明晰夢?
小説を書くのは初めてです……よろしくお願いします
どうにか完走したいと思います
明晰夢を見る方法が一時期話題になったことがある。
やることはシンプルで、覚えている範囲でいいから、見た夢を起きて直ぐに書き留めるだけ。
方法はなんだっていい。箇条書きでもいい。
とにかく毎日続けていくうちに、夢を夢だと認識出来るようになって夢の中で自由に行動できるようになるそうだ。
夢の中ではなんだってできる。
普段は遠慮してしまうオシャレな店も、人に言えない秘密の楽しみも夢の中なら全てが叶う。
話題になった、というのもあって気になって始めた夢日記だったが、意外と性に合っていたのか起き抜けの自分の日課になるのは早かった。
その時の自分がどんな夢を見たかを後でゆっくりと振り返って楽しめるし、起き抜けの普段より下手くそな文字が踊るページだって中々に味がある。
それに、良い夢を見た際の決して忘れまいとする必死な自分を思い浮かべてしまって思わず苦笑いしたり、自分の見た夢なのに知り合いとの軽いラブシーンもあったりするから妙に照れくさいような気持ちで寝る前にパラパラと捲るのも日課になっていった。
日記と言ったってほとんどが支離滅裂で、世界観だってバラバラで、何度も同じような夢ばかり見ることもある。
それに、良い夢もあれば悪い夢もある。
殺人鬼に追いかけられたり、ゾンビに襲われたり、崖から落ちそうになったりただただ不気味な場所にいたりとゾッとするような夢も見ることだってある。
その当時付き合っていた彼女にこっぴどく振られる夢を見て、その後で同じように今度は現実で夢よりも酷く振られたこともあった。
つまり何が言いたいかっていうと、俺はこと夢に関してはそこそこ自由がきくし、明晰夢のエキスパートなんじゃないか?ってことだ
今日もふとした瞬間に自分が動くことを認識する。
明晰夢を見る上での典型的なパターンだな。
今まで見た事もないような、豪華な作りであったであろう屋敷の中に俺は佇んでいた。
「初めて見るタイプの夢だな……」
一見すると貴族の屋敷かのような室内は所々の壁が崩れ、薄暗い部屋には微かに光が洩れている。
それなりの長い時間放置されていたのか床には草花が生い茂る場所もあった。
ここでそうならきっと外にも緑が多いことだろう。
ふと辺りを見回すと、今度は自分の居るすぐ後ろに玉座が出現した。
今までの部屋とは段違いに豪華な造りの部屋だが、やはり人が居なくなって長いのか所々が朽ちている。
だが、周りは所々朽ちているにも関わらず、その玉座だけは当時のままと言うような煌びやかさで、静かにそこに存在していた。
「ここは城かなにかか?」
何かに導かれるようにして俺は玉座に向かう。
近付いてもあまりの異様さと、本当に自分ごときが触れても良いのかと考えてしまうほどだった。
毎日磨かれているかのような輝きを放つ金の縁。
柔らかな生地で作られているだろう座席部分はひとつのシミもなく、そこだけ時間が止まったように見える。
夢の中とはいえ恐る恐る腰掛けると、肘掛けの高さ、背もたれのクッション、座席の幅までが全て測って作られたかのように精巧でまるで自分自身のために拵えたかのように感じる作りだった。
「ここに座ってた人物はきっと俺と背格好が同じだったんだろうな。
まぁ、俺の見てる夢だから俺が反映されてるか」
そんなことを呟きながら俺は目を閉じた。