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【砂利道を歩く野良犬たち】      作者: トントン03
第七章 いよいよオープン! フカヒレで差別化
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―和泉君は店を覗いていた―

和泉君、滑り止めは関西の大学に決めていた。

第七十一話



 ―和泉君は店を覗いていた―


 翌日、善幸は、午後の休憩時間に国立駅前の交番へ相談しに行った。美乃里の手前と駄目元なのだが、何か行動を起こさないではいられなかった。


 既に、店は死活問題になるレベルにまで売り上げが落ち込んでいた。

 昼の時間帯のお客さんは、この揉め事が起こる前と比べると二分の一に減り、夜のお客さんは三分の一以下になっていた。今後、きっと男たちが来店する度に減っていくのだろう。そんなことを考えながら、善幸は駅の方へと歩いて行く――。


 此間の記憶では、街路樹が駅前を彩っていた。今は歩道に落ちている枯葉も見当たらない。枝に掴まっている葉は年を越せるのだろうか。

 若いお巡りさんが交番の前に立っていた。善幸は声を掛けた。相談内容を簡単に立ち話ししていたら、交番の中で詳しい話を聞きましょうと言ってくれた。


 三十分後、善幸は交番を出た。結局、警察が動くような事件ではないと判断されてしまったようだ。ゴキブリが入った餃子が原因でのお客さんとのトラブル。そういうのは刑事事件としては扱えないし、民事として解決してもらうしかないとのことだった。彼らが慰謝料として要求している五百万円という法外な金額を、妥当な金額まで引き下げる交渉をしてみてはどうかと、意図も簡単にあしらわれてしまったのだ。


 善幸は、店に戻っても交番で相談した内容を誰にも話さなかった。美乃里にだけ、帰ったら話すと耳打ちしておいた。


 午後五時半、休憩時間が終わった。回転し続けている厨房の換気ファンの音は、油の汚れの負荷を感じさせない軽やかな音を立てていた。


 お客さんが入ってきた。中年男女のペア。初めてのお客さんのようだ。店内を見回している。ゴキブリ混入のトラブルを知らないお客さんだってまだ沢山いるはずだ。これから店をはじめるつもりでやれば、店を立て直すことは十分可能なのではないか、そんな自信が湧いてきた。 

 胡が接客している……。お客さんがビールを二本注文した後、メニューを広げじっくりと見ていた。と、またお客さんが入ってきた。スーツ姿の三人。「お好きな席へどうぞ」と美乃里が声を掛けた。席を決めると、三人とも似た色のコートを脱ぎはじめた。「最近できた店みたいだねえ……」彼らも初めてのお客さんだった。

 善幸は、注文を受けた料理の出す順序とタイミングを考え作りはじめた。


 七時を回ると、三分の二の客席が埋まった。善幸は、早くもお客さんが戻って来たという手応えを覚えた。夜の時間帯は、二回転してくれれば言うこと無し。気負い、鍋を振る腕に力が入った。

 美乃里が冷凍庫を開けて食材を調べている。「あなたさ、餃子の在庫が無くなりつつあるけど、お母さん呼んで作るのを手伝ってもらおうか?」

「おまえな、店で〝あなた〟って呼ぶなよ」

「うっかりしただけよ。で、どうする?」

 善幸は即答できないでいた。

「お父さんがね、また明日から現場へ一週間泊まり込みで行くらしいの。だから、お母さん寂しいんじゃないかと思って」

「お母さん、どうなんだ、身体の具合は?」

「微熱は続いているけど、先生から日常生活を送る分には支障ないって言われたらしい。接客をさせないで、小上がりで炬燵にあたりながら餃子を包んでいてくれるだけでも助かるんじゃない?」

