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夜明け前に君の事を思う  作者: もみじ
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彼女の叶えられぬ夢/彼女との誓い

「そうですね、夢の中で間違いありません。」

その言葉にやっぱりと話そうとするとかぶせるように有希は話し続ける。

「ですが、ここは秋夜さんの夢の中ではありません。」

有希の言葉を理解するのに少し時間がかかった。頭の中で考える、俺が寝ているときに見ている夢なのに俺の夢ではない。いやでも、それ自体が俺の夢の話ではないだろうか。だとしたらどんなめんどくさい夢を見ているんだ俺は。

「私の話を信じていただけないのはしょうがないと思います。ですが秋夜さんの夢ではないのは真実です。実際に今までと、この夢は違うと気が付かれたと思います」

確かに有希の言葉には、思い当たる所がある、実際にそれがあったため優と話をしたのだから。

「いや待ってくれ、つまり俺は違う人の夢を自分が寝ている時に見ているのか?」

有希は冷静に返答をする。

「はい、ありえないことに感じると思いますが、今実際に起こっていることが全てです」

「分かった、だとしたら俺は、誰の夢を見ていることになるんだ?」

有希は口を閉じ深呼吸を一つ入れる、俺もゆっくりと深呼吸をする、おかげで落ち着いてきた。そして有希の口はゆっくりと開かれる。

「ここは、私の夢です。私が見ている夢に秋夜さんが迷い込みました、実際は迷い込んだのかも分かりませんが」

「それはどうゆうことなんだ?出来たら、有希さんが分かることを話してもらえないだろうか?」

「分かりました。私が知っている事をお話いたします」

有希は瞳を瞑り昔の事を思い出すように話し始める。

「あれは、私が中学二年生の時になります」


「私には双子の兄が居るんです。双子なんだから生まれた日だって同じなのに、少し先に生まれだけなのにずっと私の兄として居てくれたんです。

何があっても私に優しくしてくれた、そんな兄が私は大好きでした。ある日差しが暑い夏のこと、当時夏休みで家に居た時、学校から家に電話がかかってきたんです。内容は、兄が部活中に倒れて病院へ運ばれたと。

当たり前ながら私はとても焦りました。すぐに家を飛び出して病院へ向かいました、そして、交差点へ差し掛かった時です。その時の私は周りが見えていなかったせいで、交通事故にあったんだと思います。

私の記憶には、トラックが見えたと思っていたら空が映り、気がつくとこの公園のベンチに座り日記を持って空を眺めていました...。

...流石に死んでいますよね?私」

空を眺めながら悲しそうにハニカム。


俺はどんな言葉をかければ良いか分からず、ただ遠くの景色を見つめることしか出来なかった。

何も言えないでいると有希は続けて話す。

「私はきっと夢の亡霊なんだと思います、ここから一生抜け出せない、でもね、ここに居ると秋夜さんみたいに迷い込んでくる人が居るんです。そして迷い込む人にはみんな共通点があるんです、なんだと思いますか?」

共通点か、俺と有希さんで似ていることで考えてみるが思い当たるところがないな、そもそも彼女は死んでいて俺は生きている訳だから共通点なんか有るのか?

有希は少し時間を取ってから解答を述べる様に話し始める。

「共通点とは、その人に未来がないということです」

有希さんの言葉ですぐに俺は納得した。

「そうか、未来が無い...か」

俺は、一度に大切な家族を一瞬で奪われてしまった。そこから俺は立ち直れずに今までなあなあに生きてきて時には死のうとも考えた、なのに、自分で命を絶つ事もできなかった。そんな何もない俺が未来なんて考えたことがなかった。

「有希さん」

静かにこちらに顔を向ける。

「ここに迷い込んだ人たちはみんなどうなったんですか?」

「みなさんは...すみません私には分かりません、また会う約束をして来てくれた人は誰も居なかったので、秋夜さんが初めてなんです、でも一人だけいろいろ話してくれた男の子が居ました、その子にはとても仲の良いお兄さんがいたらしく、ある事情でお兄さんを置いていくことになってしまい、謝りたい気持ちと、これから大丈夫なのか心配と言っていました、そこで私がもしそのお兄さんに会えたら伝えてあげるというと、その子はにっこりと笑ってから静かに眠りについて居なくなってしまいました」

