プロローグ
私は何のために生まれてきたの…?
私は誰かに必要とされているの…?
私、…私は、いったい誰なの………?
「エルムさん、どうかしたんですか?」
「えっ?」
考え事をして人の声なんて全く耳に届いてなかった。
事の発端は先週の夜、たまたま聞いてしまった『あの人達の会話』
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アルムは無事なのか!?
アルムを、私達の娘を返してくれ!!
お前達魔族は私達家族を一体どうしたいというのだ…
『ただの暇潰し、アソビですよ。
…あとはヒトへのちょっとの好奇心、ですね。
では契約通り引き続きよろしくお願いします。』
契約だと!?
いつも貴様が勝手に言ってるだけではないか!!
まっ、待て…!!
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エルムと呼ばれた少女はふぅっとため息を吐く。
「なんでもないよ。気にしないで。」
「そうですか?
でも近頃エルムさんなんだか変ですよ?
前の実技の時もぼーっとしてたみたいだったし、今だってそうですよね?
悩み事ですか?
僕じゃ全然頼りにならないかもしれませんが、話してみたら意外にスッキリする事もありますよ?」
「うぅん、本当になんでもないの。
ありがとうジョフィア、私を気にかけてくれて」
「それならいいんですが…あ、そういえば今日の実験で…」
「ごめんねジョフィア。
私、用事があったことを忘れていたわ。
じゃあ、また後で!」
少年が言葉を発する間もなくエルムは走り出した。
「やっぱりいつもと違うよ、エルムさん。どうしちゃったんだろう?」
エルムは足を止めて振り返った。
「心配してくれたジョフィアに悪い事しちゃったかな。だけど…」
エルムあの人たち<両親>に愛されていない。
愛されていると感じたことがない。
むしろ畏怖の対象とさえ感じる。
なぜなのか、それは分からない。
ただ、両親には私の他にも娘がいる、それを先週知ったのだ。
『アルムという名前の私の姉…それとも妹かしら?
どちらかはまだ分からないけど、私には姉妹がいるのよね。
その人を魔族が連れ去った?
何の為に?
うーん………情報が少なすぎて訳が分からないわ。
声を聞いただけだから魔族の姿形も分からないし、そもそも魔族なんて本当にいるの?
歴史の教科書でしか見たことないし。
こんな突拍子もない事、ジョフィアに話しても、ね…』
ずっと心に小さなトゲがささったまま。
その小さなトゲは少しずつ大きくなり、違和感に変わり、表面化する。