第二十四章:ただ、あなたに会いたい
スマホの画面を何度も開いては閉じる夜が続いた。
でもこの夜、エマはついにメッセージを打ち始めた。
ゆっくりと、震える指先で、心を削るように。
『ごめんね、突然いなくなって』
『あなたの目を見れなかった。
“わたしが誰かを傷つけた”って思うのが怖かった』
『でもね、気づいたの。
あなたを思い出すたび、
わたし、少しずつ生き返るみたいに息ができてる』
『……もしまだ、あなたが“隣にいてもいい”って言ってくれるなら、
もう一度、会いたいです。話したいです。
わたしから逃げない。今度はちゃんと、あなたの声を聞くから』
メッセージを送った直後、画面が“既読”に変わった。
次の瞬間、紬からの返信が届いた。
『わたし、待ってたよ。ずっと。』
『何度も言葉を送ろうとして、送れなかった。
でも今、やっと言える。――帰ってきて、エマ。』
『わたし、あなたがいてくれないと、
世界の音が全部、ノイズに聞こえる。』
⸻
翌日。
紬の家のドアがノックされる。
紬がドアを開けると、エマが立っていた。
手には何も持っていない。
ただ、真っ直ぐに彼女を見ていた。
沈黙が、ほんの数秒。
そのあと、紬は何も言わずに、エマを抱きしめた。
「おかえり」
「……帰ってきてくれて、ありがとう」
エマは、紬の首元に顔をうずめたまま、かすかに言った。
「……ただいま」
「好き。紬、わたし、あなたがいないと――」
紬の唇がそっと、エマの言葉を塞いだ。
「……わたしも、同じだよ」
⸻
それは、壊れかけたふたりが
“もう一度始めたい”と願った日だった。




