表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『悪役』を乗り越えた先

女性向け恋愛物語の悪役

それは、主人公とヒーロー、双方が乗り越えるべき障害である

決して、知識や権力を高下駄に超えてはいけない壁である


ある少女は、知っている知識によって急速に懐に入り、少年を篭絡した

結果、少年の護衛やその両親に排除された。知らないエンドであった

次の少女は、シナリオ通りに動き、護衛に不審がられることなく、少年を篭絡した

結果、シナリオ通りに動かなかった悪役令嬢役の少女への冤罪を咎められ断罪された。少女の物語はそこでエンドであった

次の少女は、悪役令嬢役の少女に懐き、少年を篭絡した

結果、少女は断罪から免れたが少年が不貞の罪に問われた。少女は初めて生き残れたが後に傾国の魔女と恐れられた

次の少女は、逃げ出した。少年を篭絡できなかった

結果、国は荒れ少年も少女も悪役令嬢も国ごと滅んだ。やはり少年一人では高い壁は乗り越えられないのだ

次の少女は、無気力に生き、少年を篭絡した

結果、一度目と同じく周囲に排除された。少女はこれをもう一度繰り返す

次の次の少女は、養父となる男に今までのことを打ち明け、少年を篭絡できなかった

結果、4度目と同じ結末を迎えた。少年と少女が出会わなければ破滅しかないようだ

次の少女は、またも無気力に生き、少年を篭絡した

結果、同じく周囲に排除された。同じではなかった事柄は、悪役令嬢役の少女と仲良くなったが、不貞の罪に問われなかった事だ

次の少女は、周囲を観察し、少年を愛した

結果、周囲によって排除されたが、悪役令嬢役の少女に雇い入れられた。人一人を挟むが、少年と少女は初めて近しく生を歩めた

次の少女は、周囲の全てを愛くしみ、少年も愛で答えた

結果、少年と少女は理想の夫婦として国中から愛された。国は栄え、後に聖女の奇跡の時代と言われるようになる

めでたし、めでたし。



◇◇◇◇◇



「……十回もかかりましたね、殿下」

「あぁ。元はこんなにも綺麗な魂だというのに…」

「『ヒロイン病』でしたか。私の『悪役令嬢病』の対となる、呪いのようなおぞましい病でした」

「だが、それを乗り越えてこそ多大な幸福をいただける。彼女も君も失わない未来こそ、『ヒーロー症候群』を克服した私の願いだった」

「私がまだ病にかかっていた時、先に目覚めた殿下は奔走なさってましたものね。過去の事例では…」

「ヒーロー病が先にとけた場合、悪役令嬢病の者の病はとけず、いつしか惹かれ合いヒロインがざまぁされるのだな」

「はい。ですが殿下は私の病を癒やし、ヒロイン病すら癒やしました。愚者を演じきり、何度も国や彼女を滅ぼして…胸中お察しいたします」

「病の中の、彼女への想いを捨てきれなかったのもあるが……君が立ちはだかってくれたおかげでもある。これからも、私と彼女を支えてくれるか?」

「御意に。今の彼女となら、幸せな家族となれるでしょう。『みらくる☆STORY〜聖女の愛はむげんだいっ!〜』に相応しい結末ですわね?」


少年と少女の結婚披露宴が間もなく開催される

悪役である病を乗り越えた三人の若者の未来は、明るいものであるだろう

しかし、この3つの病。通称『三大ざまぁ症候群』は根絶は出来ない

だが、記録として残すことで。これからかかるかもしれない少女たちが、不確かな『前世』等に振り回される未来を回避できるかもしれない


ハッピー エンド

三大ざまぁ症候群とは

悪役令嬢病  前世なるものの記憶が芽生え、大小の差はあるが大人びる

ヒロイン病  前世なるものの記憶が芽生え、一部の男性を篭絡しようとする

ヒーロー症候群  ヒロイン病に侵されたものに篭絡される者達がかかる病。『攻略対象』と上記の前世の記憶の中では呼ばれる


一部発症しない、または完治することが確認されている

一番完治しやすく、発症が抑えられるのはヒーロー症候群である

ヒーロー症候群が発症しなかった者は、悪役令嬢病の者に惹かれる傾向がある

ヒロイン病は、発症しないことがあるが一度発症したなら完治はしない

病状の殆どでふしだらになり、止める手立てが無くなるのは呪いとしか言い表せない

悪役令嬢病の発症は一連の症候群の開始の合図だ

子供が急に大人びた。近しい異性の従者がいる。知識が偏っている等が初期症状として見受けられる

が、発症者は家庭で人と遠いことが多く、発症したと悟られにくくなるよう行動するので気づけない場合が多い

また、完治もせず、ざまぁ後も前世の知識と称して数々の祝福をもたらす存在になる


特例として、ヒロイン·悪役令嬢が完治した事が最近発表された

夢を他人と共有できる魔具を用い、ヒーロー症候群を患っていた王子が二人の少女と臨床に入った結果、完治したのだ

王子は夢の中で何度も学園生活をやり直し、少女二人を記憶を保持したまま繰り返させた

少女達の行動はやり直すたびに変わっていき、三回目に悪役令嬢病に変化が起こった

ヒロインを庇い、ヒーローを糾弾したのだ

王子は手応えと共に、糾弾されるがままやり直した

その後二回で悪役令嬢病は完治した

ヒロイン病はその後更に、三回かけ完治の見込みが出てきた

王子に対する愛情が復活したようだった

その後二回、王子と令嬢の愛によってヒロイン病も完治したとここに記録を残す

              世界の奇妙な病気 第2版

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