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紅一点の面食いとイケメン逆ハー。

ダンジョンがいっぱいな現代ファンタジー。


面食いヒロインの逆ハーへの一方通行かと思いきや……?




「今日も今日とて、イケメン達にチヤホヤされたい!!」

「はいはい、可愛いねー」

「今日も可愛いよー」

「君が一番だよー」

「棒読み!!」


 我がパーティーのイケメン達は、いつも通りの塩対応だった。


「なんでだよ!! チヤホヤしてよ!!」

「はいはい、かわいいねー」

「きょうもかわいいよー」

「きみがいちばんだよー」

「だから棒読み!! さらに酷くなったし!!」


 頭を嘆いてしまう。


「なんでチヤホヤしてくれないんだよ! 私、美女だよね!? ねぇ!? 磨きに磨き上げているのに!!」

「そういうところだと自覚出来ないの?」


 銀髪を染めたイケメンは、呆れた表情だ。


 私は赤路(あかじ)那乃愛(なのあ)、ピチピチの22歳。

 セミロングサイズで切り揃えた髪は、ベージュ色に染めてクルクルとした髪型。顔だけではなく、全身にはスキンケアを怠らない。スベスベぷにぷにの頬。きめ細やかな色白の肌を保っている。エクササイズでも、余分な肉は落とし、体型を維持していた。ジャストなサイズで包み込む下着で胸は寄せて上げて、胸の谷間をチラ見せ。程よい太さの太ももを見せつける短パンとニーソ。脚をよく見せるための少し高いヒールのブーツ。くびれと細い腰を見せつけるフィットしたお洒落かつ機動性ある上着。

 クラスは魔法剣士。魔法は補助や強化寄りに特化している、剣術使いである。


 Aランクのダンジョン探索者パーティーの紅一点。他はイケメンなのに、私に靡いてくれない。

 好きになってくれない。チヤホヤしてくれない。美女なのに!


 パーティーのリーダーであり、最年長の25歳の獅子王(ししおう)(ぎん)こと銀くんは、綺麗な銀髪に染めているイケメンである。この中では小柄になってしまうけれども、私よりも長身。精悍なイケメンのはずが、小柄さと猫目の大きさで、可愛いも感じるあざといイケメンである。でも性格は、真面目さん。リーダーらしく、まとめ上げてくれる頼りになるリーダーくん。

 クラスは騎士。視野を広くして指示を飛ばす司令塔であり切り込み隊長でもある。


 パーティーの索敵を担当するのは、24歳の黒尾(くろお)テオ。肩ほどまで伸ばした黒の長髪をハーフアップに束ねた色気ムンムンのイケメンである。一番長身で、二メートル近い。銀くんよりも肩幅があってがっしり体型のくせに腰が細くてえっちぃ。ヘラヘラと笑う食えないタイプでも、フレンドリーだ。誰とも仲良くなれるコミュ力は高い。

 クラスは狩人。ナイフから銃器まで扱えて、索敵を任せれば不意打ちは絶対に受けない。


 一番火力があるのは、23歳の青羽(あおば)流星(りゅうせい)ことりゅーせい。外はねした青いメッシュが特徴的なクールビューティなイケメン。銀くんより背が高いが細身が目立つ。顔の綺麗さも目立つ。睫毛長い。私より長い? ズルいね? 見た目通り、クール系。冷静沈着で無表情対応が多かったりする。

 クラスは魔法使い。火力全開の攻撃魔法を放ってくれるけれど、多少の接近戦も身体能力で対応可能。


 それぞれポーションも常備しているけれど、基本的に私やりゅーせいの軽い治癒魔法で治す。でもほぼ怪我は負わない。機動性重視でスピーディーにモンスターを討伐してしまうので、危なげな戦闘はほとんどないのだ。

