プロローグ的なヤツ
15年前……。
人族と魔族はお互い認めあい共存の道を歩もうとしていた。
それに異を唱えたのが、 『2代目魔王』であった。
初代魔王と初代勇者は互いに老いており、 2代目魔王の侵攻に対してなす術がなかった。
しかし、神の加護を受けた『2代目勇者』が、2代目魔王を討ち取り世界は再び平穏を取り戻しつつあったのだ。
時を同じ頃……。
ここはマドゥハンドの隠れ里。
マドゥハンドとは、 泥でできており人の手の形をしているモンスターである。
単体ではさほど強くなく、 仲間を呼び集団行動に特化したモンスターだった。
彼等は2代目勇者達の経験値集めによく利用されており、 1体を残し虐殺され仲間を呼び、 更に虐殺されるという日々を送っていた。
そんなマドゥハンドの隠れ里の中心で赤ん坊の産声が響く。
「おぉ! ついに産まれたか!!」
マドゥハンドの1体が部屋に入ってきた。
「えぇ! あなた…… でも……」
母親と思われるマドゥハンドは手首をかしげる。
「どうしたんだ?」
父親らしきマドゥハンドは、 母親マドゥハンドに聞く。
「この子…… 人の形をしているの……」
「何だって!?」
父親マドゥハンドは、 産まれた赤ん坊を覗くとそこには人の形をした女の子が泣いていた。
「どうして、 私達マドゥハンドの子供が人の形をしているのかわからなくて……」
母親マドゥハンドの人差し指と薬指から涙が流れる。
「もしかしたらこの子は、 私達大量のマドゥハンドが勇者に虐殺されて、 その想い(怨み?)が集まって産まれた精霊の子かもしれん!」
父親マドゥハンドは親指で中指の付け根にはえている髭を触りながら言う。
「そんな事があるの?」
母親マドゥハンドは父親マドゥハンド尋ねる。
「何かの文献で読んだ事がある! 1万体の種族が虐殺された時、 その種族の想い(怨み?)が精霊となり、 形を変えて誕生すると…… だから、 この子は我々マドゥハンドの精霊の子なんだ!」
「そ、 そうなのね! よかった…… この子は私達の希望の光になるかもしれないね!」
「そうだとも!」
「それじゃ、 あなた! さっそくこの子に名前をつけてあげなきゃ!」
「そうだな! この子の名前は…… 『マド』! マドにしよう! マドゥハンドのマドだ!!」
父親マドゥハンドは赤ん坊を抱き抱えて名前をつけた。
「いい名前ね! よろしくね、マド! 私達の可愛い赤ちゃん!!」
こうして、 マドゥハンド夫婦の愛情を一身に受けてマドはすくすくと成長していった。