俺は、その時弟の顔が浮かんだ、もしかしたらその男の子は弟なのではないかと。

「有希さん、その男の子とお兄さんの名前は憶えていますか?」

少し淡い期待を持って有希に問いかける。

「ごめんなさい、いなくなった後その子の名前、お兄さんの名前もお聞きしていなかったことに気づきました。私はその子に嘘の約束をしてしまったのです。死んでなお人を裏切るなんて亡霊どころか悪霊みたいですね」

有希の表情が暗く俯いてしまう。

「別に責めているわけではないんだ、それにそのお兄さんがここに来る可能性が有るわけでもないし、そんなに自分を責めないでくれ笑っている方が有希さんにお似合いだよ」


「ありがとうございます、秋夜さんはいつもそんな言葉をいろんな女性にかけているんですか?」

ふふっと少し笑う彼女を見て良かったと安心する。

「そんなどこぞのお気楽野郎と一緒にしないでくださいよ。心から思ったから話しただけです」

優希のおかげでこんなセリフが出てきたんだ感謝しとかないと、でもあいつと一緒にされるのは心外だ。

「有希さん、悪いけどさっきの話の続きになるけど、その男の子の特徴とか覚えてたりするかな?」

少し考える素振りを見せてから話す。

「そうですね、服装がパジャマでした、柄は車がたくさん描いてあったと思います。そして背中が血だらけでした、その子は自分から話そうとしなかったのでなぜ血だらけかは分かりませんが。私が覚えているのかこれくらいです」

そうか、あいつはここに来ていたのか。自分があんな状況に置かれていたというのに、俺の心配なんて。気が付くと俺の目から涙が流れている葬式の時と同じように。でも

「秋夜さん!どうしたんですか?大丈夫ですか?」

突然涙を流す俺に驚き、話をかける彼女に涙をぬぐいながら話す。

「お恥ずかしい所をあ見せしてすみません大丈夫です。有希さん、その男の子はたぶん俺の弟です、有希さんは俺の弟との約束をちゃんと果たしてくれました、だから悪霊ではないですよ」

有希は少し驚くとぽろぽろと涙をこぼし始めた、でもその表情はとても嬉しそうで、ずっと見ていたいと思ってしまった。

「有希さんが泣いてどうするんですか?俺がもう泣けないじゃないですか!」

「ごめんなさい、今まで何もできずにここに捕らわれるだけ存在だと思っていたんです、だけど今、やっとあの子との約束、思いを伝えることが出来て、あの子の為に出来て良かったと思うとつい」

「秋夜さん、私はあなたが笑顔でここから離れられるように秋夜さんの弟さんの為にも頑張ります。何かやりたいことはないですか?」

「ありがとう有希さん、だけど弟に心配されないよう自分で立ち上がるから大丈夫だ、俺はあいつの兄ちゃんだからさ。だから俺はここに捕らわれている有希さんを助けるためにここに居る時間を使いたいんだ」