「そう、だなあ……」

 手伝いに来るのはいい、それは構わない。しかし……。

 あのゴキブリ騒動の翌日から、由紀子さんには休んでもらっていた。肝臓の疾患からくる微熱のこともあるが、善幸が一番頭に引っ掛かっていることとは――。


 男たちの嫌がらせがこの先続くようなら〝噂〟は近隣からネズミ算式に広がって一週間もしないうちに駅の南口界隈にまで到達してしまうのではないだろうか。年を越せずに閉店へと追い込まれることだって十分あり得る。運転資金が無いだけじゃなく、莫大な借金を背負っての出店だった。そうなれば、如何に早く店をたたむかが、損害を膨らませない得策となってくる。現実問題として、その覚悟をしておかなくてはならないということか……。もし、店をたたむことになれば、その後、路頭に迷う自分の家族を案じ、どれほど由紀子さんを悩み苦しませてしまうかわからない。病人に対して、極度な心労を掛けてはいけない、そう善幸は考えてしまった。これは、美乃里に対しても言えることだった。店をたたむことになったとしても、遅かれ早かれ分かってしまうことだった。


 熟考の末、善幸は来てもらうことに決めた。また、今現在、由紀子さん……一人じゃ寂しいだろうし、店のことが気に掛かって自宅でじっとしているのも苦痛だろうとも考えてしまったのだ。

 次の日から、由紀子さんは久しぶりの餃子包みを、胡さんや野々村さんと会話しながら愉しそうにやってくれていた。ただ、揉め事の前と比べて、お客さんが半分以下に減ってしまったことをどのように感じているのだろうか。


 その日は、由紀子さんのために、前日、仕入れ業者に電話を入れ夕食を刺し身にしようと、善幸は鰤を仕入れておいた。高齢になると、中華料理ばかりでは食が進まないだろうし胃に負担をかけてしまう。今後、由紀子さんには遅くまで居てもらう訳にはいかない。食事をした後、八時までには帰ってもらうことにした。


 由紀子さんが帰った後、久しぶりにサトシとクルミ姉さんが店に来てくれた。師走の半ばになって漸く時間が取れたらしい。

 笑顔で厨房から顔を出した善幸に、サトシは店内を見回しながら「おーい、努力が足らないんじゃないのか、あと一週間でクリスマスだというのにさぁ」と小声で言った。

 ポツンポツンとは居るお客さんの前で流石にサトシと言えども「お客さんが少ないぞ!」とは言えない。が、その指摘に善幸はハッとした。なぜなら〝知ってるのだろうか〟と思ったからだ。しかし、いつものサトシの揶揄い半分での発破の掛け方だろうと思い直した。


 美乃里は、善幸が厨房で鍋を振ってても会話が出来るテーブルに二人を座らせた。鍋を振りながら話を聞いていると、サトシの仕事は看板の製作だけではないようだ。クリスマスや忘年会の稼ぎ時の前に、店の看板が薄汚くなっている場合には清掃したり、また電球を交換したりするので、十一月から十二月の初めまではとても忙しいらしい。それでも、ちょうど店の近所を通った際に、飯を喰おうと何度か来てくれたようだが、その時は満席状態で入れなかったと言っていた。  


 残っている二組のお客さんの注文が一巡すると、善幸は会話に混ざろうとサトシたちのテーブルに座った。ちょくちょく美乃里も椅子に掛け会話に混ざっていた。

 話しながら、善幸はサトシにある頼みごとを思い立った。それは、年内に支払うことになってる改修工事の残金を、来年の二月まで延ばしてくれないかということだった。一度、年末まで待ってくれるように頼んではいたが、更にあと二箇月待ってくれというのは、図々しいにも程があるのは分かっていた。でも、サトシなら……、クルミ姉さんだったら……、と思ってしまったのだ。

