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混ぜるな危険



 川に流れ流された、秋夫さんだったが。


「げほっげほっ オエーー」


 やっとの思いで岸に上がり辺りを見回した。


「ここどこだ?東京湾にでるギリ手前だな…………」


 どうやら、秋夫はギリギリ東京湾まで流されずにすんだようだ、子鬼達は途中で見失ったので消息は分からないが、あいつらならどこにいってもアイドルがやれるだろう。


「まったくっ あいつら無茶がすぎるって、ノリって怖えェな予備校の講師もあんなノリだったよな」


 秋夫さんは高校時代に予備校に行っていたのだが、まさに、そんなノリの講師だったのを思い出した。


 当時、早稲田の政経学部が東大の文Ⅱより上だなんて講師の話を真に受け、早稲田受験に燃えていた頃の話だが。


 予備校の夏季合宿で秩父まで行ったのだが、講師が【飛べ、飛べ、舞い上がれ】を連呼して場に飲まれそのまま、いく人かの生徒と連れ立って滝つぼに飛び込んだ記憶がある。


 その時はわからなかったが、今ならはっきりとわかる。



 ノリで行動してはいけないと…………



ここは江東区あたりか?とりあえず足を探し赤羽に急ぎ戻るべきだろう。


 河原に拳銃も置いてきちゃったし。




 あまり土地勘のない場所だが何とかなるだろうとぶらぶらと歩く秋夫、そのうち一件のバイク屋のが目に入った。


店内を表から覗きこむと。


「おいおい、これって伝説のバイク500SS MACHⅢじゃないのよ」


 規制前のビンテージバイクで60馬力のモンスターマシンだ。


 曲がらない、止まらない、ピーキーすぎるなどの問題はあるが、それを、補う魅力というか魔力に溢れるバイクである。


 秋夫本人もこのバイクに憧れ、後継機のKH400に乗っていた時期がある。


 秋夫の少年時代には、先輩の先輩のパイセンてな感じで、十代も十五台も前のパイセンから受け継がれてきたバイクを乗りまた、高校卒業する頃に後輩に、バイクを譲り渡すみたいな独特な文化があった時代である。


 秋夫は高校卒業後もKH400が忘れられずKH250を購入して現在にいたる。


 そんなこんなで、店内に見えるバイクが欲しい秋夫さんは店のドアを開けるが鍵がかかっている。


 進入路はドアからしか無理っぽいガラスを、ぶち破って侵入するしか手がなさそうだ。


 ガラスを、ぶち破るなんて事は秋夫の生涯で一度もない経験だ、ガラスを破り突入なんて、まるで特殊部隊のようである。


「特殊部隊…………………… イイ 凄くイイ…………」


 秋夫は手で、顔と頭部をかばうよう姿勢を取りガラスに突っ込んんだ。


 ガシャンとガラスの割れる音が響き店内に突入した秋夫さん、体中ガラスで切り刻まれ、のたうち回る。


「ああ~~~ん痛いすぎる、助けて誰か…………」


 誰もいない店内で助けを呼ぶ秋夫だが。


 誰も助けにこないのを肌で感じ、しかたなく片足を引きずり店内をあさった、救急箱くらいあるだろうと。


「普通、石とかでガラスを割って入るんじゃないのか?突っ込むとかおバカさんよね」


 レジの下のスペースから救急箱を発見して治療しながら愚痴る秋夫だが、ガラスに突っ込む判断をした秋夫が一番バカなのを、ちゃんと本人は気づいている。


 きっと次回からは、ちゃんと石か何かで割るであろう。


痛みと自分の愚かさを呪いながら、治療を終えて。


 さっそくバイクにキーを刺し店外までコロコロと押してキックをガシャン、ガシャンと踏み続ける。


 このバイク何とセルモーターがないのである、実にマッシブなバイクだ、何度かキックを踏んでるうちに、パパンパンパンパンとエンジンが回った排気ガスがスゴイ。


 往年の憧れバイクにまたがりゴキゲンな秋夫さん。


「行くぞ、じゃじゃ馬…………」


 とつぶやきギアを一速に入れアクセルをひねり。



 そのまま、ウイリーしながら向かいのコンビニに突っ込んで行った…………



 ガシャンと自動ドアをぶち破り、弁当コーナーにドカンドカンとして

ようやく止まった。


 このバイク、2スト3気筒で500ccモノホンの化け物マシーンで、上手く乗らないと3速までウイリーする困ったさんなのだ。


「いらっしゃいませも! ないとか、けしからんな…………」


 無人の店内では、誰も、いらっしゃいませを言ってくれない人情のかけらもない、東京砂漠だ…………


 俺の人生恥ずかしくないもんをモットーにしてる秋夫さんいつもどおりの平常運転で店内を散策です。


「タバコを切らせていたな…………」


 レジカウンターの棚からタバコをいただきますしてさらに店内を見回すと、非常用防災リュックが置いてあった。


 店内には理屈はさっぱりだが食料品が普通に陳列されているのだが防災リュックに入ってる、乾パンを発見してしまったら。



 食べるしかないだろう……………………



 子供の時、親に非常用のラベルが張られている、乾パンや缶詰は非常時じゃないから食べちゃダメなんて言われたことは、誰にでもある経験だろう。


 だが、親になんと言われようが、こっそり隠れ食べる乾パンは何にも代えがたい味わいのする食べ物だったはずだ。


 その鮮烈な記憶が大人になっても消えず、非常リュックの魔力に負け乾パンを食べてしまう39歳秋夫………… 



 ですが、秋夫さんも立派な大人、それだけでは終われない…………



「秋夫さんの! 三分クッキングーーーーーーーーー!」


 そうなの、ひさしぶりに食べた乾パンは、それほど美味しくないの。


「まずは、器を用意して、イワシの缶詰を入れます!」


 店内の商品から使い捨てでお椀タイプの紙皿にイワシを入れた秋夫。


「続きまして、コンビーフもドーンと入れます!」


 鮮やかな手つきで、コンビーフもドーンされ、え!! これ本当に料理!? 料理できるのか秋夫さん。


「できらぁ!」


 自分に気合いを入れるように、秋夫は敬愛する料理漫画のセリフを叫ぶ。


「最後に乾パンを入れ、ミネラルウォーターを注ぎ、秋の非常用リュック、プロバンス風完成です 」




この調理方法は、僕自身8月に作って食べてます、ちゃんとレンジでチンすると意外と美味いです、ちなみに焼きそばに生卵、納豆、サバの塩焼きを混ぜ合わせると、これもまた美味ですどうやら僕は家族にも理解されない神の舌をもっているようです。


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