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お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。  作者: イコ


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獣人少女 後半

《sideフライ・エルトール》


 結論から言おう。


 ジュリアは、聖痕持ちだ。


 なぜ彼女が聖痕持ちか知っているかと言えば、彼女がストーリーを持つ主人公サイドの人間だと言いたい。それも序盤で明かされる聖痕持ちなので覚えていた。


 ジュリアは幼少期に辛い過去を持っており、奴隷となって酷い扱いを受ける。だが、貞操危機を迎えた際に、その聖痕の力を発揮して奴隷商人たちを皆殺しにしてしまう。


 そのことによって、大罪人として二年間、監獄で幽閉される。


 だが、戦乱が始まり、大罪人である彼女の力が必要だと、別の主人公によって使われることになるが、彼女の凍りついた心を溶かして、聖痕の力を使えるようになっていく。


 彼女の聖痕は、成長の聖痕であり、本来は獣人へと変化させる能力を、聖痕の影響によって変質させた存在なのだ。


 てか、街でばったり聖痕持ちに出会うとか怖すぎない? 最初は気づかなくて、いつものお金配りおじさんをしていただけなんだけど、何やら懐かれて強くなりたいって聞いたので、何ができるのか聞いたらわかっちゃったよね。


 このまま行くと奴隷商人に捕まって、奴隷商人たちが全殺しにあっちゃうよね。


 なので奴隷商人たちの命を助けて、ついでに色々と頂いちゃおう。


 ふふふ、道楽息子は時に悪役ムーブを展開するんだよ。


 どうせ、死ぬ運命なら、好き勝手に生きたっていいじゃない。どうせ二度目の人生だからね。幸福な時間を与えられているんだ。辛い運命を背負った女の子を助けるのもありだって話。


「さて、奴隷商人君。事情は理解したかな?」

「はっ、はい」


 奴隷として現れた熊の獣人とジュリアが戦闘を開始した。


 彼女の力は、成長聖痕ではあるが、現在は覚醒前であり、能力を上手く使えない彼女にできることは、全力で戦うことだけだ。


 難しいことを教えても意味はない。


 成長させる時間はない。


 なら、彼女自身の力を簡単に、どんなものなのか説明して思いっきり振るわせればいい。


「ボクは特別なんだ!」


 秋田犬のようなモフモフ少女が、フサフサの尻尾を振り乱して、戦う姿は見ていて本当に可愛いよね。


 何よりも難しく言いくるめたけど、元々のポテンシャルが違うので、普通の獣人じゃ相手にならないんだよね。


「グマっ?!」


 吹き飛んできた熊の獣人。犬のモフモフパンチで物凄い力を発揮していることにジュリアは気づいているのかな? 


「さて、決着もついたみたいだから、こちらも話し合いを終わらせようか? 何も僕は君から全てを奪おうとは思っていないよ。君の命を助けよう。だけど、彼女といくつかの奴隷の権利を譲渡してもらって、お金を奪っていくね。それで許してあげるよ。そうそう、君のことを密告したので、学園都市では商売ができなくなるけど、仕方ないよね。悪いことをしてきたんだから」


 たまには人助けをするのも悪くないよね。


 ボートレース酒場のお爺さんにギャンブルで儲けたお金は渡したので、ギャンブルをして儲けた功績も消せたよね? なんだか奴隷の権利も貰っちゃったけど、一件落着かな。


「こんなところにおられたのですね。フライ様」

「はは、ちょっと飲みすぎて、路地裏で休んでいたんだ。ジュリアが看病してくれてね」

「そうでしたか、それよりも決着がつきました」

「そうか。エリザベート、ありがとう」


 さすがは伯爵令嬢だね。奴隷商人の元締めと話をつけてくれたんだ。


「いえ、《《今回も》》フライ様の言われた通りでした」

「たまたまだよ。僕は適当に当たりをつけただけだからね」


 適当に言ったことが当たったようですね。まぁ、これでフラフラする理由も完全になくなったので、そろそろ学園に通うしかないです。


「これで、約束通りに学園に行ってくれますね?」


 アイリーンが大きな胸で僕の左腕をホールドする。


「約束ですよ。わたくし達と学園に行くと」

 

 エリザベートに右腕をホールドされて、完全に捕まってしまった。


「ジュリア、君もおいで」

「えっ?」

「今後は、君は僕のものだ」

「フライ様のもの?」

「ああ、君の所有権は僕に移ったからね。よろしく、僕が君のご主人様だ」


 奴隷商人を潰した時に譲歩された奴隷に、なんだかお爺さんから奴隷の権利まで譲渡されたから、一気に奴隷が増えちゃった。


 家に帰ったら、奴隷をお迎えするための準備をしないといけないな。


「フライ様!」

「うん?」


 両腕をホールドされて連れて行かれる僕にジュリアが声をかけてくる。


「ありがとうございました!」


 涙を浮かべながらお礼をいうジュリアに僕は笑いかける。


「よかったね、ジュリア。だけど、これからは僕のお世話をしてね。僕ってめんどくさがりで、色々と手間がかかるから」

「もちろんです! いつまでもあなたに従います! ボクのご主人様ですから!」


 嬉しそうに笑ってくれてよかったね。


「まぁ、フライ様。また新しい女の子を家に連れ込むんですね」


 エリザベートに僕のお尻をつねられる。


「あっ、痛い! これは人助けで」

「ふふふ、私の時もそうやって命を助けてくれたんですよね。わかっていますよ。フライ様はそんなつもりはなくても、女の子を助けちゃうんですよね」


 アイリーンも腕をつねってくる。どうして君たち姉妹は僕をつねるの!


「ご主人様、カッコ悪いです。ふふ」


 そんな僕たちのやりとりを見て、ジュリアが笑う。うん、いい笑顔だね。


 まぁ、それならいいか。


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