終わり
はじめまして。暁 ひらりと申します。
初めての小説で不慣れな点も多く、誤字脱字、間違った言葉もあると思いますが、皆様に楽しんで頂けると幸いです。
よろしくお願い致します。
ドンッ…!!
大きな音とともに身体中に走る鋭い痛み。
身体は自由を奪われドサッと倒れる。
遠くから「大丈夫か!?」という声が聞こえてくる。
(あれ…なんで、私、倒れてるの…?
おかしいな…体に力入らないや…さっきまで普通に歩道を歩いてたはずなのに…)
視界の端に壁に衝突した車が見える。
(あぁ、そっか、車に轢かれたのか…
不思議…そんなに痛くないや…頭がぼうっとする…死んじゃうのかな私…
お父さん、お母さん、千尋…ごめんなさい…
嫌だなぁ…死にたくないなぁ…まだまだやりたいことあったんだけどなぁ…
こんなことになるならもっと普段からありがとうって伝えておけばよかったなぁ…あぁ、頭が働かなくなってきたや…)
だんだんと意識が遠のいていく中、私が最後に見たのは道路に広がっていく自分の血だった………
「可哀想に…まだ20歳になったばかりでしょう?」
「まだ若いのにねぇ、人生これからって時に…」
「明日香ちゃん、交通事故だって?」
「そう…居眠り運転の車に轢かれたそうよ…」
「ほんとに可哀想…」
あちこちから話し声が聞こえてくる。
ちらほらと聞こえる私の名前…
聞きなれた声に目を開ければ、そこにはよく知った人達。
家族、友人、そして恋人…
彼らは喪服に身を包み涙を流してこちらを見ている。
後ろに何があるのかと振り返れば、そこにはたくさんの花に棺、そして私の写真が入った遺影があった。
(あぁ、そっか。私はあの時死んだのか…)
軽くなった身体でそんな考えが頭をよぎる。
虚ろな瞳で遺影を見つめる家族と涙を流す友人達。
まるで抜け殻になったかのように生気を感じられない恋人。
「ごめん、ごめんね…」
何度謝っても私の声は誰にも届かない。
「お父さん、お母さん…みんな…千尋…ごめんなさい、本当にごめんなさい」
皆が私の死を悲しんでいる。
その事実に私は涙が止まらなかった。
押し寄せてくる後悔に苛まれながら何度も何度も謝る。
たとえ自分の声が届かなくても今の私にはそうすることしか出来なかった…
遠くに座って全く動かない千尋の元へ向かうと私はまた涙を流した。
遠くから見たらよくわからなかったけど、今ならよくわかる。
やつれた顔に酷いくま、泣き腫らした目に青白い肌…
今までに見たことのないひどい姿。
いつもの整った顔、かっこいい姿からは想像もつかない千尋の姿。
(あぁ、私が千尋をこんな姿にしたのか…)
涙を流し自己嫌悪に陥る。
「なんでっ…なんで死んだんだよ…明日香…!」
悲痛な声と共に流れる涙…
いつも私を優しく呼ぶ声は涙でかれていて、そんな千尋の姿に私はただひたすら謝ることしか出来なかった。
葬儀が終わり霊柩車が入ってきた。
これから私の身体は霊柩車に乗って火葬場まで運ばれる。
「おばさん、ごめんなさい…明日香が燃やされるところなんて俺には耐えられない…」
「そう…そうね……今日は来てくれてありがとう。明日香もきっと千尋くんが来てくれて喜んでるわ」
(お母さん、そんなことない…!
喜ぶわけないじゃない!
千尋をこんな姿にして…こんなに悲しませて…
嬉しいわけないじゃない…!)
いつもはピシッと伸びた千尋の背中。
それが今は下を向いて猫背になっている。
(もし…もしやり直せるなら…!千尋にこんな姿をさせなくてすむのなら…!!)
幽霊になった今なら、本当に神様はいるんじゃないかと信じられる。
胸の前に手を組み、ぎゅっと目を瞑り、何度も何度も心の中で叫ぶようにお願いする。
(お願いっ…!時間よ巻き戻って!神様!!こんな千尋の姿を見なくていいように、お願い!やり直させて!)
また意識が薄れていく。
千尋の姿が霞んでみえる。
音も遠くなってゆく。
白い光に包まれながら思いが巡る。
(あぁ、せっかく幽霊になったのに何もできずに消えるのか)
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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