餃子の夜
秋夫さんの浮気編でございます。
色々な珍道中の末、やっとパラダイスと信じていた電車車庫に到着した秋夫御一行様、だが現実は甘くなかったパラダイスの終着点で待ち受けていたのは、ただの無職のオッサン達だなんてあんまりでございます。
「こんな事だろうと思ったさ! だけど少しぐらい夢をみてもいいだろうが!」
「先輩落ち着くでやんすよ! 異界に来る奴なんて、クズのおっさんしかいないでやんす」
「秋夫さんは何を怒ってるだっちゃ?」
「そうれすよ一人で叫んでないで、一緒にツイスターゲームでもするれす」
異界で出会ってしまった奴らの中でも特別濃いアホに会ってしまった、こいつらの一人は坂好きの幼馴染のデブ名前は、だっちゃ80年代アニメを愛する奴でいつも服装が鬼娘が着ているビキニを着ているから、だっちゃだ本名はおぼえてない無職38歳だ…………
もう一人のアジアンビューティーな顔立ちの男は、通称よこチンだ、よこチンは秋夫さんと小中と同じだった同級生だが、彼は少年時代から丈の短い半ズボンを履き、つねによこチンをしていたため、よこチンと呼ばれている、本名は横田真一39歳無職だ
コイツらなら金玉を盗まれ異界に迷い込んでも、誰も心配しない理想的なアホ達だ、よこチンは同級生だったよしみで殴る前に話ぐらいは聞こうと考える秋夫さん。
「デブはどうでもいいが、よこチンは何でここに住んでんだ? 妹が心配するから帰れ! 」
「よこチン君にも色々事情があったんだっちゃ!」
「何暗い顔してんだよこチン? 事情ぐらい聴いてやるって言ってんだぞ? 」
いつも笑顔しか取り柄の無いよこチンが黙っていて事情を話そうとしないどういうこった?
「よこチン、ゆっくりでいいから、何があったか話してみろ…………」
「あのね、秋夫君…………妹がね…………」
「妹? 妹のよこマンがどうしたんだ?」
よこチンには、一人妹がいる名前はよこチンの妹だからよこマンだ、別に妹はよこマンをチラリとしているわけではないが、子供の付けるあだ名は残酷なもので、よこチンの妹だからよこマンただそれだけである。
「妹はまた、男に騙されて借金を作ったのれす」
「またかよ! 今度は何だ? どっかのバカに女優にでもしてやるって騙されたか?」
「大統領夫人にしてやるって言われたそうれす…………スナックを売り払い足りないお金を借金して………… 」
大体事情は飲み込めてきた秋夫さん、以前もレースクイーンにしてやると言われ、帰って来た時はAV女優になっていたアホな女だが、アホな女にした原因は少年時代の秋夫さん達のせいでもある。
少年だった秋夫さん達が、安易によこマンだなんてあだ名を付けたため、わかりやすくグレてしまった女だ。
「んで連帯保証人の、よこチンまで借金取りの追い込みが掛かっていると、そうだな?」
「そうれす………… 」
「よこチン君は、ここで頑張ってお金を作ろうとしてるだっちゃ」
なる程、やはりそんな理由だったか、実は秋夫さんはよこマンと少々大人な関係になった事もあり放っておくのも寝ざめが悪い、秋夫さんとよこマンが一夜限りの関係を持ってしまった話だが、
会社の忘年会の帰りにアルコールが飲めない秋夫さんが、少々付き合いで飲み道にへたり込んでいると。
「あれっ? 秋夫さん? どうしたの気持ち悪いの? 」
「んっ? よこマ…………洋子ちゃんか?」
「よこマンでいいわよ、歩ける?アタシのアパートそこだから休んでいく? 」
そんな、よこマンの言葉に促され一夜限りの過ちが始まった夜だった、しばらく休んだ秋夫さんはアルコールが抜け少し体が楽になっていた、よこマンにお礼を言い帰ろうと思っていたら…………
よこマンが餃子を作っていた、男と女が一つの部屋にいて餃子を作るなんて、いけない行為とわかっていても男の本能が抑えられない…………
秋夫さんは立ち上がり、よこマンの餃子の皮を取り上げた…………
「ダメっ! 秋夫さん! そんなつもりで部屋に上げたわけじゃないの!」
「浜松風餃子を作っといて、そんな言い訳は通用しないぞ、本当はお前もニラとキャベツを包みたいんだろ! 」
「違うの、ほんの少しだけそんな気持ちもあったけど、美晴さんに悪い!」
嫁さんに悪いと言いだす、よこマンの指先には生姜が握られている、ガマンのボーダーラインを越えた秋夫さんは餃子の皮の端にしゃぶりついた…………
「ダメだったら! 餃子の皮の端をそんな風になめるなんて…………アっ凄い………… 」
秋夫さんは、餃子の皮の端を丹念にベロベロ舐めて皮に水分を浸透させると、強引に餡を挿入して包みこんだ…………
「きゃっキャベツが多い…………多いよぉ~ 溢れるちゃうーーー!!」
「溢れるぐらいが好きなんだろ! 一晩中ゴマ油が切れるまで焼いてやんよ!」
秋夫さんは、酒の力もあったのだろう、淫靡な手つきと舌技で一晩中餃子を作っては焼き、作っては冷凍分に分けゴマ油が尽きるまで餃子を作った…………
秋夫さんの携帯が着信音を鳴らし始め、時計を見ると時間は午前九時を回っていた………… 秋夫さんが携帯のを取り着信ボタンを押すと、聞きなれた上司の声だった。
「何時だと思ってるんだーー! 貴様今どこで何をやってるんだ! 」
「か課長………… あの餃子作ってました…………」
「あーん! 声が小さくて聞こえねえよ! 」
「だから…………餃子をね作って…………」
忘年会の翌日は、仕事終いの行事や引継ぎがあるため必ず出社しなければならないのだが。イカン、イカンと思いながら昨晩からの興奮が抜けない秋夫さんは。
「やかましーぞコラ! 餃子作ってたんだよ! 毛根ちらすぞハゲ!」
「こんな大事な日に餃子なんて不謹慎だとは思わんのかね! 始末書じゃすまないよ」
「んだとコラ! 今からオメーの娘さんに餃子を食わせに行くぞ! 」
「やっやめるんだ! 娘はまだ中学生なんだ! やめてくれーーー!!」
そんな顛末の末に会社をクビになった秋夫さん、嫁には言えない事情である。
しかし一夜限りでも関係を持った相手を、気にして何とかしてやろうなどと考えるのはバカな男の見本だが、それが男ってもんさ…………
一心不乱に餃子を作ってれば、朝の九時なんてよくあるミスですよね、それをネチネチ嫌味を言う上司は毛根が死滅するでしょう給湯室で鍋作るぞコラー! どうでもいい話ですがクリスマスのでディナーを予約しようと電話したらカレーショップ志み津が閉店してました、ウンコ味のカレー食べれる貴重な店だったのに、クソスマス会は楽しかったのに残念です