俺はベンチから立ち上がり有希さんの方へ手を伸ばす。有希は俺のほうを見つめ何か決心をするように、俺の手を掴み立ち上がり話す。

「秋夜さんはお強いんですね、ありがとうございます、よろしくお願いしますね」

「早速だが有希さん、何かかなえたいことや知りたいことは有りますか?」

「そうですね、ではまず秋夜さんのこと君づけしていいですか?」

そんな事でいいのかと驚いたが、彼女が言うんだなんでもかなえてあげよう。

「いいですよ、君づけでも呼び捨てでも」

そう話すと、彼女は頬を染めて。呼び捨てはまだ私には早いです、もっと...と何か小さくつぶやいていやがよく聞き取れなかった。そのあと彼女は咳ばらいをして話す

「ありがとうございます、では秋夜君、私のことを呼び捨てでお願いします」

「有希、これでいいですか?」

彼女は少し、んーっと唸ってから

「秋夜君、敬語はやめてフランクにいきましょう、お互い涙を見合った仲ですし」


「OK有希、今日はやたらに天気がいいねぇ有希もそう思うだろぉ?」

改めてフランクとか意識すると恥ずかしくてついふざけてしまう。

「なんか変です、秋夜君ふざけているでしょ?普通にお願いします」


「ごめん、なんか意識すると恥ずかしくなって、有希、俺は君の為に出来ることは何でもするから、よろしくな」

「良いでしょう、こちらこそよろしくお願いします秋夜君。では、次に私がやりたかったことを代わりに秋夜君がやってきてその感想を私に話してください」

生前に有希がやりたかったこと、まだ俺と年齢は変わらないはずだ。きっとやりたいことがたくさんあったのだろう。

「分かった、まず何をやればいいんだ?」

「そうですね、今って何月ですか?」

なんでそんな質問をしたのかと思ったが、ここは時間の概念がないのかと考えがたどり着き俺の今の時間を彼女に伝える。

「今は八月でちょうど夏休みだから、時間ならたっぷりあるぞ」

有希は少し考え何か悪だくみを考えているのではないかと思わせるように、静かに笑い話す。

「そうですね、せっかく夏休みなのですから、海に行ってナンパをしてきてください。そして結果とその時の話を聞きたいです。あっでも付き合っちゃダメですからね、あくまでもナンパだけです」

確かに何でもとは言ったが、こんな願いをされるとは思わなかった。俺が何も話さず黙ってどうするか考えていると、有希は俺の顔を下からのぞき込むように

「秋夜君ダメですか?何でもするって言いましたよね?」と話され、もうどうなったっていいやと思い始めた。


「あぁ分かったよ、海行ってナンパすればいいんだね?でもさ、有希はナンパしたかったの?」

「えっ? いいえ、私はしたいと思いませんでも、ちょっとされてみたいなとは考えたことはあります。なので、秋夜君がしてきてください」

なんか理由が無茶苦茶だけど腹はくくった、やってやろうじゃないか優も道連れにしてやろう。

有希はベンチに座り、前と同じように隣をたたき座るように促す。

「秋夜君、そろそろ夢から覚める時間です、楽しみにしているので行ってきてください」

俺はベンチに座り、目を閉じ意識がゆっくりと遠くになっていくのを感じる。


ジリリッとなる目覚まし時計に起こされ目が覚める。

「もう朝か、有希との約束だ早速実行と行きますか、まず優を呼びつけて海に行くか」

俺はベットから起き上がり、スマホをもって部屋を出るキッチンへ向かいながらスマホで優希に電話をかける。一回目のコールが終わる前に優希が電話に出た、あいつどんだけ出るの早いんだよ!逆に怖いわ。

