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AI賢者は帰れない-Suzume’s Hidden Scroll   作者: ジャンクヤード•スクラップス
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第9話「“秘密の腕時計”でリモート連携?」

 夕食を終えた夜、マスターのカフェはシャッターを下ろし、完全に閉店状態になっていた。外の看板も消され、静まり返った店内。その2階の生活スペースでは、簡易の作業台が用意され、スズメとマスター、それにiPad内のカカシがランプの明かりを囲んでいる。

夕方の騒動で、スズメは「書店が大混乱だから助けてほしい」と涙目で訴え、カカシは「メルトダウンが怖いから書店端末には戻りたくない」と拒む。両者の溝を埋めるため、マスターが何か特別な装置を持ち出してきた。


「随分探してたんだが、これがあった」

そう言ってマスターが箱から取り出したのは、黒くて無骨な腕時計のような機械。古めかしく、塗装の剥げも目立つ。

「海外勤務時代の試作通訳デバイスだ。ちょっと改造すれば、カカシの検索機能を遠隔で飛ばせるかもしれない」


スズメは驚いた様子でそれを手に取り、しげしげと眺める。

「それって、私が書店にいても、カカシはここに残ったまま検索してくれるってこと?」

「うまくいけばな」

マスターは肩をすくめる。「ただ、これバッテリー消費が激しいし、熱もかなり出る。長時間使える保証はないぞ」


iPad画面のカカシは不安定ながら文字を表示している。「remotely… fuzzy search… meltdown… less…?」――どうやら乗り気のようだ。スズメは目を輝かせる。

「もし遠隔で曖昧検索ができるなら、私が腕時計に話しかけて、カカシが答えてくれるってことになるよね?めちゃくちゃ助かるかも……」

「まずはテストしてみよう」

マスターは引き出しからケーブルや基板を取り出し、腕時計とiPadを繋ぐ。スズメは懐中電灯を持って手元を照らす。カカシもソフト面で協力するのか、画面に英語まじりのログが走っている。


1時間ほど配線し、最後に電源を入れると、腕時計の小さな液晶に“INITIALIZING”と表示され、iPad側にシステムログが流れる。

「じゃあテスト。たとえば『1930年代の青いハムスター探偵もの』って検索してみて」

スズメが試してみると、腕時計の画面が突然赤く光り「IYAAA!! (O_o)」と出てしまう。

「またそれ……」

スズメは苦笑し、カカシは「S-sorry… system error… meltdown…なし…大丈夫…かも」などと詫びの文字を出す。マスターは落ち着いた様子で、「一度で完璧にいくわけない」と言って再調整を始める。


何度か再起動や設定を見直すうち、腕時計が「Update attempt #2… Searching… beep?」と表示したり、“IYAAA!!”と叫んだりを繰り返す。それでも少しずつエラーが減り、スズメが「ピンク犬ファンタジー」というリクエストを送ると、部分的にヒットを返してくれた。

「わぁ、さっきよりちゃんと動いてる!」

スズメが喜ぶと、腕時計は(・∀・)vとでも言いたげに小さく光り、iPad上のカカシも「sorry for IYAAA… meltdown… avoid…」などと表示している。マスターはその様子に一安心といった表情でうなずく。


気づけば夜も更け、作業台の上にはケーブルや工具が散乱し、食べかけのパスタ皿まで置きっぱなしになっていた。スズメは腕時計を軽く試着し、「あ、意外とサイズピッタリ!」と嬉しそうにする。

「明日のシフトで、本当に役立つといいんだけど……」

「急に期待しすぎるなよ。まだ不安定なんだから」

それでもスズメは希望を捨てず、カカシもiPadの画面で「No meltdown… we manage… beep…」と応える。

「よし、じゃあもう少し調整して今日はお終いにしましょう。明日が楽しみになってきたし!」

彼女がそう声を弾ませると、iPadのLEDが小さく点滅し、まるで「ありがとう」と言っているかのように見えた。


こうして夜遅くのカフェ2階で、“秘密の腕時計”を使ったリモート検索が誕生しかけている。完璧にはほど遠いが、スズメは一歩前進を確信し、胸を弾ませながら工具を片付け始める。メルトダウンを気にせずに済む未来が、ほんの少し近づいた気がした。


(了)

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