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きらら  作者: ひなことり
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01 出会い

当てもなくとぼとぼと歩く。

生まれた時からこの土地で育ち、見慣れた景色。

ここは王都ルクシア、城下町。

港もあって、商人も行き交い易く住みやすい結構賑やかなところ。


エルム=ダリナは学者の娘として生を受けた。

両親は学者としては優秀なのだろう。

親としては…なんとも言えないが。

家にはジョフィア=エルフィーナという遠縁の少年が一緒に住み、共に学校に通っている。

ジョフィアは1つ下だがエルムを姉のように慕っているのか、いつもくっついてくる。

いつも、いつもだ。


(甘いものが食べたい気分だわ)


気分に合わせて城下町の露店がある場所へと移動することにした。





(アイスクリーム…クレープ…うーん、どうしようかな)


どんっ。

露店に視線がいき、人にぶつかってしまった。


「ごっ、こめんなさい。よそ見してて…大丈夫ですか?」


「いやっ、オレのほうこそちゃんと前を見ていなくてすまなかった。

 怪我はないか?」


ぶつかった相手は紫がかった銀色の髪の爽やかそうな青年だった。

年は17.8くらいだろうか。


「私は大丈夫です。

 ここって美味しそうな露店が多いので目移りしちゃいますよね」


クスッと、その発言により場が和やかな空気になる。


「ああ、そうだな。うまそうだ。良かったらおごるよ」


「えっ!? いえ、そんなつもりで言った訳ではないので大丈夫…」


「おごらせてよ。その代わりちょっと付き合って欲しいんだ。

 1人で食べるのは味気なくてあまり好きじゃなくて」


「私は知らない人とのお食事はちょっと…」


「オレはフィート! ほら、これでもう知らない人じゃないだろっ?

 お前の名前は?」


にーっとその人は笑う。

なつっこく、悪い人ではなさそうだ。


「…はぁ、分かりましたよ。ぶつかったのも何かの縁だと思ってお付き合いしますー。

 私の名前はエルムです」


ふーっとため息。今日何度目だろう?


「よろしくな、エルム。

 じゃあ早速。オレ、あれがいいな!」


「クレープですか?」


「そうそれ! 中に色々入れてるのをさっきからずっと見てたんだ。」


「分かりました。フィートさんはどれにしますか?」


「んー…エルムはどれにする? あと、おすすめはどれ?」


「私はこの苺のにします。

 おススメはこのチョコとアイスのと…あとこれも好きでよく食べますね」


「分かった、ありがとう。

 おっちゃん! この苺のとチョコとアイスのやつ1個ずつね!! これお代、ここに置くよ」


「あいよっ。

 さいっこーに美味いクレープ作ってやっからちょっと待ってな」


フィートは悪い人ではないが、結構強引な人かなとエルムは思った。





「あっちのベンチに座って食べようか」


結局訳が分からないまま、初対面の男性とクレープを食べている事になんだか少し、おかしくて笑みがこぼれる。


「どうした?」


「ふふっ、フィートさんって面白い人だなって思って。

 いつもこんな感じなんですか?」


「そうだなぁ。いつも一緒に行動してる奴がいるから1人だと食事もつまんないよなー。

 あ、エルムの苺のほうもちょっと頂戴」


「…え、ちょっ、えっ!?!?」


そう言うなりフィートはエルムの手の中のからクレープを食べた。

エルムは、信じられない、とそんな表情になった。


「ほら、エルムもオレのチョコとアイスのやつ、どーぞ」


「いえ、私は…」


「遠慮すんなって。これも好きなやつなんだろ?」


ずいっと出してくるフィート。

だがエルムが思ってるのはそういう事じゃなく。


「いえ、あの、人の食べかけを、ましてや初対面の異性の方は…」


「へっ? えっ、あっ…あぁー! またやっちまった。悪い、ライラ相手のつもりでつい――

 そんなつもりじゃないんだ、悪かった。

 ライラから逃げてきたのに、ライラと一緒にいる感覚になるほどいつも一緒にいるって事か」


「ライラさんという方から逃げてるんですか?」


「あー、あいつなー。煩いんだよ。

 口を開けばもっと自覚を持てだの、ちゃんとしろだの…全く。

 オレだって色々考えてるんだけどなぁ。

 まぁでもこれ食べたら帰るかな…あんまり心配させてもまた後で煩くなるだけだし」


「楽しそうにその方の事をお話しされるんですね。

 私にもいますよ、いっつもくっついてくるのが。

 結構煩わしいですよね、なかなか1人の時間も取れなくなっちゃうし」


「ははっ、じゃあ解放される為にももう少しのんびりしよう。

 食べたら公園の散歩道にでも行こうか。

 …いやまて、そこだとライラに見つかるかもしれないから港にでも見に行こう」

 

「港か…いいですよ、行きましょう

 ところで逃げてるって何したんですか?」


どんな縁なのか、フィートと港に行くことになった。

全てはここから始まる。

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