 善幸は、その話をいつ切り出そうかと、美乃里が席を外すタイミングを窺っていた。


 クルミ姉さんは、悠さんの店がオープンした時の写真をバッグから出し、先週電話が掛かってきた内容を話し出した。「悠ちゃんに話しておいたよ。善くんの店も順調だってこと。ランチタイムに行ったけど、並んでて食べられなかったってことをさ。悠ちゃんね、年明けて一段落したら、善幸のところへ駆けつけるってよ。こうも言ってた、善幸が東京で店をはじめることに内心は賛成じゃなかった。けどね、俺に相談もなくはじめてしまったから今更仕方がないなって。だから、結果的に良かったと思えるように、善幸には頑張ってもらいたいって。あたし、それを聞いて、ちょっと吃驚しちゃったあ」

 善幸は、前の店のオーナーに宛てた手紙を読んでいるから、反対だったということは承知していたのだが、「賛成じゃなかった? どうしてだろう。悠さんが一番応援してくれてると俺は思ってたんだけど」善幸は話を合わせた。

「東京で飲食店をはじめるのは難しいんだって。腕に自信があるだけじゃダメなんだってさ。中華料理の場合、三年以内に七割が閉店に追い込まれるって言ってたよ。知ってた?」とクルミ姉さんが訊いてきた。

「善幸に変なこと教えるなよ。繁盛してるんだからいいだろう」そうサトシが言うと、美乃里は複雑そうな顔つきになった。


「飲んでないよね、飲んで、飲んで」

 善幸は話を切り替え、サトシにビールを注ごうとしたが、「現場からの帰りなんだ。軽トラで来たからさ。通り沿いに停めてあるんだよ」

 善幸は、帰る途中で食事をするだけなら、直ぐに帰ってしまうかもしれないと思い、一度美乃里が厨房へ引っ込んだ時を見計らい〝頼み事〟を切り出した。

「言い辛いんだけど、実はフカヒレとか高級食材を数カ月分まとめて注文してしまったから、その高額な代金を月末までに支払わなければならなくなったんだけど……それでね、改修工事の残金五百万円、もう少し待ってもらえないかと……」

 その返事を待つ間もなく、美乃里が、胡が作った大海老の甘辛炒めと棒棒鶏、それと四川風焼きそばをもって厨房から出てきた。その皿をテーブルに置いた後、美乃里は視線を窓の外へ向けている。俄かに動きが止まった。


「ねえ、あそこにいる男の子、和泉くんじゃない?」と訊いてきた。

「こんな時間に、なんの用があって来るんだよ。人違いだろ」

 美乃里は、確認するため立ち上がり、善幸もその方向へ目をやった。すると、一瞬そうかなと思える身体つきの男の子がこっちを見ている。

「ちょっと見てくるよ」そう言い、善幸は外へ出て行った。

 すると、ブロック塀に寄り添い覗き見をしていたその姿がすっと消えてしまった。信号が青に変わり、善幸はその姿を追い駅の方へ走って行った。

 二十メートル先を早足で歩く人影に追いついた。


「和泉くんじゃないか?」後ろ姿に声を掛けた。

 間違いなかったようだ。彼は歩くのを止めて立ち止まった。

「どうした? 折角来てくれたんだから、顔ぐらい出してってくれよ。おじさんが美味いもん作ってあげるから。さよりにそのまま返したら怒られるじゃないか、な?」

 和泉くんは、善幸の顔を見て言った。

「おじさん、変な奴ら、来てない?」

「うん、変な奴らって?」

 若しや、あの男たちのことを知っているのだろうかと、善幸は一瞬まごついてしまった。それ以上、何も言おうとしない和泉くん……。彼の肩に手を回し、「腹減ってないか? うちの〝社長〟が待ってるから行こう」そう言って店へ連れて行った。


 店に入ると、美乃里が「やっぱり和泉くんだった!」と手招きをしている。サトシとクルミ姉さんは和泉くんを知らない。

 サトシが「さよりの友達かい?」と美乃里に訊いた。

「今日は、塾の日じゃなかったよね。さよりに用事でもあったの、和泉くん?」と美乃里が訊いている。

「いや、別に……」

「用事が無きゃ来ちゃいけないのかよ、小学生の時なんか、さよりが居なくてもうちに遊びに来てたもんな。それより、お腹空いてるよな? 空いてなくても喰ってってもらうぞ。美味いもんでも作ってあげよう、何がいい?」

