出会い
この作品を書こうと思ったきっかけは、奇跡ってふと勝手に起こるものではなく、日々出来事の積み重なりで、奇跡のように感じる出来事につながると思うんです。それを自分なりに考えて、物語に出来ないかなって思い、書いてみました。
七月終わりかけの一番暑い日、俺は窓際の席で補習を受けていた。
授業中、先生の話を流し聞きしながら、運動部の部活をしている姿をぼーっと眺めていた。
「おいっ!」後ろの席で、うちわを扇ぎながら俺を何度もつつき話しかけてくる。
俺は、だるそうにゆっくりと、振り向きながら返事をする。
「なんだよっ優、何度もつつくな。こんなクソ暑いのに鬱陶しい」
こいつの名前は柏木優希、昔からの付き合いで、まぁ、腐れ縁見たいな奴だ。
「そんな冷たい事言うなよ、泣いちゃうよ俺」
こんなふうにおどけた性格のせいか、俺と違ってやたらモテてる。
それなのにこいつは、彼女を作らないでによくからんでくる。
だから、こんなに長い付き合いなったのかもしれない。
「だからなんだよ。用がないならせっかく先生の素晴らしいお話を聞いているんだから、邪魔しないでくれよ」
「そうなのか! 月島、いやぁー先生は嬉しいぞ! そうだ! 月島のために、これからの夏休み全部、特別補習にして先生のありがた〜い話を聞くことにするか! 先生は、いつまでも付き合うぞ?」
俺らの話が聞こえていたようで、笑顔で俺らの話に混ざってきた
「いやぁ〜先生、先生のありがたいお話を聴くのもいいですけど、そんなに時間を割くのは申し訳ありません、ので、ご遠慮させて頂きます」
「だったら、補習を受けないようにちゃんと授業を聴きなさい」
へいへいと返事しつつ、時計へ目を向け補習が終わるまでの時間を見る、短い針は三へ長い針はもうすぐで、十二へ指そうとしていた所だった。
「もうすぐで三時か、地獄熱の補習も終だな、さっさと帰ってアイスでも食いながらゆっくりするか」
そんな事考えていたら、チャイムが鳴り補習の終わりを告げる。
「はい、今日で補習授業の終わり、お前らちゃんと授業受けろよ、まったく」
先生は、うちわで扇ぎながらゆっくりと教室から出て行った。
その背中を見送ると、今度は、自分とばかりに他の奴らが、教室から出て行った。
「じゃぁ俺も帰ろうかな、優、俺は先帰るぞ」
荷物を鞄にしまい、教室を出ようとした所で、優希が慌てて追いかけてきた。
「待ってくれよ、秋夜、おいて行かないでくれよ、もうひどいな」
「なんだよそのセリフ、きもち悪りぃな」
そんな事を気にせずに、優は、俺の肩に腕を乗せ来た。
「あぁーもぅ、暑苦しいなっ、なんだよ。もしかして、お前ってそっちの趣味なのか?」
そういい、優の腕を俺の肩から離す。
「んなわけないっつーの、辞めろよ。いやっそうじゃなくてさ、お前って奇跡とか信じているか?」
そんな、突拍子のない質問にはぁーっとため息が出る、俺がそんな奇跡とか、まるでフィクションのような物を信じるわけがない。
「なんだよその質問、奇跡とかただの神頼みじゃんか、信じるわけないだろ、むしろ信じる奴の気が知れないわ」
そう言うと、優は、だろうなって顔をし廊下の窓に顔を向けた
「まぁ、俺ら長い付き合いだから、信じてないだろうとは思ってたわ、でもよ、俺は奇跡って本当にあると思うんだよ、実際に俺が奇跡を体験したわけじゃないけどさ、だからさ、ちょっとくらい奇跡を信じても良いんじゃないか?」
そんな、優の言葉で嫌な記憶が蘇る、世間から見たら可哀想で片付くかも知れないが、俺は、いつまでも、心の奥に残る絶望のような黒い闇でしか無かった。
「気が向いたら考えといてやるよ、今日は俺の家によって行くのか?」
「今日はいいわ、変な事言って悪いな、ただ世の中悪いことばかりじゃないって言いたかっただけだ、じゃぁな、寂しくなったらいつでも電話して来いよ!すぐに会いに行ってやるから」
優は昇降口から俺より先に出ていった。
「しねーよアホ、一人静かにのんびり夏を楽しむんだよ。じゃぁな」
ゆっくりと自分の下駄箱に向かい、靴をとり、変わりにさっきまで履いてたシューズを入れる、学校の中は静かで、外から部活動をしているであろう掛け声と蝉の声が校舎内へ響く。
若者よ青春を謳歌するんだぞ、そんなくさいセリフが思い浮かんだが、誰かが聞いていたら死ぬほど恥ずかしい思いを味わうことになりそうだから、ぐっと飲み込んだ。校舎を出て、強い陽射しに背を向けて校門を抜ける。
しばらく歩いるいていると、昔から通っている駄菓子屋が見えてくる。
俺が小学生の時からよく通っていた駄菓子屋で、店員をやっているお婆ちゃんとは、
かなり親しき中であろうと、勝手に思っている。
扉を開けると、いつものようにお婆ちゃんがレジの隣でお茶をすすりながら、外の景色を眺めていた。
「よお!婆ちゃん、今日も元気か?こんな暑いのに、よくお茶なんて飲んでいられるな」
「なんだいこのクソボウズ、これはお茶じゃなくて麦茶だよ、クソ暑いのに、さらに熱いものなんて飲むわけないだろっ暑さでやられたのかい? これから麦茶用意するから、飲んで頭でも冷やしなっ」
この婆ちゃん、口は悪いがなんやかんや世話焼きで優しいから、地元の奴らは結構ここに顔出しに来るんだよな。
たぶんここの婆ちゃんのせい、俺ので口が悪くなったと思う。
「ありがとな婆ちゃん、いつまでも元気でいてくれよ、あっ、このアイス頂戴お金はここに置いとくから」
いつもここで、買い物をしているせいか、会計用皿に置いとくだけで良くなっていた、防犯とか大丈夫なのか心配になる時がある、まぁここら辺にそんな事をする奴なんていないけどな。
「あいよっ毎度あり、ほら麦茶飲んで冷えたら帰んなっ」
婆ちゃんの言うとおりに、麦茶を一気に飲んでアイスが溶けないうちにさっさと帰った、玄関を開け中に入り自分の部屋へ向かう、室内はサウナのように感じる程蒸し暑い、あちぃーと呟きながらエアコンをつけ、先ほど買ったアイスをほうばる。
食べ終わる頃には、部屋の温度が心地いい感じになっていた。
優は来ないし、今日の予定は無いから昼寝でもするか、そんな事を考えていたらまぶたが重くなり、そのまま俺は眠りについた。
気がつくと俺は、何処か見知らぬ公園に立っていた。
季節は真夏だと言うのに、そこの公園の日差しは昼寝をするに丁度、いや、完璧なくらい過ごしやすかった。
公演を歩いていると、木の木陰にベンチが有るのを見つけた、俺はそこに座り目を瞑る、風が木の葉を揺らし心地いい音となって耳に届く、
老後はこんな場所でのんびりしてみたいなぁ、なんて考えていたら、足音が俺に近づいてくるのが分かった。
「すみません、こちら、私もご一緒していいですか?」
すっと目を開ける、そこには、白いワンビースに白い傘をさした女性がいた。
読んでいただきありがとうございます。
休憩の時間を使って、書いていますので更新自体はゆっくりになってしまうと思いますが、
最後まで書けたらなと思います。
よろしければ、最後までお付き合いください。