 狩人のテオの索敵で迎え撃つ準備もすぐに出来るし、切り込み隊長の銀くんに続いて私も切りかかって翻弄していれば、魔法使いのりゅーせいがトドメを刺してくれる。


 私達は元々Bランクと高めのパーティーメンバーとして揃えられたが、あっという間にAランクパーティーへと昇格したのだ。


 属しているのは、大手ギルド『夜桜侍(やざくらざむらい)』であり、パーティー名は全員に色の名前が入っていることもあり『ザ・カラー』である。活動を始めて一年ほどだけれど、私達『ザ・カラー』のダンジョン探索動画は、そこそこの人気を出していた。

 高レベルでスピーディーに探索を進めるパーティー、かつ全員がビジュアルがいいときた。人気が出て、当然だった。


 ダンジョンで素材集めだけではなく、ダンジョンの探索を配信することもいい稼ぎになった時代。ただAIカメラを起動させていただけの私達にも、ダンジョン配信しないのかと意見が寄せられるのは必然だった。




「……問題が発生した」


 ギルド『夜桜侍』の会社内にある『ザ・カラー』の会議室兼休憩室の談話スペースにて、ソファーで腕を組んだ我らがリーダー、銀くんが深刻そうに告げた。


社長(ギルマス)にダンジョン配信のコラボを命じられた」

「あちゃー、ついに来たか。前々から言われてたもんね。てか、コラボなんだ?」


 銀くんの向かいのソファーで、スライムボディーを再現したクッションをぽよんぽよんしていたら、閃く。

 ここに谷間チラ見せのお胸を乗せて、こうじゃ! ぽよよん!


「今回は試しで視聴者の反応を見るそうだ。『ラッキーちゃんねる』の配信にゲスト出演してインタビューに答える形式のダンジョン配信らしい」

「ああ、あのチャラいBランクの? 俺達のこと根掘り葉掘り訊く感じか」

「ダンジョンでインタビュー受けながら探索? はぁ、仕方ないね。僕達、社員(ギルメン)だし長い物には巻かれないとね」


 だ……誰も見てくれないだと!? 私のおっぱい見て!!(泣)

 ぽよよん! せっかくこんなにいいおっぱいなのに。あらゆるバストアップエクササイズを試して、いいおっぱいに育てたのに! よよよっ。


「それが何が問題なんですかね」


 慰めてスライムクッション!


「問題張本人がなんか言ってる」

「私が問題!?」


 スライムクッションに頬擦りしていたら、イケメン三人から冷たい視線を受けてしまった! なんでだよイケメンズ!!


「ナノア、お前さ、視聴者になんて言われているか知らないのか?」

「動画のコメなら見てないよ。どうせあれでしょ。逆ハー気取りの痛い女とか、オタサーの姫とかさ、そんな中傷的なこと書いてあるならわざわざ見ませんよ~」


 ぶーとふくれっ面をして背凭れに凭れる。そんなエゴサしている暇があるなら、自分磨きに時間を費やす方が有意義だよ。無駄なストレスを受けるくらいなら、毒素を排出するお風呂に浸かっているわ。


「なんでそんなネガティブなの? 普段から自称美女だって騒いでるくせに」

「自称じゃないけど!?」


 苦笑を零すテオがタブレットを差し出すから、ムキになってツッコミを入れつつ受け取る。

 動画のコメント欄が表示されているタブレットを覗き込む。


「強者『ザ・カラー』の紅一点……クールビューティ……りゅーせいのことでは?」

「なんでだよ。君のことだよ。君、クーデレキャラだと思われてるからね」

「なんですと!?」


 ぺしりと、りゅーせいがチョップを落としてきたけれど痛くはなかった。それより驚きでいっぱい。


「たまに映る笑顔がポイント高いって、ファンには好評だ。知らなかったのか?」

「知らなかった……! 私、モテてた!?」

「で、問題の話に戻るわけだが、インタビューでファンのキャラ像を崩すナノアのアホをどうしよう」


 モテていたという感動に浸る暇もなく、銀くんが辛辣なことを言い放った。

 それが問題なの!? そこ、問題だった……!?


