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【砂利道を歩く野良犬たち】    

作者:トントン03
 塾講師だった肇は、五人の教え子たちと久方ぶりに再会することになった。彼らは大学受験も就職活動も難なくこなし、その後の社会生活も多少の愚痴をこぼしながらも適応能力の高さを見せつけている。
 彼らが高校を卒業してから七年が過ぎていた。当時からとても仲良しだった五人。だが、彼らにはもう一人仲間がいた。倉持さよりである。彼女の父親は、彼女が高3の時に交通事故で亡くなった。それが原因で大学を受験しなかったさより……。その後どうしていたのか、今回の飲み会までその経緯を彼らから明かされることはなかった。
 当時、肇は、優史とさよりが、傍から羨ましがられるほどの両想いだったことは知っていた。なのに今回の飲み会で、優史が仲間の一人である純子と付き合っていることを明かされる。肇は、あの頃の挫折感が漂うさよりの姿を想い起こすと胸が塞がれた。
 今日、彼らからこの飲み会に誘われた主な理由は、文子の同棲相手である勝彦との悩み事の相談だったのだ。なにやら深刻な悩み事のようだ。
 肇は、文子と二人きりで話ができる店へ移動することにした。そこは、悩み事を聞くには打って付けのバーだった。向かい合いながらだと話しづらいと思い、カウンターに座ることにした。カウンター越しにいるウエイターは終始聞かない振りをしてくれていた。
 文子は、序盤、さよりと優史が何故別れたのか、その経緯を具に語り始めた。そこには、仲間同士の強い絆で結ばれた二組の関係が存在していた。肇はその意外な話の展開に愕かされる。話し終わると同時に悄然となる文子……。暫くの間、沈黙が続いた。
 漸く、文子は勝彦とのこれまでの同棲生活を話しはじめる。暫くして、淡々と語る文子の心情が揺れ始め、ある出来事を切っ掛けに彼女の形相が一変した。グラスを握り締めている手が震えはじめたのだ。 
 遂に涙が零れ出した。止まらない。居た堪れぬ思いが伝搬してきた。肇は憶測をめぐらしていく――。

 二人はバーを出る。小雨が降っていた。しっとりと濡れていく文子の髪……。何かが吹っ切れたようだ。大人の女になっていた文子は、肇へ順次謀(はかりごと)を仕掛けていく。それは肇にとって思いも寄らぬ挙動。彼は解けそうもないその難問に苦みはじめる――。
 文子は、自由奔放な振る舞いを更にエスカレートさせていった。肇を混乱させつつ強引に無秩序な空間へと引きずり込んでいった。
【砂利道を歩く野良犬たち】
第一章 さよりと肇先生
ーさよりと肇先生ー
2023/01/30 02:30
第二章 美乃里と善幸との出会いから
第三章 【山下公園】と【港の見える丘公園】
―義理の父親との生活―
2023/02/15 00:19
第四章 范 悠 との出会い
―遅かったじゃないか?―
2023/02/19 00:16
―親方の最期の教え―
2023/02/27 00:08
第五章 出来上がった厨房内の確執と家族の絆
―麻子の深淵―
2023/03/05 00:11
―至れり尽くせり―
2023/03/25 00:02
―張り詰めた空気―
2023/03/26 00:13
第六章 オープンまでの準備段階の苦悩
第七章 いよいよオープン! フカヒレで差別化
―揺れる善幸の内奥―
2023/04/07 00:00
―極東商会の背景―
2023/04/09 00:00
第八章 バーテンダーの手利き
第九章 二人の行方
 ― 駅 ―
2023/04/26 00:00
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