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最終章:わたしたちが選んだ明日
春。
校門の前に並ぶ満開の桜の下、
制服姿のふたりは、小さく笑い合っていた。
卒業証書を手にした紬は、少しだけ眩しそうに空を見上げる。
「……本当に、終わったんだね」
「あんなに長くて、息ができなかった時間が……」
エマは隣でそっと笑う。
「でも、終わっただけじゃないよ。
ちゃんと、“生き抜いた”んだよ、わたしたち」
ふたりはそれぞれ別の学校に通いながらも、
会える日はいつも一緒にいて、夜は電話をして、
傷を見せ合いながら、支え合って過ごしてきた。
⸻
紬は春から、福祉関係の専門学校に進学する。
“誰かの痛みに、ちゃんと触れられる人になりたい”という気持ちを胸に。
エマは、美術系の大学に進む。
いつか、自分の絵本で“子どもたちに優しい世界を見せたい”と話していた。
進む道は違っても、心の距離はずっと近くにある。
「ねぇ、紬」
「春になったら、また一緒に桜見に行こうね」
「うん。……来年も、再来年も、ずっと一緒に見よう」
ふたりの影が、春風に揺れる。
⸻
“声にならなかった痛み”も、“壊れた時間”も、
すべてを抱えて、それでも生きることを選んだふたり。
誰かがくれた“救い”ではない。
ふたりで選び、歩いてきた“再生”の物語。
終わらせたのは、過去じゃない。
始めたのは、“これから”だった。