「私のアホって何!? 酷いよ! チヤホヤしてよ!!」

「「「そういうところだよ」」」


 ばいんばいんとスライムクッションを叩けば、三人にツッコミを入れられてしまった。


「俺達は、方針を決めないといけない。ナノアのファン層が離れるの覚悟して初めからアホさを露見させるか、隠すか……」

「ダンジョン配信、僕達合わないと思うけれど、繕っても面倒だから最初から露見すればいいと思う」

「俺もナノアがずっとクールな猫被れるわけないと思うから、隠す努力するだけ無駄だろ」

「じゃあ、ナノア。ファンは諦めてくれ」

「スムーズに決まった!? なんでファンが離れる前提なの!? こんな私も愛してくれるかもしれないじゃん!!」

「「「…………」」」

「哀れみの微笑みやめて!?」


 イケメン三人の哀れみの笑みは、地味に私の胸に突き刺さったのだった。




 『ラッキーちゃんねる』はパーティー名『ラッキー』がダンジョン配信を中心にダンジョン探索をしているパーティーだ。ランクはBになったばかり。着実に力をつけている男女四人のメンバーだ。

 同じギルドメンバーなので顔は知っていたけれど、配信自体は見たことがなかったのでアップされている動画を拝見。テオがチャラいと言っていたことがわかった。陽キャのギャルの集まりみたいなテンションだ。


 顔合わせを一回して、打ち合わせも軽くしただけで終わった。『ラッキー』のリーダー曰く、その日のノリでやった方が自然体でインタビューが出来るから、だとか。そのノリの軽さが、視聴者にウケるんだそう。



 現場は『池袋大迷宮』の中層。ここなら、Bランク以上の探索者である私達は油断してても負傷はしない。向かいながらインタビューを受けての戦闘をカメラに収める。小型ドローンでAI撮影をしてもらいつつ、真横にコメント欄を立体映像で表示してもらう。コメント欄でも質問を受け付けつつ、インタビューを進めるとのことだ。

 大迷宮の名があるだけあって、中は通常のダンジョンよりも広いので、この大所帯でも動きやすい。


「始まりました! 『ラッキーちゃんねる』!」

「今日はコラボ! ゲストはなんとAランクパーティーの『ザ・カラー』の皆さん!」


 元気よくカメラに向かって拍手し出した『ラッキー』メンバーの皆さん。

 そういうテンションなんだなぁ。生配信しないから、なるほど、わからん。


「『ザ・カラー』のリーダーの銀です、クラスは騎士です」

「狩人のテオでーす」


 余所行きの笑みをする銀くんとテオ。


「魔法使いの流星です」


 無表情で会釈するりゅーせい。


「魔法剣士の那乃愛です」


 私も余所行きの笑みで挨拶しておく。


:生『ザ・カラー』!! 美男美女!

:顔面偏差値高杉!


 コメント欄を見れば、ビジュアルが褒められていたので鼻が高くなった。

 そうだろうそうだろう。私のイケメンズはイケメンだろう。


「そうそう! 美人揃いすぎてビビるよな!? 中でも俺、那乃愛さんに興味シンシン! カレシはいるんですか!?」


 『ラッキー』のリーダーが、いきなりぶっこんだ質問をしてきたなぁ。探索者としての質問じゃないのか。


「今のところは、いません」と、にっこり。事実なのが、悲しいよね。


「いない! 那乃愛さんは今フリー!!」

「つ、ま、り!?」


 ノリが……。ノリがなぁ。合コンしてるノリなんだよな。こう見えて、合コン参加したことないけど。


「「ぶっちゃけ、この中で狙っている人はいるんですか!?」」


 鼻にかかった甘えた声で、『ラッキー』の女性メンバーが問い詰めてきた。


:ナノアたん、フリーならパーティー内に想い人が!?

:ええー俺のナノアたんんん!

