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雪の子守歌  作者: 岡田 暁生
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立ち往生

 数十年に一度の勢いで降り続く雪は、瞬く間にアスファルトを白一色に染めていった。立ち往生した車の長蛇を横目に見ながら、新宿の大通りを一歩一歩踏みしめた。普段目に痛いネオンの色彩は、雪の白い温もりに打ち消されて、行き交う人の目をくぎ付けにした。

 

 「テレビで見るより案外綺麗じゃん」

 近くを歩いていた若い女性が、おもむろにスマートフォンを取り出して、何枚か写真を撮っていた。

 「そこらのイルミネーションよりよっぽどいいや」

 連れの男性は、女性の手を引いて、二人の写真を撮ろうともちかけていた。


   若いな……。  明らかに年上のようだけど。

  

 巨大ターミナルの電光掲示板は、運休と遅延の二文字で覆いつくされていた。改札の前にたむろしていた客たちは、無心にスマートフォンと格闘していた。


 大惨事の最中だというのに、笑顔をこぼすのは何故?


 溜息交じりに改札へ向かった。コンコースに単調な音が響くと、辺りの人は一瞬顔を見上げて、何んとも言えない視線を送ってきた。


 ホームに出たって凍えるだけだ。大人しく、俺たちの仲間になったほうが良い。

 

 あなたがたの方がよっぽど可笑しいでしょう。

 

 子供?

 ならそれでいい。笑みがこぼれるのは、子供の特権です。

 願うなら、遠い故郷の空を眺める白鳥になりたいです。

 

 ホームに上がって真っ先に飛び込んできたのは、発車を待ちわびる列車たちの姿だった。か弱いヘッドライトが、一面、紫の水晶に包まれた都会を灯していた。

 

 そうだ。決して、雪国の小さな停車場ではない。

 

 永久に止まらないはずの時間と人生の交差点

 

 ひしひしと伝わってくる静寂の余韻が、迫りくる闇を明るく迎えようとしている。

 

 ドア横の「開ける」ボタンを押して、効きすぎた暖房の生ぬるい熱風に、胸を撫で下ろした。知らず知らずのうちにぎこちなく震えていた手は、すぐに赤みを取り戻した。加えて、身体全体に熱が戻り、風邪をひいたときの布団のように心地よかった。


 乗客の全くいない列車何て、五年前の北海道旅行以来だ。

 また一人で旅がしたいものだ。全ての記憶と憂鬱を吸い取ってくれる冬の原野。

 

 ああ、このまま時間が止まってくれればいいのに……。

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