第二十五章:家族としての未来
父は何も言わないが、エマが遊びに来た日は料理の量が少しだけ増える。
弟も、ときどき無言でお菓子を置いていく。
無理に「普通の家庭」を演じるわけじゃない。
でも、確かにこの家は、かつての家とはもう違っていた。
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エマとの距離感
最初、父はエマに対して少し“緊張”していた。
無口で、目を見て話さないらんをどう扱えばいいかわからなかったのだ。
でも、ある日紬がふと言った。
「エマがいたから、あたし、生きてこれたんだよ」
それを聞いて、父は深く頭を下げた。
「ありがとう。本当に、ありがとう」
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弟は最初、エマのことを「姉にとっての救い」として尊重していた。
ただ、どう接すればいいかわからなかった。無理に仲良くなろうとはしなかった。
でも、あるとき紬の家に遊びに来たときのこと。
らんが作ったオムライスを食べながら、小さく言った。
「これ……うまいっすね」
「また、食べていいですか」
その一言に、エマがふっと笑った。
それから、少しずつ会話が増えていった。
今では、ゲームの話をしたり、一緒に買い物に出たりする関係に。
エマにとっても、“対人関係のリハビリ”のような時間になっている。




