東武線と総武線がわからない
東武線と総武線が似た言葉なのを気づいてしまいオラつく秋夫だが。
「どっちも乗らねえよ!」
通りにある薬屋さんの、ぞうさん人形に。
「鼻が長いんだよ!」
ビシっと言ってやった秋夫さんだがぞうさん人形は悪くない、ぞうさんだから鼻も長くて当然なんだから。
「けっ言ってやったぜ!」
人は、おにんにんがフルバーストしないだけで、ここまで心がすさむ物なのだ。
「気は進まんが、お医者に行くか…………」
一刻も早く自身のチンチンの状態を回復させるべく異界の出口を探す秋夫だが。
「どこから帰ればいいのやら? 入口から出れるか?」
出口の事をすっかり失念していた秋夫は。
タバコを吸いながら、異界への入口に向かってみたら先ほど駅の西口で会った、子鬼達がたむろしている。
すぐさま、ビルの陰に潜みエコバックから、拳銃を取り出し撃退を考えてみたのだが。
長年グリスに浸かるっていたとはいえ、この拳銃が本当に使えるか不安になってきた秋夫は、足音をたてないように、慎重に近場のミリタリーショップに足を運んだ。
この町には大小、合わせてミリタリーショップが六~七件ある。
軍都赤羽なんて名称からマニアがしだいと集まり、店が増えていったらしい。
普通の店舗から、一軒家で常連客のマニアだけを相手にしている胡散臭い店まで色々だが。
秋夫の入った店は米軍の払い下げ品などを中心に沖縄から仕入れてる店なので、品ぞろえがいいのだ。
店内のたなから工具箱を取り出し、一冊の蔵書をパラパラと読んでみた。
「ふんふん、図解をみれば、ガバメントばらして整備できるな…………」
赤羽で少年時代を過ごした奴はたいてい、にわかミリタリーオタクになる秋夫本人も、にわかミリタリーオタクだ子供時代には周りの環境がいかに大事かわかる事例なのだ。
年に数度海外に行きシューティングレンジで実銃を撃ちに行くのだが、ガバメントはお気に入り拳銃だ。
もっとも製品特許が1986年に保護期限切れで失効して以後各社がこぞってガバメントモデルを製作しているため種類が多い。
秋夫は、近年は改修モデルチェンジされたコルト社以外からも、いろんなカスタムガバメントを撃っているがこんなに古いガバメントは初めて触る代物だ。
以前の秋夫は、そこそこお給料良いホワイト企業にいてバースデイ休暇や結婚記念休暇なんて物まであり有給を合わせれば軽くひと月近くあるため、嫁さんは買い物、秋夫は拳銃撃ちまくりができたのだが。
今現在は、嫁さんの有給に合わせて海外に行くだけなので年に二十日行ければ、上等みたいな空気がありさみしい。
もっとも、お給料は外資系企業で役職の身にある嫁さんの方がいいので複雑な気分になる。
思ったより整備に時間が食う。
さすがにシューティングレンジのインストラクターも拳銃をばらす方法までは教えてくれないので秋夫自身も初だが、何とか図解を見ながらばらし丁寧に整備してみた。
さてさて、肝心な実働発射だが、試しに店内の洗面所で水道の蛇口をひねってみたところ、水が出るので掃除用具からバケツを拝借して、並々と水を注ぎ、拳銃の銃口を水面に沈めた
「暴発とかしないよな? 南無三…………」
軽く念仏を唱えてから拳銃の引き金を引くとボフッとした鈍い音して腕から肩にかけ反動が来た。
拳銃の発砲音は弾が音速を越える時の音が大半なので銃口を水面に沈めて発砲すると、ほとんど音がしないのである。
「ん~変なクセも無いようだし、大丈夫そうだな」
実験は成功して安全性はある程度確保できたと思うので店内の商品棚から拳銃のヒップホルスターを取り装着し拳銃を通した。
帰還場所は、おそらく元来た入口を戻れば帰れるだろうそれで帰れなければ、ほかの道を探すだけだ。
「おしっ行ってみるか!」