「はいはいもしもし、あなたの優希ですっ本日はどのような要件ですか?」

優のいつものやり取りは今回は無視して要件を伝える。

「優、これから海行くぞ、準備しておけよ」

優希は電話越しでもわかるようにテンションが上がった声で話し始めた。

「おいおい秋夜、何事にも興味がなかったのにどうして急に海なんかに」

「ちょっとな、ある人との約束があって」

優希が何かニヤニヤし始めた

「ほうほう、約束ねぇ...え、何そのある人と海で会うけど恥ずかしいから俺に付き添ってほしいとかか?」

「ちげーよ、海でナンパすんだよナンパ」

急に優がしゃべらなくなったため、スマホの音量を上げ耳を澄ませたらいきなり大きい声で

「はぁーっ!お前がナンパ?何、その人に命でも狙わてんの?お前、天変地異が起きるぞこりゃ、早く地下シェルターに隠れなきゃ、あっ俺の家シェルターねーわ」

「意味わからねーこと言ってないで早く俺ん家来い」

「いやっ秋夜の方がわからねーから、まぁ分かったよ今から向かうわ」

通話を終わってから30分後に優が俺ん家に着いた。なぜか右手にはビデオカメラが握られていた。

「優、いくら何でも盗撮は良くないと思う、お前が通報され捕まったら、俺はニュースのインタビューで絶対にやると思ってましたって言うからな」

なぜが優は誇らしげに人差し指を横に振り

「ちっち、違いますぜ旦那これはナンパする秋夜を遠目で撮影して記録に残すためですよ!タイトルはそう、初めてのナンパって感じで」

「それも盗撮だろ、てかっナンパはお前もするんだよ、俺が適当に海にいる女子に話をかける、そこにすかさず優が入ってその子と話すそして俺は少しづつ離れお前を観察する、これが俺の完璧な計画よ」


なるほどと優が頷く、だがすぐ後におかしいことに気づきつっこむ

「いやいや、おかしいだろそれ八割がた俺がナンパしてることになってね?」

やはり気づいたか、あほだから行けると思たんだが。

「勘の良いガキは嫌いだよ、いいんだよナンパの様子を見たいだけだから、今度飯おごるから頼む」


「やっぱりか!んーしょうがないなぁ、見てなさい!私の最強のナンパテクを」

こいつは良すぎるくらいノリがいいからほんと扱いやすいな、後でしっかりと飯はおごらないと。

「優、善は急げだ行くぞっ!」

俺たちは自転車で海に向かう。


海に着くとそこは、夜中と違い今度は大勢の人で賑わっていた。

適当に砂浜を歩き、声をかけるターゲットを探す。

歩いていると、一人で飲み物を飲みながら歩いている女性を見つけ

「優、さぁお前の力を見せてみろ!突撃だぁー」


うぉーっと叫びながらその女性に向かい走っていった、ほんとに叫びながら。


優はその女性に近づくとそのまま女性に背負い投げで投げ飛ばされていた。遠くから見ていても分かるくらいきれいなフォームだった。

俺は、優が通報される前に彼女に近づき、事情を話して謝る。

事情を話すとその女性は、笑って許してくれた。投げた時に落とした飲み物と食べ物をお詫びとして購入して渡した、そしてなぜか俺だけその人と連絡先を交換することになり、とりあえず交換した。


その後も何度か挑戦したが優はすべて失敗した。


日が少し傾いてきたところで俺たちは帰ることにした、そしていつものファミレスへ向かい優の慰め会を二人で開いた。

「今日は俺のおごりだから、好きなもん頼みな」


「ありがとうな秋夜、お前の友達でよかったわマジあそこまでフラれると来るものが有るわ、ナンパしてない秋夜だけ連絡先交換してるし」

「いいから今日のは、あれだ、時期が悪かった、そうだろ?本気のお前なら余裕だろ」


「そうだな!ちょっと運が悪かったわ、運を回復するためにもりもり食べるぞ!」

「おぅもりもり食べろ!」

ひとしきり食べ終わり、腹いっぱいで眠くなったから帰るわ、と話しそこで優と解散して後から俺も店を出る。

家に着き、日課を終えベットに横になる。さすがに一日砂浜を歩いて疲れたせいか、眠りにつくまでに時間はそんなにかからなかった。


目が覚めるとまた、あの公園の入り口に立っているそして、いつものベンチで彼女は目を瞑って座っている。

俺は、ゆっくりとベンチに近づき横に座り横顔を眺める。

「秋夜君、お願いは果たしてくれましたか?」

やっぱり彼女は、俺の存在に気づき話をかけてくる。

読んでいただきありがとうございます。

前回投稿が出来なかった分今回は長めに投稿させいただきました。


青春といえば彼女との思い出も大切ですが友達との思い出も同じくらい大切なのかと自分の中で思います、ですのでどちらも楽しめるように話を書いていきたいと思います。一粒で二度おいしいみたいな。

これからどうなるのか、この三人を見守っていてください。

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