友情パワー
秋夫さんと坂好きの、たき火特有の変なテンションの相談会も終わりそろそろ行動開始と行きたい所でございますが。
何やら香ばしい食欲をそそる香りが漂っている、香りの発生源はどうやら宇宙刑事のそばからのようだ。
「おっ? 宇宙刑事いい香りがするな何を焼いてんだ?」
「刑事長も召し上がるでありますか?」
「んっ?何でやんす?」
宇宙刑事の周りに秋夫さんと坂好きが近づくと、宇宙刑事は異界の遺品である冷凍イカをを焼いていた…………
「あれっ? それって僕のイカでやんすか!?」
「宇宙刑事よ、それ食えるのか?」
「食うとかじゃなくて、何て事をしてくれるでやんす!」
「ヨネスケーーー!!」
ブツブツ文句を言っている、坂好きを尻目に宇宙刑事は焼きイカを、秋夫さんの口元までもってきた、一口食べろという事なんだろうが丁重にお断りした…………
「坂好き殿は食べるでありますよね?」
「いらないでやんす…………」
「では、自分ひとりでヨネスケするであります!!」
「おっおい宇宙刑事! やっぱりやめとけお腹痛くするぞ?」
秋夫さんの忠告を無視して宇宙刑事は、焼きイカをモリモリ食べ始めたのだが、途中で宇宙刑事の動きが止まった…………
「大丈夫なのか宇宙刑事よ? 吐くか? 吐くなら吐いちゃえ!」
「…………………… 美味でありますーーー!!」
「脅かしっこは無しでやんすよ~」
坂好きは安堵したのか軽く宇宙刑事の頭をポコンと叩いた…………
軽く頭を叩かれた宇宙刑事は突然立ち上がり天を仰ぎ叫びだした。
「1+1=2! 2+2=5! 太郎君は八百屋さんに買い物に行きました。りんごは1個40円です、太郎君は80円支払いました! さて太郎君はバナナをいくつ買いましたかーーー!」
「計算が微妙に違う気がするでやんすが? 確実に宇宙刑事が賢くなってるでやんす!」
「微妙どころか、意味がわからんぞ! 坂好きが、いい角度で叩くからスイッチが入ったんだろ!」
宇宙刑事の頭は十代女子のアソコよりデリケートゾーンだ、その辺りを考えて叩かないと時々こうなるのである…………
「ふうー 頭がスッキリしている、そこに見えるのは私の友人一号と二号だね」
「おりこうスイッチが入ったでやんすか?」
「どうやらそのようだな坂好きよ…………」
おりこうスイッチとは、時々だが宇宙刑事が賢くなるモードを指してそう呼ぶのだが…………
「一号君、二号君、先ほど君たちは、将来何になるか話していたようだったが、今がその将来なんだよ」
「バカ野郎ーー! 俺の将来は、まだまだこれからに決まってんだろうが!」
「そうでやんす! 僕たちは、まだ赤ちゃんみたいな物でやんす! 将来は無限の可能性があるでやんす!」
ウソだ…………ウソに決まっている、秋夫さんの将来はまだこれからである、秋夫さんだけは他の奴らと違うのだ! とか思っている、悲しい現実を直視しない39歳である…………
「一号君と二号君は私の友人らしいから、ウチの会社に入れてあげようか? 一号君は僕の運転手で、二号君にはコーヒーサーバーでも掃除してもらうかな?」
「…………おい坂好き、もう一度宇宙刑事のを殴っとけ、加減するなよ…………」
「加減なんて言葉は忘れたでやんすよ…………」
「一号君と二号君は、低能の分際で何を言っているんだい?」
そりゃーもう殴ったさ、どつきまくったさ、秋夫さんなんて残り物の缶詰でガッツン・ガッツン殴ったさ…………
秋夫さんと坂好きの手が、返り血でどす黒くなった頃、疲労がピークに来てフルぼっこは終了でございます。
「はぁはぁ………… 死んでないよな?」
「死んでたら、埋めちまえばいいでやんすギヒー!」
「そうだな埋めちまおう坂好き…………」
しばらく宇宙刑事の様子を見ていると再起動を開始したようだ、宇宙刑事は血まみれの顔でニコリと笑い。
「自分、寝ていたようであります!」
「ははっこの寝坊すけが! 顔が血まみれだぞ、どこにぶつけたんだ?」
「しょうがない奴でやんすね~ 寝ぼけて木にでも頭を打ったでやんすよ、今濡れタオルをもってくるでやんすから、顔を拭くでやんす」
本当に友情って美しい……………………
女性は学校を卒業しても、旅行やお茶などの交流を保ち友人が減らないものだが、男は違う卒業して、じゃあなで別れたら一生会わない奴の方が多いのである、この年齢で友達がいて友情を感じられるのは幸せである…………
「ほら宇宙刑事、顔を拭いてやるでやんす」
「感謝感激! 宇宙ビンビンであります!」
「おい宇宙刑事、傷を見せろ! ツバで消毒でいいか、ぺっぺっ…………」
「ありがた宇宙であります!」
まったくしょうがない奴である、歳の近い弟がいたらこんな感じだろうか、なんて思う秋夫さん先程、宇宙刑事を殺人未遂したのを軽くスルーするのも大人の生きる知恵である。
宇宙刑事の治療を適当に終わらせ、三人で友情について語りながら電車車庫に向かう、夜空の美しさも三人の友情を祝福しているようだ…………
「はははっ 宇宙刑事走るなよ、また血が噴水みたいに出てるぞ!」
「はははっ 目が霞んできたであります!」
「はははっ また、お眠でやんすか? おんぶしてやるでやんすよ~」
坂好きは笑いながら宇宙刑事をおぶった、末っ子の坂好きもお兄ちゃんぶりたいのだろう、宇宙刑事はしばらくして、坂好きの背中で夢の中に入り寝息を立てている。
月明かりを頼りに歩く二人だが、何やら坂好きは口パクで秋夫さんに意思の伝達を試みているようだ…………
「宇宙刑事をどうするでやんすか? 捨てるでやんすか?」
「元に戻ったし、異界なら傷の治りも早いから連れてくぞ」
「了解でやんす…………」
坂好きは、何て酷い奴なんだ、さんざん宇宙を殴っておきながら捨てていこうなんて、奴の心は悪魔に魅入られているに違いない、こんな奴とは友達付き合いしたくないと秋夫さんは思いながら、坂好きに微笑んだ…………
しばらく歩くと電車の車庫が見えてきた車庫の奥の方には人影が二つ見える、やっとセクシーちゃんとのご対面である、車庫の入口付近まで地下づくと工事用のライトが照らされ周囲が明るくなる。
「誰だっちゃ?」
セクシーちゃんの声が車庫内を響いた、ライトの逆光の為に姿は良く見えないがアニメ声でそそる秋夫さん…………
「セクシーちゃん達、オジサン達は怪しくないさ、少しお話がしたいだけなんだ!」
「あれっ? 秋夫さんだっちゃ?」
「秋夫君でし!」
車庫内のライトの明かりに目がなれて、ようやく見えた姿は、タルのような肥満体形がトラジマ模様のビキニを着たオッサンと、短かすぎるショートパンツから横チンしているオッサンの姿があった。
「お前ら…………俺の希望を打ち砕いたな…………」