:公開告白か? ドキドキ。

:ドキドキ。


 コメント欄も浮き立っている。

 私はニッコリと笑みを深めた。


「全員です」


「「「「…………ん?」」」」


「全員を狙っています!」


「「「「ん!?」」」」


 一瞬の沈黙後、ギョッとした顔をする『ラッキー』のメンバー。

 私のイケメンズは、遠い目をして明後日の方角を見つめていた。


「私は面食いなのです! 逆ハー好き!! このイケメンズにチヤホヤされたい!! 私のイケメンズなのです!!」

「はい、すみません。うちのナノアはこういう子です」


 堂々と胸を張って宣言していたら、ガッと両肩を掴まれて下がらされた。

 リーダー、公言してもいいって方針じゃなかったです???


:wwwwwwwwwww


 コメント欄が草で埋まっている中、『ラッキー』のメンバーは顔が引きつっていた。


:誰だよ、ナノアたんがクールビューティ系だって言ったの!w

:怒らないので名乗り出なさいwww

:【悲報】ナノアたん、残念系美女。


「安心してください、視聴者の皆さん。俺達はナノアの毒牙にはかかっていません」

「毒牙って何!? 失礼すぎる!! 失礼すぎるよねぇ!?」


 爽やか笑顔を作って言い切るテオの胸ぐらを掴んでぐんぐん引っ張る。


:アッ、そういう扱いw

:残念系美女扱いw


「残念系美女が定着しちゃう! ちょ、褒めてよ! 褒めちぎってよ!! チヤホヤしてよ!!」

「はいはい、可愛いねー」

「今日も可愛いよー」

「君が一番だよー」

「いやいつもの棒読み!!」


 やれやれ感で棒読みをするりゅーせいとテオと銀くん。


:ブホッw 見事な棒読みwww

:クールなパーティーだと思ったのにw 愉快すぎるw

:逆ハーじゃなくてギャグハーで草。

:一方通行な逆ハーレム。ただし片想いなのはヒロインのナノアたそ。

:かわいそうでかわいいナノアたそ、好きだよ。

:そうだよ、俺は好きだよ。


「同情はいらないよ……イケメンをくれよ」


:煩悩がすごい。

:ナノアたそwww


 またコメント欄に草が生えていく。

 しわくちゃ電気ネズミ顔になっちゃうよ……。イケメン、くれよ。


「那乃愛さんはフリーですが、リーダーさん達の方こそ、どうなんですか? カノジョさんは?」


 甘えた声で女性メンバーの金髪ギャル風が尋ねた。

 リーダーの銀くんに上目遣いしているので、そこに割って入る。


「もちろん、フリーです! でも私の逆ハー要員なので手出し厳禁ですよ!」

「はいはい、ナノアが一番だよ。俺達もフリーです。でも募集はしてません」

「……」


 またもや棒読みの銀くんは、しっかり質問に答える。金髪ギャルは、口元をヒクヒクさせた。


「他に質問は? あ、探索しながらでしたよね? 進みましょう」


 流石、銀ちゃん。進行を促してくれたので、ようやく出発した。




   ◆・◇◇◇・◆



 Aランクパーティー『ザ・カラー』のダンジョン探索動画は、危なげないスピード勝利する戦闘とルックスの高さが人気のパーティーである。ほぼ戦闘のみで編集された動画では、メンバー個人の性格まではわかってはいなかったが、勝利後に映り込む美男美女の笑みに惹かれる視聴者は多かった。


「敵、前方六体のみ!」


 索敵したテオが吠えるように知らせる。


「凍らす!」


 杖を叩き込んで敵ごと地面を凍らせた流星。


「仕留めるぞ、ナノア!」


 氷を踏み壊す勢いで駆け巡る銀が切り込む。


「はい!」


 続く那乃愛も、後れを取らない。オーク六体を瞬殺。


:流石『ザ・カラー』だ。

:生戦闘パネェ。

:イケメンすぎる……。

:これがAランクパーティーか。


 生配信で観戦する視聴者は、初見の者も見慣れた者も感心していた。

 オークはCランクパーティーでも対処可能なレベルのモンスター。特に喜んだ様子もなく淡々と武器を収めて採取を始める様子は、とてもクールなパーティーに見えた。


 だがしかし、その実、紅一点のクールビューティ風な美女は、逆ハー希望な残念系美女だったと明らかになったのである。採取中にインタビューを続けようとした『ラッキー』のリーダーだったが、我がイケメンの『ザ・カラー』のことならば! と那乃愛がペラペラと語り出す。今はお前に聞いてないのが本音。

