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夜明け前に君の事を思う  作者: もみじ
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暗闇に差す一筋の光

葬式が終わり一週間がたった。葬式は俺が落ち着いた後、静かに行われた。

葬式の後片づけ、荷物整理などを叔父と叔母に手伝ってもらい着々と進んでいき、叔父が話をかけてきた。

「秋夜君、そのぉ...この家に一人で住むのは、何かとつらいんじゃないかって家内と話していてね...どうだい?僕の家に引っ越して一緒に暮らさないか?」

俺が小さいころから本当の子供のように、優しくしてくれていて今回の件でもお世話になった人だ、その言葉はやさしさのみで出来ているのは、誰だってわかる。でも、

「叔父さん、叔母さん、とても嬉しいんだけど、ごめんなさい。俺は...父、母、弟との思い出が詰まったこの家を離れる決心はまだ、今の俺にはできません。だから...」

「いいんだ秋夜君、僕こそすまない。家族の思いでの場所から君を引き剥がすことになるなんて、考えが至らなかった僕が悪い、そうだね、秋夜君が自立できるまで、援助などは僕がしよう。今僕が君に出来るのはこのくらいしかないから」

「ありがとうございます。叔父さん、叔母さん」




日課の今日起こったことを話し終える。時計の針は12時を通り過ぎ、1時を指していた

さてと、もうこんな時間だしもう寝るか、自分の部屋に戻りベットに横になる。暗闇の中エアコンが冷風を吐く音だけが部屋の中に響く、そしてゆっくり瞼を閉じる。

一度寝ていたせいか、俺の考えとは別に意識がはっきりしている。

「はぁ、一度寝たせいで寝つきが悪いな」

昔、あんなことがあったせいではないが、ぼーっとしていると嫌なことばかり考えてしまう、だから俺は余計なことを考える前に早く寝ることを心掛けている。

何も考えないように頭の中を空っぽにする、そうすれば嫌なことを思い出さなくて済む。

時間はどのくらいたったのだろうか、暗闇の中でただ目をつむる。

スマホのアラームが突然なりだす、画面を見ると優希からだった。

こんな夜中になんだあいつは。

「もしもし、何時だと思ってんだ!さすがに考えろよ」

走っていたのか分からないが息切れをしながら話す。

「いやぁ、わりぃわりぃなんとなく起きてるような気がしてよ、でも起きてたんだろ?」

優希はたまに俺のことを見てんじゃないかってくらい察しがいい時がある。

「秋夜ちょっと窓開けてみろよ、いいからさ」

優希に言われるとおりに、窓際に立ち外を眺める。俺に向かって手を振っている男がいた、優希だ。

「なんで、お前そこに居るの?ストーカーか?やっぱあれなのか?」

「ちげーよ!せっかくの夏休みなんだから楽しまないといけないだろ?」

「だからってなんでこんな時間に来なくてもいいだろうが」

「いいから行こうぜちょっとだけよちょっとだけ」

こうなったら優希は意地でもおれない。

「分かったよ、今行くからちょっと待ってろ」

部屋をでて、階段を降り玄関へ向かい扉を開ける、そこにはニコニコした優希が自転車に乗って待っていた。

「で、どこに行こうとしているんだい?教えれもらおうか」

優希はニコニコ笑ったまま固まっている。

「お前何も考えないで俺の家に来たのか、部屋に帰っていいか」

俺が玄関に戻ろうとした瞬間先に優希が玄関にまわって俺を止める。

「まって待ってくれ、考えてるちゃんと考えれいるんだってば、聞いてくれ待ってくれ帰らないでくれー」

「分かった分かったから、掴むな近づくな暑苦しい、どこに行くんだ?」

「地味にひどくないか今の、まぁいいや、夏といえば意味だと思わないか?海だと思うだろ、では海に行こうぜ」

優希はそう言うと、先に歩き出した。まったく自由すぎだろあいつ。

「おい。優その自転車で二人乗りで行けば早く着くんじゃないのか」

「さっき秋夜は近づくなとか言いましたよね?二人乗りはできないのでは?どうなんですかね」

