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イカ臭い


 防空壕跡と思いきや、迷宮のような地下壕に入り込んでしまった秋夫さん、そこで発見したミイラは冷凍イカを握っていた、異界の謎が増える空気がビンビンしております。


 ライターの薄暗い明かりの中で、冷凍イカを握るミイラの手から冷凍イカをそっと抜き出した秋夫さん。


「間違いない、冷凍イカだ…………死体がミイラになるくらい昔から凍っていたのか?」



 地下壕の中の気温は、肌寒くはあるが物が凍るほどでもない、この冷凍イカも異界の遺品の可能性が高いだろう、ミイラ付近を見ると地面に無数の謎玉が散らばっている、このミイラは生前息を引き取る間際まで、この場所で異界の化け物と戦っていたのだろうか?


 ライターのオイルが残り少ないのだろうか? ライターの火が小さくなりだしているので、秋夫さんは地面に散らばって落ちている謎玉を手早く拾い集め地下壕を退散して元の雑木林に戻ってきた。


 太陽の明かりの元で冷凍イカを調べてみたが、やはりただの冷凍イカのようだが、いっこうに冷凍イカは溶ける気配もない、イカの目玉を見ると微かに違和感を感じる。


「この冷凍イカ…………目が謎玉で、できてやがる…………」


 間違いない、このイカは異界の遺品で間違いないようだ、秋夫さんはこのイカの正体について思いつく事がある、文献などには残っていないが口伝だけで伝えられた土着信仰にイカ信仰と言うものがあるのを思い出したのだ。


 秋夫さんは、学生時代にイカ臭いと言う言葉のエロス感が頭から離れずにイカについて調べた事があるのだが。


 時代は安政初期の頃、この辺りの村は風土病がはやり村が絶滅の危機にあったのだが、凍ったイカを持つ浪人が、熱で苦しむ村人の額に凍ったイカを置き熱を下げて回り、絶滅しかかっている村に野盗に目を付け村が襲われた時も、その浪人は凍ったイカで戦い野盗を追い払ったらしい。


その後、その浪人は神格化されイカ様と呼ばれ信仰の対象になったそうである、だがイカ様ではないかと思われるエピソードはもう一つある。


 昭和20年代に暴行を受けそうになっている女性を軍服を着た男が、冷凍イカで叩きのめし撃退

したなどの話もあり、薄れかけていた口伝の土着信仰は息を吹き返し、昭和30年頃まで博徒たちの間で、当たり目様と呼ばれギャンブルをする前にあたりめを咥えて願掛けしたそうである。


 当時学生だった秋夫さんは、その話を聞いた時には大笑いした物だが、その冷凍イカが異界の遺品だと仮定して考えてみれば、意外としっくりしてしまう話になる。


 江戸時代の民衆の娯楽で、たこ上げが人気だったそうだが、元はイカ上げと呼ばれていたそうで、当時の江戸幕府は、何だかんだといちゃもんを付け、イカ上げをたこ上げに名前を変えたり江戸市民が食べていたイカを無理やりにタコと呼ばせたり、調べれば調べるほど江戸幕府はイカを恐れていたとしか思えない政策がいくつもあったりする。


 秋夫さんは、ためしに冷凍イカを握り目の前にある木を殴ってみた。



 周囲にイカ臭いにおいをまき散らしながら、爆発音のような轟音が響きわたり、殴った木は粉々に粉砕されたていた…………


「臭い! イカ臭い!! 何このにおいは? 俺の体がイカ臭いの?」


 どうやら、この冷凍イカは武器だったようである、しかも使用者の体中からイカ臭いにおいがしてしまう諸刃の剣のようだ。


 威力は凄い、江戸幕府もイカを恐れる理由がわかった気がするが、イカ臭いのはイヤすぎる…………


 こんな危ない物は気軽に捨てるのもマズイが秋夫さんの体がイカ臭くなるのも我慢ができない。


 冷凍イカの処分に秋夫さんは、頭を悩ませていると遠くから秋夫さんを呼ぶ声が聞こえてくる。


「先輩~ せんぱーい、待って欲しいでやんす~」


 雑木林の木々の向こうに坂好きの姿が見える、やはりパイセンが恋しくなり追ってきたのだろうか? 息を切らせながら秋夫さんの元に走って来た坂好きは。


「無理でやんす! あの会社、圧迫面接をするそうでやんす!」


 何と情けない後輩だろうか、圧迫面接を恐れて逃げ出して来るなんて…………


「おう! 坂好きよ、貴様はパイセンに対して大口を叩いておきながら逃げ帰って来るとは、どうゆう了見だ?」


「あんなブラックと知っていたなら就職希望何てしなかったでやんす」


「情けない奴だ、圧迫面接ごときを恐れるとは…………」


 秋夫さんは、坂好きとの喧嘩別れをの怒りを鎮め坂好きを教え導かねばならない、なぜならダメな後輩を教育するのもパイセンだから…………


「坂好きよ、面接の練習をしてやるから、そこに座れ…………」


「いいでやんすよ………… とっとと電車の車庫に向かうでやんす」


「座れーーー!!」


 秋夫さんは、冷凍イカを握り力いっぱい地面を叩いた…………


 冷凍イカの衝撃を受けた地面は土砂をまき散らしながら、地面に大穴を開けた。


「臭い…………イカ臭いでやんす~!何でやんすかそのイカは? 臭い! 臭いでやんす~」


 坂好きはイカ臭さと威力にビビリおとなしく座り込んだのだが、秋夫さんは先ほどから木の裏から、こちらを伺っているもう一つの気配に気が付いている。


「そこに隠れてるおめーも出てこい!!」


 冷凍イカを振り上げて叫ぶ秋夫さんだが、いっこうに反応がない…………


 痺れを切らせた秋夫さんは、木の裏に潜む怪しい気配の元へ慎重に歩いて行き確認してみたが誰もいない? 確かに殺気のこもる視線を感じたのだが、勘違いだったのだろうか?


「そこに隠れてるおめーも出てこいでやんす!」


 坂好きは、ニヤニヤしながら先ほどの秋夫さんの言葉をリピートしている。


 うむ、坂好きの奴はパイセンである秋夫さんを完璧にバカにしている、誰もいないのに出てこい発言なんて誰にでもある失敗を、後輩にオウムのようにリピートされバカにされるとは。


 秋夫さんは怒りと羞恥に身をプルプルと振るわせているが木の根元をみると、鈴虫が一匹いる…………


 こいつでいいや…………


「お前か! さっきからこっちを見てやがって、お前も面接練習に強制参加だ!」


「プププっ鈴虫相手に、カッコ付け出てこいでやんすか」


「バカ野郎ーー! こいつは就活生の鈴尾君だ! 就活のプロのである俺に憧れて付いて来たんだよ!」


 苦しい言い訳の秋夫さんだが、鈴虫の鈴尾君も交え就活セミナーの開始であります。




イカ様の話は僕が学生時代にアルバイトで居酒屋にいた時に、客で来ていた歴史資料館を退職した老人に聞いた話ですが怪しすぎます、ボケてるかウソだろ!

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