「だったら、俺、チャーハンが食べたいな……」

「それじゃ、特製のを作ってやるよ。フカヒレのあんかけチャーハン。特別メニューだ。それと、餃子と何かなあ」

「おじさん、俺、フカヒレじゃなくてもいいんだけど」

「遠慮しなくていいんだぞ!」

「おじさんちに行ったとき、よく作ってくれた、あのチャーハンでいいよ。それが食べたいんだ。あと甘辛く炒めた手羽先。これもおじさんがよく作ってくれたよね」

 善幸はうれしさが込み上げてきた。「味の記憶って忘れられないものなんだよなあ。よくおふくろの味って言うもんな。和泉くんの場合は、それにもう一つ、おじさんの味が加わったって訳だ」

 そこへサトシが突然「和泉くんは、さよりの彼氏かい?」と、ナーバスな質問をぶつけた。それはサトシ特有の悪ふざけなのだろうが……。

 だか、美乃里が慌てるように「彼氏と思われるくらい、幼稚園の頃から二人は仲が良いの!」変なことを訊かないでよ! と美乃里は怒ってるような顔をサトシに向けた。

「さよりと同い年ということは、来年二人とも高三かあ、受験だね。大変だ。どこ狙ってるの? もしかして、さよりと一緒の大学?」と、またサトシが突っ込んだ。

「どこでもいいじゃない、ねえー」今度はクルミ姉さんが余計なことばかり訊こうとしている旦那にダメ出しをした。

「一応、一橋なんですけど……」和泉くんは平然と答えた。

「えっ、南口にある?」クルミ姉さんが確認した。

 サトシはこれに関しても冗談を飛ばした。「おまえよ、あっちこっちに一橋大学があってたまるかよ。あったとしたら、俺も善幸も入ってたって」

 善幸は話を合わせた。「入るんだったら、俺は農学部がいいなあ。新種の野菜を世間に発表して、一流の料理人に使ってもらいたいよ」

 そこへ、

「おじさん、一橋大学には農学部はないんだけど」和泉くんが突っ込んできた。

「だったらそんなもの、作ればいいだけさっ」サトシが善幸の代わりに応えた。

 善幸は彼らしい切り返しだと思った。

 口数の少ない和泉くんは、初対面だというのにサトシとは気兼ねなく話せる相手になってしまったようだ。時々笑みさえ見せていた。


 和泉くんは、胡が作った香草類と五種類の野菜を甘酢漬けにしたものを美味しそうに食べはじめた。善幸はその姿を眺めていたら、小学生の頃、さよりと肩をくっつけて一緒に食べていたのを想い出した。 

 善幸は胡には作れないレトロな味付けのチャーハンと、甘辛く炒めた手羽先を作るため厨房へ入った。    

 炒めながらも、美乃里の話し声が聞こえてきた。

「和泉くんは、早稲田は受けないの? 優史君とさよりは受けるって言ってるけど」

「お父さんが一橋だし、それに家から近いから……」

「そうなの。一緒だったら、皆で愉しい学生生活が送れると思ったんだけど」

 和泉くんの持ってる箸の勢いが止まった。

「美乃里、早稲田は東京にあるんだぞ。それも山手線の内側だ。いつでも会えるんだよ」

 サトシは、まるで地方の大学へ行ってしまうかのような美乃里の言い方に違和感を覚えたようだ。

 ジャーッ、と会話の途切れの合間を狙って、善幸は溶き卵を鍋に放り込んだ。静かにかき混ぜながら聞き耳を立てている。

「ただね、さよりから、和泉くんは滑り止めに関西の大学を受けるって聞いたんだけど、本当なの?」

「落ちたらそっちの大学へ行こうと思ってます」

「なんで?」

「何となく……」

「何となくって……。大学なんてさ、東京にいっぱいあるじゃない!」美乃里は語尾を強めた。

「おいおい、美乃里、変だぞ。なんでまだ高三にもなってないのに、滑り止めの大学を真剣に考える必要がある。そんな奴いるか? 過去問を解くのさえまだ早い時期じゃないのか。まあさ、俺は三流大学の受験対策しか知らんけどね」サトシは苦笑いをした。