さっき言ったこと地味に気にしていたのか。

「悪かったよ、頼むからその自転車に載せてください」

「しょうがないな秋夜がそう言うのであれば乗せてあげましょう」

自転車の後ろに乗り海へ向かう、しばらくして海が見えてきた。朝と違って夜の海の浜辺には人一人いない。

「着きましたぜ旦那」

俺と優希は砂浜に立ち海の方へ体を向ける

「秋夜、俺はな、嫌なことがあるとよく夜の海を見に来ていたんだ。別にすべてを忘れて逃げるためではなくて、今の自分は何ができるこれから何をすればいいのか頭の中を整理するために来るんだ」

優希はそう言うと、水平線の向こうを眺め

「秋夜、前のお前は一人だったかもしれない、けどよ今は俺がいる。覚えとけよ」

俺も一緒に海を眺める、忘れるようと考えるのは逃げか...分かってるけどそう簡単に気持ちを切り替えるなんて出来るのだろうか。

「ありがとうな、俺なりに頑張ってみるからよ」

優希はまたニコッと笑う。

「じゃぁそろそろ帰るか、これを秋夜に言いたくてな」

帰り道、途中で優希と別れ家に帰る。

部屋入りベットに横になる、今度は寝られそうだ。先程寝ようとした時と違い気持ちが落ち着いている。

あいつのおかげなんて考えると気に食わないが、感謝しないとな。

瞳を閉じ眠りにつく。


気が付くと、またあの公園の入口に立っていた。

また彼女に会えるのでは、と思い自然と周りを見渡し彼女を探す。

居た、ベンチに座って気持ちよさそうに寝ている彼女が、そんな彼女を見つけ俺は、無性にいたずらをしたくなり彼女に見つからないように、ゆっくり近づき後ろに回る。特に何をしてやろうとかは考えていなかったから考えながら歩く。

声を出して驚かせようか、それともベンチを揺さぶって驚かせようかなんて考えて近づいた時。

「秋夜さん、寝ている女の子に向かっていたずらとかは、いけませんよ。そんなことをして女の子に嫌われちゃっても知りませんからね」

突然話をかけられ、うぉっと声がでてしまう。どうやら俺の行動はバレバレだったみたいだ。

「有希さん、寝れいるふりなんてずるいですよ。起きていたのならもっと早く声をかけてくださいよ、びっくりするじゃないですか」

「びっくりさせるために寝ているふりをしていたんです。秋夜君もいたずらをしようとしていたのですから、おあいこですよ。ふふっ」

なんて言いながら有希はくすくすと笑う。そんな笑い顔を見ているだけで俺の心が高揚するし暖かくなるのを感じる。

「秋夜さんいつまでも立って居ないですわってください」

有希の言われるとおりに隣に座る。ふと、俺はファミレスで優希話していた事を思い出し、ここが夢であったことを自覚する。そして有希に聞く事にした。

「有希さん、聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「はい、分かることでしたら何でも聞いてください」

有希がこちらに体を向ける、ドキッとしたがそこは抑えて話を続ける。

「この公園というか、ここの世界って俺の夢の中なんですよね?」

まじめな表情で有希は口を開く。

読んでいただきありがとうございます。

人は何のために生きていくのかなんて、考えたことがあります。

私が思うに人は、最後までにどれだけ満足する人生を歩めたかだと思うんです。

何歳まで生きたとか、世界に名前を残せたとかではなく。

どんなにちっぽけでもいい、自分が満足という気持ちを感じるために生きていくのだと思います。

生きていれば様々な困難に立ち向かわなくてはいけない時が必ず来ます。

そうゆう時は必ず、あなたを支えてくれる人が現れます。

そんな人と悲しみを分かち合えば、一人で背負う悲しみが半分に

喜びを分かち合えば二倍になるんです。

人と人のつながりは、そんな不思議な力があります。


主人公の秋夜も一人で背負いきれない悲しみを少しでも二人で分かち合うことが出来たから

困難に立ち向かう勇気を少しだけなのかもしれませんが、得られたのだと思います。

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