 イケメンにも喋らせろ。偏りすぎる。そして、出張りすぎだ面食い。


「止めないと、止まりませんよ」と、銀は笑顔で忠告する始末。


 なんて残念系美女なんだ。


 自分のパーティーのかっこよかった武勇伝を延々と語りそうな那乃愛は、見た目は百点満点の美女だというのに、本当に残念系美女だ。

 特に、ふくよかな胸の谷間には、ついつい釘付けになってしまう。


 見た目チャラ男にしか見えない『ラッキー』のリーダーも、副リーダーも、秘かに鼻の下を伸ばした。


 『ザ・カラー』の男性陣に冷たく見据えられていることに気付きもせず。



 中層に差し掛かったセーフティーゾーンで焚き火用に設置されたドラム缶に火をつけて休憩タイム。

 プライベートな会話も出来るように、音声はオフ。代わりにBGMだけを流す仕様に切り替えた。


 女性陣と男性陣と、別で固まって休憩。


「ねぇ、那乃愛さん。オープニングで言ってたこと、本当?」

「逆ハーで全員狙ってるって……」

「え? うん、本当。逆に選べなくない? 三人ともかっこよすぎて」

「へ、へぇー……そ、そっか……」

「あたしは一人でいいかなー」


 『ラッキー』のギャル二人にドン引きされているが、那乃愛は解せないというしかめっ面になった。


「三人ともかっこよすぎて選べないじゃん。むしろ、三人に愛されたいじゃん」

「「いや、欲張りすぎる……」」

「そう???」


 ギャル二人は、那乃愛の価値観についていけなかった。


「あはは、三人に愛されたいときたかぁ~」


 そこにやってきたのは『ラッキー』のチャラ男の二人。

 その隙をついたと言わんばかりにそっと離れていくギャル二人は、『ザ・カラー』の男性陣の元にいそいそと向かうので、那乃愛はむすっとした。


「でも、全く相手にされてないじゃん。那乃愛ちゃん、かわいそ」

「むっ。いいんですよ。そこは私の美貌で陥落してみせますんで」


 同情する言葉をかけられても、銀達を気にしつつ言い返す那乃愛。


「俺達が癒してあげようか?」

「俺らだってイケメンの分類だし、どうよ?」


 ニヤリ、と笑いかけたチャラ男二人。見た目を裏切らない軟派さ。

 ス、と目を細めた那乃愛は、絶対領域を見せびらかすように脚を組んだ。魅惑の太ももに注目して、ゴクリと生唾を飲み込む二人。


「私を癒す? うちのイケメンパーティーを超える男になってから出直してね」


 ふんぞり返って言い放つ那乃愛は微笑んでいたが、絶対零度の声音だった。


 残念系美女だと侮っていた二人は、凍てついた空気にカチンと固まる。

 もう用はないだろ、と言わんばかりにしっしっと手を振り払われて、のこのこと元の位置へと戻った。




 同時刻。

 チャラ男二人が、女性陣の元へ行ったかと思えば、入れ違いでギャル二人がやってきたことで眉をひそめた銀、テオ、流星。


「那乃愛さんって変わった人ですねぇ。相手するのも大変でしょ?」

「なんか、皆さんがかわいそー。チヤホヤが目的なんて、だめっしょ! あたしなら一人だけに愛されたいなぁ」

「……」

「……」

「……」


 ギャル二人が甘えた声で、擦り寄ってきた。

 空気が下がっていることにも気付かず、金髪ギャルは上目遣いでテオに迫る。


「あんな残念な人より、あたしの方がいいですよね? テオさん達」

「――――は?」


 テオの口から冷たい声が零れて初めて、ギャル二人は温度差に気付く。



「「「あんないい女、他にいるわけないだろ」」」



 テオ、銀、流星は声を揃えて言い放った。


「ナノアは自分磨きを怠らないし、磨いても磨いても満足しない女なの。そこらへんの女じゃねーの」


 笑みを貼り付けていても、ギラついた黒い目は全く笑っていないテオ。


