北区生き生き体操
いい朝です、本日は決戦日和の天候でございます、参加者全員で北区生き生き体操をして軽くウオーミングアップ最後に、ご唱和ください! ご長寿祈願。
男達は額に青スジを立て口角に泡飛ばし叫ぶ…………
「おじーちゃん! おばーちゃん! 長生きしてね!」
本日の体操もこんなものだろう、この街ではラジオ体操なんてメジャーな事はしない、生き生き体操こそ長寿の秘訣とされている日常だ、練馬区健康いきいき体操に負けてはイカンのだ。
生き生き体操とは、イスの上に座りながら運動するタイプのエクササイズである、足をパカパカ開いたり閉じたりする動作も入りセクシーな動きが一部の地域の人たちに大人気なのだ。
ババアがイスを持って歩いていたら要注意である、意中のジジイにセクシーアピールするなら問題ないが、怖いのはババアの逆ナンパである。
もし往来でレオタードを着てイスをもったババアがいても決して目を合わせてはいけない、もし目が合ったらババアは折り畳みイスを広げ、その場で扇情的で情熱たっぷりの生き生き体操を始めるであろう。
被害者男性が、身の危険を感じ逃げようとしたら
「ここまで見ておいて逃げるんかい! 」
ババアは鬼のような形相に変わり怒鳴りちらす、そうするとどこからともなく老人たちが集結をはじめ、被害者男性を囲み口々にヤジを飛ばす
最終的には、添い寝だけだからと押し切られホテルに消えて行く…………
ラブホテルの二階の窓から、ケーブルテレビの生き生き体操の音楽が流れ聞こえてくると、住民達は目を伏せ捕食された被害者の冥福を祈るのだ。
さてさて秋夫さんは、大本営司令部であるビールケースの上に立ち野郎達に指示を飛ばす。
「おう! まずは作戦参謀である、宇宙刑事から作戦報告だ!」
「宇宙刑事の姿が見えないでやんすよ?」
「まだ寝てるんだっぺ?」
イカンよ、実にイカン…………生き生き体操をサボるなんて町工場でそんな事したらハブにされる重大違反である、忘年会に呼んでもらえないくらいヤバい行動だ、これだからお坊ちゃん育ちは困る。
「よこチン、宇宙刑事を起こしてこいよ」
「起こしに行ってくるれす!」
秋夫さんが、上から目線で命令しているように見えるが早朝なので、よこチンのオチンロンがやや膨張気味なため目のやり場に困る、向こうに行ってオチンロンを平常運転にしてこいの優しい気遣いだ。
昨晩は人数が増えたので就寝場所の確保に困り木々の間にハンモックを作り寝たのだが意外と寝られるもんだ。
古い戦争映画などで空母にいる兵士が、ハンモックで寝るシーンを見ていつかやってみたいと思っていたが、ハンモックのフィット感が妙に安心感を与えてくれ寝やすいのだ。
宇宙刑事を呼びに行ったよこチンが遅い、何をしているのだろうかとイライラしていると。
「みんな来て欲しいれすーーー!」
よこチンの叫び声が聞こえた! 何事かと全員で叫び声のする方へ向かってみると…………
宇宙刑事が倒れていた………… 白目を向き泡を吹いている、どうやらハンモックから落ちて気を失っているようだが?
バカと煙は高い所が、お好きと昔から言われているが、大体それで合っている、宇宙刑事は、秋夫さん達の忠告を聞かずに、2メートル程のかなり高い位置にハンモックを掛けて寝ていたので、落ちた時はそりゃ気絶もするだろう。
まれにハンモックから落ちて死亡事故などもあるので、こんな物ですめばラッキーな方である、坂好きがバケツの水を宇宙刑事にぶっかけると。
「おはようビックバンーーー! であります!」
「おはようでやんす、おにぎりがあるから早く顔を洗ってくるでやんす」
「おい、宇宙刑事の奴アレな感じに戻ってないか? 作戦をまだ聞いてないぞ…………」
ハンモックから落ちた衝撃で頭を打ったのであろう、いつもの残念な感じの宇宙刑事に戻っている、昨晩はうかれ気分でまだ作戦も聞いてない…………
何か妙だと秋夫さんは思った、タイミングが良すぎるのである、秋夫さんは宇宙刑事が寝ていたハンモックを調べると、ハンモックを吊るしてある木に目が止まる。
木に靴の裏の後がある………… 誰かが木を蹴り宇宙刑事をハンモックから落としたとしたら? だが誰が? 内部に異界の化け物と通じているスパイがいるのか?
