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人情泥棒と金玉泥棒




 店主の親父さんが意識を失っている秋夫の顔に水をかけ。


「おうふっ??」


「………おい、夕方の仕込みで店閉めるから帰れ」


「親父さん今、何時?」


「…………昼すぎだ、帰れ」


どうやら秋夫はずいぶんと意識がなかったようだ。


 パンツもはいてない、わいせつ物ちんちん罪的な物は親父さんの配慮によりおしぼりのビニール袋がかぶせてあった。


余計に卑猥にしてどうするなどと考えたが、秋夫が倒れていた。


 場所には何故か、焼きそばとコップ酒が置かれており、どうやら意識がない間に祭られてお供え物をされていたようだ。


こんな、怪しい格好で立ち飲み屋の店先に数時間ほど意識を無くしていても

祭られるだけで、何の問題もなかったらしい。


ザックリ言うと、ちんちん丸出しではしり回るのは公然猥褻罪、ちんちんの写真を公然に置いておくのが陳列罪だが、地域住民の皆様はどちらも無視をしてくれる優しさがこの町にはある。


 とりあえず、そのまま店内に戻りイスに何事もなかったように座り残りのちくわを食べ始めた秋夫だが。


 ちくわがカピカピに乾燥していてまずい。


「親父さん、ちくわを追加で」


「……………………だから帰れって」


「言われなくても帰るよ、それより俺のズボンしりません?」


「…………外人が持っていった」


 ズボンを保管しておくとか外人を止めるとかいった選択は、親父さんの中には無いらしい。


 秋夫は今回のトラブルになった、原因の変態紳士の最後の言葉を思い出していた。


 「ゴールデンボールを頂くって直訳すれば金玉か…………ははっ」


 秋夫は苦笑いしながら自分の金玉に触ってみたのだが少し違和感がある、金玉の皮はあれど、肝心の中身の玉がない。


 焦りの表情で何度も確認するがやはり無い、両方無い、こんな事ありえない、まさか本当にあの変態紳士が持っていったのだろうか?。


「……………………そんな物は家でいぢれ」


「親父さん、俺の金玉が無いんだ………… ねえんだよーーーー!!」


「……………………そうか、奴に盗られたか」


 秋夫を無視して親父さんが店の仕込みをはじめていたのだが、視線もこちらに向けずにつぶやいた。


「親父さん、あの金玉泥棒を知ってんのか!?」


「……………………ありゃ昭和の闇が生んだ人外の物よ」


「人外って息子さんの光子姐さんとかの類の人?」


「………… 息子の光雄とは違う、本物の化け物だ」


 余談だが親父さんの息子の光雄さんは、秋夫が子供の頃からお世話になっていて非常に面倒見の良い人だが。


 身長190体重120キロで、この界隈では最強の戦闘力を持つおかまさんである、親父さんと同じ飲み屋街の一角でスナックを営んでる人だ。


 酔っ払いをスナックの二階に引きずり込み捕食してしまう悪い癖があるが、秋夫にとってはただのお節介なオバサンじゃなくオジサンである今でも時々、光子姐さんの店に食事を食べに行く間柄なのである。


「光子姐さんと違うって、どういうこと?」


「…………………… 秋坊は、この辺りが戦時中の時にかなり規模の大きい軍事基地だったって知ってるよな」


「知ってるよ二次大戦の頃の話だろ? 病院とか高校があるあの山付近の高台とかでしょ?」


 秋夫は、子供の頃から軍事基地の跡地の山林でよく遊んだ記憶がある。


二次大戦中はこの辺りは、軍都赤羽と呼ばれ太平洋戦争の敗戦まで旧日本陸軍の施設が立ち並び軍事工場も多数あったらしい。


 さびて朽ちてはいるが、子供の頃には元は拳銃だったとおぼしき物を何度か見たことがある。


 数年に一度だが、今だに河原付近では不発弾が発見され近隣住民が避難する事もある。


 少年だった頃の秋夫と友人達は、北斗のほにゃらら なんて漫画の爆弾を信管をハンマーで殴るアホな兄弟の真似をしたことがある。


 近所の建設中の住宅から木槌を勝手に拝借して、アニキー とか言いながら不発弾を叩いて遊んだものである。


 それを発見した釣り人が大慌てで止めに入り警察を呼んだりとか、この辺りで少年時代をすごした人間にはその手のエピソードには事をかかない。


「そんで、それがどうしたのさ親父さん?」


「…………………… 戦時中、日本が敗戦濃厚になってきた時期の話だその頃の日本では鉄が無い、燃料も無い、食料も無いときたもんだ」


「そうらしいね、俺も死んだ爺さんからよく聞かされたわ」


「…………この国にはな、産出する資源その物が少なかったんだ 当時の軍部や研究者が戦況をひっくり返すために、異界に資源確保を求めたのが始まりだ」


 かわいそうに、そろそろ親父さんはボケがきているみたいだ。


 残念な老人相手に話をしてやるのも、我々の年代の大人がしなきゃならない大事な事の一つだからな社会貢献だな、うん。


「……………………何だその目は?別にワシはボケてないぞ」


「そうだね、親父さんが異界で色々とアレだったんだよね」


「……………………なんだ信じてないのか? まあいい話を続けるぞ当時の軍部はこの町に異界の入口があるのを発見し資源確保に乗り出したが先発隊を含め、大勢の人間が帰らなかった」


 何だか少し面白そうな話になってきたので秋夫はタバコに火をつけ、もう少しだけ話を聞いてみる気になっていた。


「…………ワシも当時、軍部の将校に友人がいて、この話を聞いた時には秋坊のように、話半分で聞いていたのだがな、ワシの目の前でその友人も消えて、やっと信じる事ができた」


 ボケ老人のたわごとにしては何だか真にせまる話になってきた、盗られた金玉の事もあるが、もしかしたら異界とやらが本当にあるような気がしてきた。





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