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ボインちゃん


ナガーイ達を含む下級市民の悲惨な現状を知り心を痛める秋夫さん、異界の住人と現実世界の住人の違いはあるがどこの世界も世知辛い物である。


 ナガーイのヘビーな話を聞き、男気あふれる秋夫さんは助ける発言をしたが…………



 ノリで言っただけだ…………



 一度でいいからそんなカッコイイ発言をしたかっただけだ…………


「おおーい坂好き、撤収だ帰るぞ~」


「ギャッ?」


「のっノリで言ったのかだって? バカを言っちゃイカンよ君! 厳しい戦いになるから準備とか心構とか一年位はかかるだろ? なっなっ?」


「さすが先輩でやんす、ちゃんと考えているでやんすね」



 坂好きから先輩凄いアピールされる秋夫さんだが何も考えてない、ただ逃げ出したいだけであるそんな連中とガチンコで戦えば命がいくつあっても足りない、秋さんは金玉を諦め新宿二丁目で夜の蝶になる人生でも死ぬよかましである。


「先輩と僕の二人ではキツイ戦いになるでやんす、誰かほかの人は異界に来てないでやんすかね?」


「ギャブー!!」


「えっ? 他にも僕ら以外にも何人か見たんでやんすか? 先輩! 人数が多ければ戦えそうでやんすよ」


 やはり坂好きは頭がゆるい、今までの傾向からしてどうせろくでもない人間が異界赤羽に来ている可能性が高いと思う秋夫さん。


 今まで異界赤羽で出会った人物を思い出すと、ジブ山は除外するとしても、秋夫さんは坂好きと宇宙刑事に出会っている、金玉泥棒は金玉を盗まれて間違って異界に侵入してしまい行方不明になっても、社会的になんら影響がない人物を選んでいる節がある。


 となると、異界赤羽にいると言っていた人物達は社会不適合者の可能性が高いのだ、0に0をプラスしても0にしかならない、むしろアホが集まり足を引っ張り合う事を考えると、マイナスだろう、もし会っても敵対だけは避けたいので特徴だけでも聞くか…………


「期待はしてないが、どんな連中だったんだナガーイ?」


「ギャー! ボイーン!!」


「なっ何ですと! 住処がわかる二人組の一人は、長い黒髪が美しいボインちゃんで、しかもビキニ姿ですと? もう一人もセクシーなショートパンツだから、会えばすぐにわかるって?」


 近年ボインちゃん何て言葉を聞かなくなって久しいが、ボインちゃん…………いい響きである全てが浄化されるような美しい響きだ、少しぐらい社会不適合でもボインちゃんなら許せる…………


「ナガーイ君、場所はどこかね? さっそく仲間になってもらうために交渉に行かなくては!」


「ギャギャー!」


「電車の車庫だって? 変わった所に住んでいるセクシーちゃん達だな、まあいいか行くぞ坂好き!」


 坂好きはナガーイのボインちゃんの話を聞いても、いつも通りの平常運転である。


「坂好き! ボインちゃんだぞ? 気にならないのか?」


「ボインちゃんなんて、靴の裏レベルに興味ないでやんす、先輩はエロスなお考えで会いに行くでやんすか?」


「パイセンは悲しいぞ、ナガーイの苦境を救い、気持ちよく坂好きに就職して欲しいと願うパイセンの気持ちがわからんとは…………」


「本当でやんすか? エロスな事を目的に行く気がするでやんす!」


 最近、坂好きのアホは日々成長しているようだ、それ自体は喜ばしいがパイセンである秋夫さんの言葉を疑ったり反抗的態度が目立つ、昔の素直でカワイイ後輩はどこに行ったのだか…………


「先輩! 僕は就職先を守る為に真剣なんでやんすよ」


「やかましいぞ坂好き! さっきからパイセンに文句ばかり言いやがって、俺一人で行くから付いて来なくていいぞ就職でもしてろアホが!」


 後輩ごときに文句を言われイライラmaxの秋夫さん、後輩ごときがパイセンに意見するなんて百年早いと思う秋夫さんは、年齢差でしかアドバンテージを保てない可哀そうな39歳である。


「そうでやんすか、先輩とはここでお別れでやんす僕はここで就職するでやんす!」


「おう! そうか勝手にしろ、上級市民が襲ってきてもビビッてウンコ漏らすなよ!」


「ここを襲ってくる奴がいても僕が返り討ちにするでやんす、それにウンコ漏らしは先輩でやんす、佐治さんから聞いたでやんすよ!」


 ぐぬぬ佐治の野郎め坂好きに余計な事を吹き込みやがって、ともあれパイセンに対してウンコ漏らし呼ばわりする後輩とは一緒に居られない。


「あばよ! 坂好き」


「先輩もお元気で!」


 アホな後輩との無駄な時間を過ごす暇は秋夫さんには無い、大事な事はボインちゃんとのご対面である、秋夫さんはまだ見ぬボインちゃんを心に描きながら近道をすべく雑木林に入りズンズンと直進していく。


 この辺りの山道や雑木林など子供の頃から慣れ親しんでいる秋夫さんには自分の庭もどうぜんなのだ。


 しばらく進むと見慣れない防空壕跡がある、この辺りの地理を熟知している秋夫さんは、不可思議に思い防空壕に侵入してみた、中は薄暗く前がよく見えないのでライターを付け周囲を確認する秋夫さん、相当に奥が深そうである、この辺りには旧日本軍が作成した迷路ような地下壕がひっそりと残っているなんて噂を聞いた事はあったが。


 まさか、ここがその一つなのか? 戦後、日本の占領政策のおりに、この付近の軍事基地や数えきれないほどの大量な地下壕はGHQが徹底調査して埋め立てをしたらしいが、まだ残っていたのか?


 微かだが風邪の流れを感じる、恐らくどこかに空気穴があるのだろう、秋夫さんは注意深く進む内に一つの小部屋を発見した。


「何だこりゃ…………」


 小部屋の片隅に朽ちかけたミイラが見える、壁に寄り添うミイラの指先を見ると、壁に何らや文字が書いてある、このミイラが息を引き取る直前に書いた物だろうか?


 壁の文字はかすれて読みづらいが、確かにこう書いてある。


 昭和23年八月、イカ臭い…………


 イカ臭い? 意味がわからない、このミイラは生前何を考えてこの文字を残したんだ? 秋夫さんがミイラの反対の手をライターの明かりで照らすと、冷凍イカが握られていた…………




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