秋夫さんは、全員の顔を見た………… どいつも怪しい顔をしている、わざわざ外部から侵入してきて、こんな妨害工作をするとは考えづらい…………
「犯人はオメーだ!」
とりあえず坂好きを殴ってみた秋夫さん…………
「何するでやんすか!」
「やかましー!! ゲス野郎が靴を脱げ!」
「かぐんでやんすか? 臭いをかぐんでやんすね?」
坂好きは、汚物を見るような視線で秋夫さんを見るので、もう一度なぐり靴を脱がせた、脱がせた靴を木に付いた靴の裏の跡と見比べてみる…………
「違うブーツの靴裏の跡じゃない!」
「先輩は何をしてるでやんすか? 」
「この木を蹴って宇宙刑事を落とした犯人がいるんだ! そいつは敵の回し者に違いない」
その場にいる全員の動きが止まる、お互いの顔を見つめ内部犯の可能性を考る、仲間内に疑心暗鬼という名の伝染病が蔓延しだしていた…………
「次はオメーだ鉄ちゃん………… 靴、脱げるよな? 」
「おっオラを疑うだか?」
「信用してるから、早く身の潔白を証明して欲しいんだ鉄っちゃん…………」
実は秋夫さんは、鉄っちゃんをこれっぽっちも信用していない奴の敏腕ぶりと頭の回転の良さは敵にしても欲しい人材だからだ。
「脱いだだよ…………」
「すまんな鉄っちゃん…………」
鉄ちゃんの脱いだサンダルを木の跡と照合してみるが違う、秋夫さんの額から汗が流れ安堵の息をした、良かった鉄っちゃんでなくて…………
「次はだっちゃ! オメーは靴のサイズが違いすぎるからブートキャンプでもして痩せろデブ!」
「ダーリン、それはないっちゃ………… 」
最後に残ったのは、よこチンだ考えたくないが金に目がくらんでの犯行は十分ありえる…………
「よこチン靴脱げ…………」
「おかしいれす! 仲間同士で疑うなんて、そんな悲しい事はやめるれす!」
「そうだな、よこチンの言う通り悲しいな………… 早く靴を脱いでみんなを安心させようぜ…………」
拒否をするよこチンが犯人で決定のようだ、心は少々痛むが少し痛い思いをしてもらって敵の情報を吐かせるできだろう…………
よこチンの靴を脱がせて、決定的な証拠を突き付けようと思った秋夫さんだが、重大な事を見落としていた…………
「よこチン………… オメー靴履いてないじゃん 」
「そうれすよ、はだしれすよ…………」
忘れていた…………よこチンはいつも、はだしだったのだ………… では犯人はだれだ?
仲間達の秋夫さんを見る視線が冷たい、わかっているとっとと靴を脱ぎ身の潔白を証明しろという事だろう、みんな大好き秋夫さんを疑うなんて、みんな心が荒んでいる。
「先輩も早く靴を脱ぐでやんすよ………… 」
「ほほう………… パイセンを疑うとは、土下座の準備でもしとけよボケが…………」
秋夫さんが自信マンマンに革靴を脱ぎ、木の跡と照らし合わせて見ると靴跡が一致した! よくよく思い出してみたら、昨晩トイレに行った帰りの話だが、季節外れのやぶ蚊に刺され苛立ち解消のために宇宙刑事が寝ていたハンモックの木を蹴り上げた事実を思いだした。
でも大丈夫、みんな大好き秋夫さんが坂好きの陰謀と言えば皆は信じるであろう、だって皆アホだからチョロイ物である。
「あー アレだ坂好きが犯人だな、人を落とし入れやがって本当にゲスな奴だ」
「僕は一晩中だっちゃ君とジェンガをしていたからハンモックの方に行ってないでやんす!」
「本当だっちゃよ! ウチと坂好き君は一晩中起きていただっちゃ! 」
「ぐぬぬ………… アレだ! オメーら全員犯人だ! 全員共犯に違いない! 人を犯人にしようだなんてオメーら、人間のクズだ! 聞いてんのかクズ野郎達!」
秋夫さんが見苦しくわめいていると、仲間達は呆れ顔をしながら資材が搬入されている資材小屋の中に入って行った、どうやら秋夫さんは許されたらしい、普段の人徳のなせる技だと思っていたのに。
仲間達が角材を手に持ち、資材小屋から出てきて秋夫さんに、にじり寄ってくる…………
「おい! 俺は犯人じゃないぞ! おかしいよな? 俺たち友達だろ? 」
「だったら死んで身の証を立てればいいでやんすゲヒー…………」
「クズはお前だべ…………」
友達を疑うなんて、コイツらの心は汚れきっている…………
「デブとよこチンのは違うよな? ほら角材なんか捨てろよ?」
「ウチは、ぽっちゃりなだけだっちゃ! 」
「ゴメンね秋夫君………… でも君が悪いんれすよ…………」
ヤバいヤバすぎる状況だ、秋夫さん死んじゃうだろうが、最後の望みは宇宙刑事だ奴だけは秋夫さんの味方に違いない。
「カモーン宇宙刑事! こんなアホ共は一緒に成敗しようぜ!」
「刑事長どの! おにぎりを食べたら、歯を磨くので無理であります! 二階級特進おめでとうございます!」
あの宇宙刑事が死ねとおっしゃっている、どこで教育を間違えたんだ………… 意識が途絶えていきながら、そんな事を思う秋夫さんでございます。
生き生きババアに出会ったら北西のビバ店内の迷宮に逃げ込めば助かるでしょう、決してビバに入るまで振り返ってはいけません(笑)