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4話 2回目の配達

俺の初恋相手の、ありさちゃんから1週間ぶりに2回目の配達の注文が入った。


Sサイズのピザ1枚に、緑茶1本。きっと、1人で食べるのだろう。


「佐藤君、良かったね〜!せっかく頼んでくれたんだ、何か話しておいでよ」


「話したいですけど、、、何話せば良いんですかね」


「うーん、、、、、、ごめん思いつかない」


「とにかくなんか話してきなさい!あくまでもお客さんだからね、ガツガツいってはいけないよ。」


そりゃそうだ。好きな人だからといっても会うのは2回目。無理矢理関係ない話しても、嫌な印象を与えるかもしれない。


「頑張ってみます、、、」


とは言ったものの、女の子に話しかける経験なんて無い俺には、無理なことだ。普通の女の子ですら話しかけられないのに、よりによって好きな子だ。とりあえず、笑顔で接客して、良い印象を与えるんだ。



店長がピザを作り終わり、オーブンから焼き上がった。俺は、バイト史上丁寧に、ピザをカットした。ありさちゃんが食べていることを想像しながら、綺麗に、1ピース、1ピース同じ大きさになるようにカットした。

配達の準備を終えた俺は、店を出る。


「行ってきます!」


「佐藤君いってらっしゃい。気をつけてね」


胸をドキドキさせながら、バイクを走らせる。『何か話したい』『またお茶くれないかな』など考え、気づいたら、ありさちゃんの家に到着した。俺はドキドキ、ワクワクしながらインターフォンを押した。


「はーい!」


元気な可愛い声が聞こえてきた。俺は、良い印象を持ってもらうべく、元気よく、挨拶しようとしていた。


「お、お待たせしました!ピ、ピザーノです」


最悪だ。元気よく、丁寧に挨拶をしようとしたのに、緊張の余り詰まってしまった、恥ずかしい。


挨拶して10秒ほどすると、ドアが開いた。俺は、緊張し、恥ずかしくて、ありさちゃんの顔を見ることができなかった。


「こ、こちらピザと、緑茶になります、お、お熱いのでお気をつけください!」


ありさちゃんに意識が行ってしまい、自分でも接客がちゃんとできているか、不安になってしまう。


「ありがとうございます!」


前回と同じ、クレジットカード決済だ。あとはレシートを渡すだけで接客が終わる。俺は一目でも顔を見ようと、緊張を乗り越え顔を上げた。


そこには、1週間前と同じ金髪美少女がいた。もう一つ何か見覚えがあるものがある。なんとありさちゃんは、俺の大好きなアニメ『デペデペ』の限定Tシャツを着ていたのだ。思わず俺は興奮してしまい、同時にこれはチャンスだと考えた。

『話したい』という気持ちが強くなり、俺は頑張って声を出した。


「もしかして、『デペデペ』好きなんですか?」


うまく自分の気持ち、言いたいことを言葉にすることができた。


「えっ、デペデペ大好きです!配達員さんも好きなんですか?」


やっぱり。好きな人がデペデペ好きという事で俺は嬉しさで舞い上がっていた。


俺が死に物狂いで買った、限定Tシャツを着ているぐらいだ、ありさちゃんは、俺に匹敵するデペデペオタクだ。

『デペデペ』が好きな女の子なんてめちゃくちゃセンス良い。俺はありさちゃんのことをもっと好きになってしまったようだ。


「俺も好きなんです!!!デペデペ本当に最高ですよね!」


俺は無意識に、ありさちゃんと話していた。

ありさちゃんも楽しそうに話していてめちゃくちゃ嬉しかった。

数分だが『デペデペ』の話で会話を膨らませることができた。


「また配達頼みますね!!」


「是非お願いします!」


幸せの時間もあっという間に終わってしまった。玄関先で長々と話すことはできない。俺は、好きな人と同じ趣味で話せた達成感と嬉しさに満足していた。同時に、会話が終わってしまう悲しさもあった。


「ご注文ありがとうございました!失礼します」


俺は、元気よく別れの挨拶をした。きっと、また頼んでくれて話せるだろう。寂しい気持ちになりつつも、玄関のドアを閉めようとした。


「あ、あの、よかったら、ニンスタかRINEやってたら、交換してくれませんか?」


俺は、ありさちゃんに言われたことを理解するのに時間がかかった。ニンスタかRINE交換なんて、夢のまた夢だと思っていた。


「どっちもやってます!お、お願いします!」


こうして初恋の人への2回目の配達が終わった。

俺は店への帰り道で、嬉し過ぎてありさちゃんのことしか考えられていなかった。共通の趣味が見つかったこと、ニンスタとRINEを交換することができた。神様ありがとう。

ありさちゃんと連絡する手段ができた俺は、このチャンスを無駄にしたくないと思った。

そして俺はいつかありさちゃんに、自分の気持ちを伝えることに決めた。


店に戻り、店長に配達であった出来事を全て話した。


「佐藤君。本当によかったね〜!!!」


店長はなぜか泣いていた。そんなに俺が頑張っていることに感動したのか。

自分から話しかけられたのも、連絡先を交換できたことも、店長のおかげだろう。俺は店長に感謝を伝えた。


こうして俺は1日を終えた。俺の人生の中ですごく濃く、嬉しかった1日だろう。


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