めてだったのよ。ご主人様が飲ませるまで、自分がこんなにもお酒が飲めるって知らなかったもの」

「それもそうか。だけど、やっぱり友人と酒を飲むってのは楽しいな」

「もう、私は女だって言っているのに、男友達のように扱うんだから、仕方ないご主人様ね」


 テルは見た目には中性的なイケメンだ。


 おネエ口調だが、それも柔らかく感じるので、一緒にいて楽しい。


 農業しか知らないテルに酒を教えて、ボートレースを教えて、僕の友人として様々なことを一緒に経験してもらっている。


 そして、農業をしているからか、体は引き締まっていて意外に腕っぷしも強い。


「テルは運動神経がいいから、一緒に遊んでいて楽しいんだ」

「ご主人様は、無茶苦茶だって自覚した方がいいよ。平凡なんて嘘をついて」

「嘘なんてついていないさ。この世界は夢の続きで、僕が想像していたチート能力が存在しない。僕は魔力はそこそこに多い方だけど、属性魔法も使えない。魔物も思っていたよりも強くなくて、色々と不便な世界なんだよ」


 少し酔ったかもね。友人と遊び歩いて酒を飲むなんてことはほとんどないから。


「はは、こんな酔っているご主人様を見たら、ジュリアやレンナなら襲ってしまうじゃないかしら? 私の可愛いご主人様」

「うん? 何か言ったか?」

「いいえ、それよりもそろそろ帰らない? 酔いすぎてるわよ」

「はは、そうだな」


 僕はテルに肩を借りて酒場を後にする。だが、酒場を出たところで、学園の生徒らしき女の子が絡まれていた。


「いいからこっちに来い!」

「やめてください! 私はアルバイトをしているだけなんです」

「へへ、宿屋でアルバイトなんだ。そういうこともしているんだろ? 金貨をやるんだ。いいだろ!」

「やめて! 誰か」


 ハァ〜せっかく人が良い気分で酒を飲んでいるのに、気分を害する奴っていうのはどこにでもいるんだな。


「おい、嫌がってるだろ。やめろ」

「あん? なんだ兄ちゃん。お前もこの女が欲しいのか? 悪いな。俺が先だ」

「テル。女の子を頼むね」

「ご主人様?」

「ああ、本当に嫌だ。僕は誰かを傷つけるのも、暴力を振るうのも本当に嫌いなんだ。瞬足」

「はっ?」


 たった一歩進んだだけで、景色が変わって女の子の後ろにいる男の前に移動して、僕は男の首を掴んで持ち上げる。


 女の子の背中を押して、テルの方へと向かわせた。


 テルは、女の子を受け止めて、僕は酔っ払いの男を地面に叩きつけた。


「グハッ?! ひっ!?」

「一度で聞けよ。僕はフライ・エルトール。帝国の貴族だ。文句があるのか?」

「ひっ!? 貴族様とは知らずに申し訳ありませんでした。命だけは、命だけは! 家には妻も子供もおりまして、俺が死んだら生活が!」

「おいおい、家族がいるのに、無理やり女性を襲おうとしたのか? なら、お前を殺して、妻と子供に一生暮らせる金を渡せば問題ないな」

「ひっ!?」


 僕は本当に酔っているようだね。自分でも悪人のようなことを言っている自覚はありる。でも、どうしようもないほどの怒りが湧いてきて仕方ない。


「一度だけだ」

「へっ?」

「一度だけ貴様を見逃してやる。だが、常にお前は監視されていると思え。お前が次に誰かに悪いことをしたならば殺す。妻や子供に暴力を振るったり、人を傷つけるようなことがあれば殺す。貴様の今後の人生が善行以外を行えば殺す。これは僕からの呪いだ。その誓いを受けられるなら見逃してやる」

「かっ、必ず! 約束します」

「そうか、なら呪いの契約は成立した」


 僕の体から魔力の放流が行われて、男の中に刻まれる。


「こっ、これは?」

「お前が嘘をついていたら死ぬぞ。大丈夫なんだろ? 僕は一度だけ見逃してやった。だが、貴様は僕との約束を守れるのか?」

「はっ、はい! 守ります!」

「どうやら、妻や子供がいるのは本当だったようだね。もしも、それが嘘なら、今ここで死んでいた」

「ひっ!?」

「もう行け」

「はっ、はい!」


 男が立ち去っていく。


 酔っていると言っても、僕は自分でどうしてここまで怒りを感じるのかわからない。だけど、エドガーの時と同じで、女性に対して非道なことをしようとする奴にはどうしても怒りを感じてしまう。


「あっ、あの」

「えっ?」


 ボサボサの髪にビン底のようなメガネをした女の子が声をかけてきた。


「ああ、そうだった。君を助けたんだったね」


 本当に酔っているね。どうして男に対して怒りを感じたのかも忘れてしまっていた。いつも適当にしているから、こんな時まで適当になってしまう。


「ありがとうございました! あなた様が助けていただきなんとお礼をすればいいか?!」

「問題ないさ。それに君も宿屋でバイトなんて危ないじゃないか?」

「でも、お金がなくて」


 彼女は涙を拭くためにメガネを外す。そして、私は驚いてしまう。


 私がアイリーンに支援をお願いした。女性だったからだ。


「君は支援を受けているのでは?」

「いえ、誰からもそんなことはありませんよ」

「うん? そうか。どうやら今日は僕も酔っているようだ。テル、彼女を送ってあげてくれるかい?」

「うん。フライ様は大丈夫?」

「ああ、少し考えたいことがあるんだ」

「わかったよ」


 僕は一人で夜道を歩きたい気分だった。テルに彼女を任せて歩き出す。


 そんな僕の背中に向けて、彼女は深々と頭を下げていた。

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