彼女は悲しげに笑う
年齢は俺と同じ歳だろうか、目鼻立ちが綺麗で格好も相まってお嬢様みたいに見えた。
「これは失礼、ここはお嬢様のお気に入りの場所でしたか、俺は退けますから楽しい時間をお過ごしください」
なんて言った直後、自分ですごく恥ずかしい事を言っていたと自覚し、耳まで真っ赤になったのが分かるほどすごく恥ずかしくなり、一目散にここから離れようとした。
「ふふっ、別に立ち去らなくても良いんですよ、こんなに長い椅子なんですから、一緒に座りましょうよ」
と言い、隣の空いたスペースをトントンっと叩いて、座るように促された。
「はぁー、そう言うのでしたら、座ります」
俺は、彼女の隣に座った、彼女は俺が座るのを確認すると、カバンから本を取り出した、タイトルはよく見えなかったが全体的に白く輝いて見えた。
俺が見ていた視線に気づき話、をかけてくる。
「この本、気になりますか?」
「盗み見るつもりは無かったんですが、あまりにも白く綺麗だったので、つい」
彼女は本をペラペラとめくり話す。
「これはですね、私の日記なんです。今日は何があったとかその日の起こった出来事を書いているんです。日記なので当たり前ですが」
そう言ってハニカム彼女、俺からは何故か悲しい表情に見えた。
はっと思いついたように両手を合わせ、少し頬を染めながら
「すみません、宜しかったら私とお話しませんか? とても暇なんです」
俺は少し驚いたが、その頬を染めた表情にドキッとして、緊張しながら答えた。
「はい、よっよろしくお願い致します」
そんな俺を見て、笑いながら話す
「そんな緊張しなくて良いんですよ、別に私お嬢様とかではないですし」
深呼吸をして心を落ち着かせ、少し遠くの方を見つめる
「緊張なんてしていませんよ、ちょっと驚いただけなので、だから緊張はしていません」
「そんなに言われると、逆に俺はものすごく緊張してますよーって聞こえちゃいますよ、私としてはその反応が可愛らしくて、好きですけどね」
クスクス笑いながら、こちらの顔を覗いてくる。
落ち着け俺、いつもの平常心を取り戻せ、そうだ!優を思い出せ。
優とのくだらない話などを思い出す、何故かイライラしてきた、まぁいい、これで落ち着いてきた。
「もう、大丈夫です、今、自分を取り戻してきたので、では、話題を変えましょう! その、ここにはよく来るんですか?、俺は今日初めて来たんですけど」
そんな質問に、1度日記を見つめゆっくりと口を開く。
「はい、ここにはよく来ます。このベンチに座って風で揺れる草木を眺めたりしています。この景色がとても好きなんです、でも今日は貴方がここに座っていて驚きました、私の特等席がぁーって、冗談ですけどっ」
「ここは君の特等席だったんですね、これは悪いことしたな」
「いつも1人でこの景色を見を眺めているのも好きですけど、やっぱり1人より2人の方が楽しいですのでお気になさらず。でも、悪いと思っているのでしたら、良かったら貴方の名前を教えて頂けませんか?」
「そんな事で良かったら、いくらでも教えますよ、俺の名前は、月島秋夜って言います。よろしくお願いします。良かったら君の名前を教えて貰っても良いかな?」
彼女は、一瞬困った顔を見せたが、すぐに笑顔になり名前を教えてくれた。
「良いですよ、私の名前は、有希って言います。こちらこそよろしくお願いしますね」
有希、まるで雪みたいに真っ白な姿と重なってぴったりな名前に感じる。
「ピッタリの名前ですね、とても綺麗らしくて」
有希が俯いてしまった、変な事行っちゃたかな?素直な感想だしな、たぶん大丈夫だろ。
俺はベンチから立ち上がり、大きく深呼吸をした、空気が美味しいってこうゆう事なんだろうか、新鮮な空気を味わいつつ周りを見渡す。やや広い公園のようだ、噴水、砂場、遊技機があり、この公園を囲むように木々が生い茂っている。
どうしようもなく、ブランコで遊びたくなってきた。なんでだろ、この陽気がこんな気持ちにさせるのだろうか?