「戦闘面でも、補助魔法を積極的に磨いて、僕達を支えてくれている。戦闘で気を抜いたことなんて一度もない」


 冷気も放つほどに冷たく言い放つ流星。


「守られるだけの女じゃない上に、かっこよくて綺麗で可愛い。これ以上のいい女がいるなら、見せてほしいな。まぁ、ナノアがいるから要らないけど」


 薄笑いをして見せる銀も、その瞳は冷たく見据えていて刺々しく告げた。


 格上の探索者の冷たい威圧は刃のように鋭すぎて、後衛支援のギャル二人はヒュッと喉を鳴らす。


 カタカタ震えている間に、那乃愛に一蹴されたギャル男二人がずぉおおんと暗雲を漂わせて戻ってきた。


 その様子を見て、三人は勝ち誇った笑みを浮かべる。それに気付いたギャル男二人は、ギョッとした。


 馬に蹴られた。『ラッキー』のメンバーは、そう気付いた。


 隠していただけで、逆ハー要員はしっかり逆ハー要員だったのだ。

 それも、厄介な激重感情を抱えている。そう。那乃愛本人には、気持ちを悟らせないという厄介な感情を。




「ナーノーアーちゃん。さっき男二人に口説かれてたみたいだけどー?」


 テオが軽い足取りで那乃愛の元へ行く。


「心外です。私には、テオとりゅーせいと銀くんだけです!」


 むすーっと唇を尖らせる那乃愛は、不機嫌にそっぽを向いた。

 優越感で口角が上がるテオは、那乃愛の頭を撫でる。そして、後ろに回り、牽制の一瞥をした。


「もう三人じゃないと満足しない身体にしたくせに!」

「いかがわしい言い方やめて」

「あうっ!?」


 ぺしりと、那乃愛の頭にチョップを落とす流星。痛みはないが、ちょっと驚いた那乃愛は頭を押さえた。


「流星の言う通り、誤解招くことは言うんじゃない」

「ううっ! だって逆ハーでチヤホヤしてほしい!!」

「ブレないなぁ……」


 ぷにっと鼻を摘まんでくる銀に、欲望を叫ぶ那乃愛だった。



(((一人を選んでくれればいいのに……)))


 チラリと目を合わせた銀とテオと流星は、心の声を一致させながら互いを牽制し合う。


 そのパーティー、面食いヒロインの逆ハーへの一方通行かと思いきや。

 実は矢印が向かい合っている逆ハー構図が出来上がっている。



「さて。ダンジョン配信の続きをしようか。ナノア、行けるか?」

「全然行けるよ! 銀くん! テオもりゅーせいも、行けるよね?」

「おう」

「行くか」


 ただし、ヒロイン本人はまだ知る由もない。





 



逆ハーでチヤホヤしてほしいと欲望を堂々と叫ぶ残念系ヒロインを書いてみようと思い立ったのが、一昨日。

ダンジョン配信モノ面白いと思ったのが六日前。ということで、ダンジョン配信要素も盛り込みました。


続きたいので、連載形式で投稿して、一度完結にしておきます。

那乃愛→(←←←)銀

   →(←←←)テオ

   →(←←←)流星

の構図の逆ハーを書きたい。逆ハー、バンザイ。

激重感情を持たせるのは、べにクオリティ。


那乃愛のアプローチは効いている。だから、お胸ぽよよん!も、しっかりチラ見してた。

那乃愛は気付いていないだけ。「誰も見てない……」としょぼんしている隙に、ガン見されていると気付いていない。

みんな男の子。ちなみに一番むっつりなのは、テオ。

ギャル男二人には「お前らにチラ見してるんじゃねーよ(⌒∇⌒)♡」と那乃愛は思っていた。


目をギラリと光らせた野獣系イケメンズと美女のAランクパーティー。


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2024/06/13◇


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