 和泉くんは誰にでも優しかった。

「おじさん、大学に一流も三流もありませんよ。社会に出たら自分次第。一度入社した会社を辞めてしまえば、学歴なんか吹っ飛んじゃうって親父が言ってました。呆気ないもんだって」

「へぇー」言葉が出ないでいるサトシ。


 善幸が、出来立てのチャーハンと甘辛く炒めた手羽先をテーブルに置いた。

「大人三人して、なにが『へぇー』だよ。和泉くんの方が世の中の厳しさを分かってんじゃないのか? さあ、一流の料理人が作ったチャーハンを食べてくれ、和泉くん!」

 嬉しさから、和泉くんはあどけない笑顔で応えた。スープを一口飲んでから、チャーハンの山にそれを差し込んで元気よく食べ始めた。

 サトシとクルミ姉さんも、冷めてしまった料理を平らげると、

「俺たち、そろそろ行くわ。受験頑張れよ、和泉くん。また会おうな!」二人は立ち上がった。

 和泉くんは、初対面のサトシたちと会えてご機嫌な様子だった。

 美乃里も二人を見送ろうと立ち上がった。その時、サトシが何か思い立ったかのように後ろを振り向いた。

「ああそうだ、善幸……〝あれ〟いつでもオッケーだから」

 サトシは、善幸に下手糞なウインクをした。美乃里には通じない粋な計らいをしてくれたのだ。

 善幸の脳裡にあった大きめの心配事が一つ無くなった……。これで、今月末の一番支払いのデカい五百万円を後回しにすることができる。だが、サトシに借りをまた作ってしまったという心苦しさが残った。


 和泉くんは、黙々と食べている。この喰いっぷりは夕飯を食べていない証拠。彼はいつから覗いていたのだろう……。

 善幸と美乃里は黙って和泉くんが食べているところを見ている。彼は見られていても全く気にする素振りは見せなかった。

 きれいに平らげた後、

「おじさん、俺も帰る」サトシたちを追っかけていくかのように言った。

「遅くなっちゃったな。おまえさ、和泉くんのお母さんに電話しとけよ」

「もうしておいたから大丈夫よ」

「おじさん、おばさん、ご馳走様でした。またお手伝いできることがあったら遠慮なく声を掛けて下さいね。でも、一番最初に掛けてくれないと、俺、やる気無くしちゃうから……」

 善幸は頷いた。

「おばさん、身体大切にしてね。それと、俺、ずっと応援してるから」

「だったら和泉くん、関西の大学になんか行かないように頑張らなきゃ……」

 美乃里は、和泉くんの両肩に手を置いた。

「うん、頑張るよ。でも……落ちたら、どこでもいいから関西の大学へ行くってことは決めてるんだ」頑なにそう言った。

 善幸は、立ち上がった和泉くんを見て、

「知らぬ間に、おじさんより大きくなっちゃったな……」

 和泉くんは笑顔を見せてくれた。そして、後ろを振り向くことなくドアを開け店を出て行った。



 知らない間に他のお客さんもいなくなっていた。静まり返った店内。食器のぶつかる音がしている。胡が、厨房で片付けをしていた。


「胡さん、済みませんでした。一人でやらせてしまって」

 胡は、厨房内をすでに帰れる状態にまでしておいてくれた。

 美乃里は、和泉くんとサトシたちがきれいに食べていってくれた食器を片付けはじめた。                           (つづく)




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