「有希さんっ!」
声をかけると、有希はこちらに顔を向ける、何故か顔が真っ赤である。体調でも悪くしたのだろうか?
「有希さん、大丈夫ですか?顔が真っ赤になってます、体調は大丈夫ですか?」
「えっ? 大丈夫です。元気なので気にしないでください。どうしましたか?」
どう見ても大丈夫に見えないが、本人が元気と言っているのだから、これ以上深く突っ込むのは止めよう。
「あのー、ブランコ乗りません?急に乗りたくなっちゃって」
有希はゆっくりと立ち上がり、服を少し整え話す。
「ブランコは私も好きなので、ご一緒致します、どちらが高く上がれるか勝負しましょう!」
「いいですねぇ、俺は結構高く上がれる自信が有りますよ! じゃぁ罰ゲーム決めましょう、負けた人は勝った人の言うことを1つ聞く、どうですか?」
「こちらこそ負ける気はありませんので、その勝負お受け致します」
どうやら有希は、負けず嫌いなのかもしれない、2人ブランコに座り鎖を握る、後ろに下がって有希の合図と共に勢いよく漕ぐ、この調子なら勝てるなっと思っていたら勢いが強すぎたせいで、ブランコから振り落とされそうになる。バランスを崩したら危ないと思い、ブランコから飛び降りる。
「大丈夫ですか?お怪我は有りませんか?」
有希がブランコを止めて、心配そうに話を掛けてくる、自分で振り落とされるとか、結構ダサいんじゃねって思い
「怪我はしていないです。テンション上がりすぎて飛び出しちゃいました。」
あははっと言いながら、頭をかく。
「怪我がなくて良かったです。あっでも途中で降りたので、私の勝ちですけどね」
ごまかせないかと思ってたけど、俺が思ってたより彼女はしっかりしていた。
どんな願いも叶えるつもりで、心構えしておこう。
「覚悟は出来ています、なんなりと」
「そうですねー、飛びっきりの大変なお願いでもしようかな?」
「覚悟はしていると言いましたけど、俺にできる範囲でお願いしても良いですか」
「冗談です、多分とても簡単だと思いますよ」
多分が引っかかるけど、あったその日に変なお願いはしないだろう、さすがに。
やや不安が残り、自然と身構える。
彼女がゆっくりと息を吸う。
「では、言いますよ。秋夜さん、またここで私に会ってくれますか?」
ふへぇ、身構えすぎたせいか変な声が出た。
「そんなお願いでいいんですか? もっとすんごいお願いをされると思っていました」
「そんなって、酷いです。結構勇気出したのに」
「ははっごめんごめん、分かりました、その御命令しっかり私めが叶えさせていただきます」
「恥ずかしくないんですか?」
頬を赤く染めながら話す、有希。
「これで、お互い恥ずかしい思いをしたので、おあいこと言うことでいいじゃないですか!」
「ふふっそうですね、ありがとうございます、約束ですよ、いつまでも待ってますからね」
「少し疲れちゃいました、ひと休みしましょ?」
彼女はベンチに座った、俺も隣に座る。
「有希さん、この公園とても居心地良いですね、眠くなっちゃいます」
「そうなんです、こう、目を瞑って草木の音を聞いていると、それが子守唄みたいになってうとうとして、気がつくと眠っちゃいます、秋夜さんも眠ちゃって良いんですよ、ご一緒にどうですか?」
にっこりと笑って、目を瞑って周りの音に耳を傾ける彼女、その横顔をずっと眺めていたいと思ったが、せっかくだ、彼女に習って目を瞑って周りの音に耳を傾ける、ササァササァと風が木の葉を揺らす音、 そして心地良い風、なるほど確かにこれはつい眠くなってしまう。
だんだんと、少しづつ意識が遠くなっていく、
どこか違う世界に行ってしまうみたいに。
読んで頂きありがとうございます。
小さい頃はよく、遊技機で遊んでいましたけど
今は種類が減って残念です。
けど、しょうがないのかなぁとも思っています。