2話 配達員の初恋
見たこともない美少女に配達し、お茶ももらった駿。ルンルンで配達から帰り、店に到着した。
「行ってきましたー!」
あの子に貰ったお茶を持ちながらルンルンで店に帰った。今日の一日は頑張れそうだ。
「ちょっと、佐藤君。ピザーノの配達バイクがスピード出し過ぎってクレーム入ったよ、ちょっと裏に来てくれる?」
この人は店長の剣持さんだ。いつも穏やかで、めちゃくちゃゆるーい店長で、怒られているバイトなど見たことがない。まさか、俺はそんなに調子に乗って帰ってたのか。
「本当ですか、すみません。行きます」
まさか、クビとか言わないよな??せっかくの天使に会えてまた頼んでくれるかもしれないのに。この人怒ったところ見たことないからめちゃくちゃ怖いな。まじで頼む何も無いでくれ。
「佐藤君さ、何でそんなにスピード出してたの?スピードだけならまだしも、車のギリギリをすり抜けていったみたいじゃん。佐藤君いつも真面目じゃないか。」
やばい、全然記憶にない。信号すら止まった覚えがない。あの子の顔をずっと考えていて。考えろ俺。
いや言い訳が思いつかない…
「本当にすみません。お客さんが可愛すぎてずっと考えてました。」
言っちまったーー!!!馬鹿野郎!クレームの言い訳が客が可愛すぎるなんてありえねえだろ。これはやばいクビか?
「佐藤、お前さ…」
これは終わった。さっきまで佐藤君だったろ。佐藤って呼び捨てはブチギレじゃねーか。本当のこと言ったのに。どうしよう、違う配達のピザ屋でバイト始めるか??いやあの子が頼んでくれるかは分からない。
「先に言えよ〜そうゆうの!良かったじゃないか、好きな人できて!!」
ん?思ってたのと違うな。この人怒らないのか?怒るどころか喜んでるよね?
「いやー佐藤君、俺心配だったんだよねー、の女どころか好きな人出来たこと無いって言ってたからさ。このまま女の子と関わらないまま死んじゃうんだなって。」
何言ってんだこいつ。怒られないのは良かったけど、流石に失礼すぎないか。
「あ…はい。別に好きな人とかじゃなくて…」
「ん、好きじゃねーのか?」
いやまた怒ってないか?好きな人じゃないって言っただけで?
俺は好きな人ができたことがないから、好きって感情もわからない。このすごい恥ずかしい気持ちは好きってことか?佐藤駿20年目にして恋をしているのか。
「いや、ガチ恋です」
「佐藤君。感動したよ。好きな人ではなくガチで恋なんだね。素晴らしいよ漢の中の漢だ。時給10円アップだね。」
いやまじかこの人。すごいところに感動してるよ。しかも10円アップって。
でも本当に優しい人だ。ありがとう店長。
「…ありがとうございます」
「ところで、そのお客様の名前は何で言うんだ?伝票に書いてあったろ?」
名前か…全く気にしていなかった。何だっけ名前。
「ちょっと伝票見てきます。」
「岩瀬ありさ様ですね。」
「聞いたことないな、初めてのお客さんだと思うよ。もしかしたらまた頼んでくれるかもしれないぞ。」
どうりで初めて見た訳だ。確かあそこのアパートは建てられたばかりのはず。最近引っ越してきた方なのかな?
「佐藤君。とりあえず今回はよしとして、危ないから出来るだけ安全なスピードで配達してね。今日はもう上がって大丈夫だよ。お疲れ様。」
「お疲れ様でした。お先失礼します。」
着替えてスタスタと帰る。なんか今日は楽しかった日だな。岩瀬ありさちゃんか。また会えると良いな。綺麗な星空を見ながら初恋の味を噛み締めら帰っていった。